突然の眩暈と右頸動脈閉塞後に、強い倦怠感と全身の震えが続いた50代男性。
真武湯と桂枝麻黄各半湯を段階的に使用し、2週間で震えの消失・発汗の改善・日常動作の回復が得られた症例です。頸動脈病変後の倦怠感に対する漢方治療の一例として報告します。
✨ この記事でわかること
1.頸動脈閉塞後に起きた 極度の倦怠感・震え・大量発汗 の中医学的解釈
2.真武湯 → 桂枝麻黄各半湯の 二段階治療が有効だった理由
3.西洋医学の診断名よりも “身体が示す証” を優先する重要性
4.同様の倦怠感症状に対する 臨床的示唆と応用ポイント
患者さんの一言で思い出した「極度の倦怠感」症例
ある患者さん「あなたはXを覚えていますか?彼はもう良くなりましたよ」
私「患者さんが多いので名前までは覚えていませんが、症状なら覚えています。どうしたんですか?」
患者さん「この前の集まりで彼を見たら、とても元気で、まるで別人でした。以前は料理を作るだけで2回休んでいたのに、張静先生が治したと言っていました。」
その瞬間、私はその患者さんのことをはっきり思い出しました。
初診:歩行だけで震える極度の倦怠感と大量発汗
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症状の特徴:震え・汗・横になりっぱなし
来院時、彼が最初に話したのは「私は特にだるくて、ずっと横になっています。少し動くだけで全身が震えます。」
さらに、非常に汗かき・暑がりで、汗をかいても楽にならないという特徴的な症状もありました。
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頸動脈閉塞後に起きた体調変化
彼は1970年生まれで、年齢的にはまだ若い方です。
私「この状態はどれくらい続いていますか?」
彼「2ヶ月です。2ヶ月前に突然めまいが起き、検査では右側の頸動脈が詰まっていると言われました。10日間入院してめまいは良くなりましたが、退院後は少し動くだけで全身が震えるようになりました」
処方方針:真武湯→桂枝麻黄各半湯の二段階治療
🔎真武湯のほかの症例:発熱、下痢、食欲不振、お腹が痛い、蕁麻疹…などの中毒症状を真武湯で治した例
私は彼に以下の2種類の漢方薬を処方しました。
- 真武湯:2日分
- 桂枝麻黄各半湯:7日分
まず真武湯を服用し、その後に桂枝麻黄各半湯を服用するよう指示しました。
二診:震えが完全消失し、汗も止まった
再診時には、すでに全身の震えは完全に消失し、大量の発汗もなくなっていました。
ただし、まだ倦怠感が残り、料理はできるものの途中で2回休む必要がありました。
そこで、桂枝麻黄各半湯をさらに7日分追加。

三診:症状はほぼ改善、患者さんの不安から追加の希望
三診のとき、彼が言うのは「もう一週間だけ漢方薬を飲んで、体調を安定させたい。とても怖かったので」
2週目の薬を飲み終えた時点で、私は彼がほぼ治っていることを感じていました。
過去最強レベルの倦怠感だった症例
今日、別の患者さんから彼の話を聞き、この症例を思い出しました。
彼は私がこれまで診た中で最も倦怠感の強い患者でした。50歳そこそこで、歩くだけで震えるほどの状態は確かに珍しいケースでした。
※中国河北省石家荘市の女医、有能な中医師、張静先生の症例:极度的乏力(2026-1-17発表)を李哲が完全翻訳しました。
中医学的解釈:水気の偏りと気虚をどう捉えたか
以下からは李哲の感想と解釈です。
漢方薬の解釈
真武湯を使った理由
患者さんは「少し動くと震える」「汗をかいても楽にならない」「横になってばかり」という状態でした。 これは 水気が動くたびに震えが出る真武湯証 に一致します。
「發汗,若下之,病仍不解,必驚、悸、微煩、 小便不利, 身重而疼痛, 其人振振欲擗地者,真武湯主之。」
出典:『傷寒雑病論』太陽病篇・真武湯条文
直訳:発汗させたり下したりしても病が治らなくて、驚きや動悸、軽い煩わしさ、尿が出にくく、身体が重く痛み、震えて倒れそうになる者には真武湯を主とする。

桂枝麻黄各半湯を使った理由
震えと大量発汗は止まったものの、「疲れやすい」「途中で休まないと続けられない」という表虚・気虚が残っていました。
「發汗後,身疼痛,脈沈遲者,桂枝麻黃各半湯主之。」
出典:『傷寒雑病論』太陽病篇・桂枝麻黄各半湯条文
直訳:「発汗した後に身体が痛み、脈が沈んで遅い者には、桂枝麻黄各半湯を主とする。」
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個人的に不思議だと思うところ
上記の患者さん、病院で頸動脈が詰まっていると言われました。もし、西洋医学の診断を根拠に処方すると、瘀血と溶かす生薬(たとえば牡丹皮)、血管を広げる生薬(たとえば川芎)があるはず。

不思議ですが、真武湯、桂枝麻黄各半湯には牡丹皮、川芎などがありません。でも、数日で治りました。
ここで分かりますが、西洋医学の診断を根拠にして処方すると危ない。
中医学は自分の診断基準(八綱弁証など)があり、処方するときは中医学思想に従うのです。
倦怠感を治した鍼治療例
倦怠感がある患者さんはたくさん治療したけど、少し動くだけで全身が震える患者さんはまだ見たことがないです。多分ここまでひどかったら、すぐ入院して鍼灸院なんか探す人はいないでしょう。
2025年には史上最強の倦怠感女性を治療したけど、まだ記事にしていないです。いつか整理が終わったら公開します。
以下は今まで治療した倦怠感、だるさの症例。参考になると幸いです。
まとめ:診断名より“身体の証”を重視した結果、短期間で改善
今回の男性は、頸動脈の閉塞という大きな出来事をきっかけに、歩くだけで震えるほどの強い倦怠感に苦しんでいました。
しかし、症状を丁寧に観察し、
・まずは「震え・大量発汗・水気の偏り」を整える 真武湯
・その後に「汗の出しすぎで弱った気」を補う 桂枝麻黄各半湯
という二段階の治療を行ったことで、短期間で大きく改善しました。
西洋医学の診断名(頸動脈閉塞)だけを見ると、「瘀血を動かす薬を使うべきでは?」と思うかもしれません。しかし、実際に患者さんの身体が示していたのは、水気の偏りと陽気の不足、そして発汗過多による気虚でした。
中医学では、診断名よりも “今この身体がどうなっているか” を重視します。今回の症例は、その原則がそのまま結果につながった典型例だと思います。
強い倦怠感や震えは、病名だけでは判断できない深い背景があります。 同じような症状で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
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