前編では、極度の倦怠感や呼吸困難、失声により日常生活もままならなくなった29歳女性が、約2年間の鍼治療によって大きく回復していく経過を紹介しました。
今回は後編として、なぜ呼吸困難や声が出ない状態になったのか、漏斗胸との関係や治療を通じて見えてきたことを考察します。
また、実際に使用したツボや施術写真、複視・生理痛・体力低下などの改善経過も振り返りながら解説します。
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極度の倦怠感で歩けない・声が出ない女性|呼吸困難も改善した鍼灸症例(前編)
📍この記事でわかること
✅️漏斗胸と倦怠感・呼吸困難・失声の関係
✅️本症例で使用したツボと施術内容
✅️複視・生理痛・体力低下が改善した経過
✅️2年間の治療を振り返った考察とまとめ
1年ぶりに会ってみたら元気で一安心
2026年9月22日。
彼女は1年ぶりに来ました。
入った瞬間に、声もちゃんと出ているし、顔色も良くてまるで別人のようで、一安心しました。
彼女の話を聞いたら、最近は調子がいい、2キロも太った。仕事が忙しい時は疲れるけど、ちょっと休めばすぐ回復する。また目が二重に見えるのもなくなったので、今日は晴明穴を刺してないです。
今日の鍼治療が終わったあと、「だるくなってないし、スッっと老廃物が抜けた感じがします」と彼女は笑ってました。
施術画像とツボの説明
以前は施術画像を撮るのを忘れたけど、今日は彼女の同意を得て施術画像を撮りました。
この2年間、彼女の施術はほとんど以下に書いたツボ。状況によって、少しはアレンジしますが、大体はこんな感じです。
呼吸困難や失声を改善するため、肺経と心経のツボを中心に使用しました。
太淵と内関に刺した鍼の周りが、少し赤いのが分かります。これがいわゆる「得気」現象。「得気」をもっと知りたい方は、鍼は痛いほど効く?中国鍼の「響き(得気)」と治療効果を症例で解説が参考になります。

足三里・三陰交・公孫など、体力回復を目的としたツボを多用しました。
太衝、足臨泣、光明は視力改善のため、豊隆は胸の肉を増やすためです。



複視やめまいに対し、頭部と目の関連ツボを使用しました。
視力改善の主力のツボ:晴明は本日刺してないので、画像がありません。

本症例で主に使用したツボと目的
| ツボ | 主な目的 |
|---|---|
| 太淵 | 呼吸機能の補助、肺の働きを整える |
| 内関 | 呼吸困難、胸の圧迫感、動悸など |
| 通里 | 発声、声が出にくい症状 |
| 足三里 | 体力低下、倦怠感 |
| 三陰交 | 生理痛、体力回復 |
| 公孫 | 胃腸機能の補助 |
| 太衝 | 気の巡りを改善、視力改善 |
| 足臨泣 | 目の症状や頭部の不調 |
| 光明 | 複視・目の疲れ |
| 豊隆 | 胸部の状態改善を目的として使用 |
| 頭臨泣・上星・通天・太陽 | 複視、めまい、頭部症状 |
漏斗胸と倦怠感・呼吸困難・失声の関係
彼女の病気は西洋医学で原因不明だと言うけど、中医学で考えるとシンプルです。
中医学の視点で見ると、幼少期からの漏斗胸が大きく関係していると考えられます。
漏斗胸とは、胸の中央にある胸骨が内側へ凹んだ状態です。凹みが大きいと肺が十分に広がりにくくなり、呼吸が浅くなったり、疲れやすくなったりすることがあります。

彼女の病気の原因を簡単に説明します。
通常、肋骨は外側に膨らんで、肺が中で拡張したり縮んだりして呼吸します。同時に横隔膜が上下に動いて、肺の拡張・収縮する空間を作る。
しかし、彼女の場合は胸骨と横隔膜のあたりが凹んでいるので、横隔膜の上下運動が制限される、肺が拡張できる空間が少ない。だから、一般人よりも吸える空気の量が少ない。中医学の言葉で言うと、吸える「天の気」が足りないのです。
先天不足というか、胸骨の変形が生み出した構造が原因の病気。
少しでも疲れると気が足りなくて呼吸困難になるし、気が足りないと声も出ません。
皆さんも体験したと思いますが、疲れすぎた場合は声が出ません。また、マラソンを走った直後も疲れ果てて声が出ません。
声が出るのは、内臓のパワー(気)を使うからです。特に横隔膜あたりの肺、胃など関連しています。
🔎合わせて読みたい:風邪後に声が出なくなった急性声帯炎の症例
鍼で凹んだ胸骨が外側に突っ張るようになったのか?
胸骨が形を変えたどうか、正確に測ってないので、それは知りません。
私が知っているのは、彼女の呼吸困難が治り、深呼吸ができるようになって、声が普通に出るようになったことです。
治療過程を振り返る
2023年から2025年まで2年くらいの鍼治療を終えて、彼女の体はビックリ仰天の変化が出ました。振り返って改善点をまとめます。
声が出ない、呼吸困難、倦怠感の変化
1回目の鍼治療は一般的に著しい変化で、患者さんはびっくりします。しかし、2~3回後からは、変化がゆるいのが多い。
彼女の肺と心臓がある胸は、鍼治療とともに声が出るようになり、呼吸困難も減りました。ただし、仕事が忙しいときはまたもとに戻る感じ。繰り返す鍼の刺激で、五臓六腑の土台が徐々に強くなり、最終的には鍼治療がなくても、よく休めば戻るようになりました。
胸の張りと鎖骨周辺の変化
鍼治療で鎖骨下の凹んだところの肉が再生され、女性らしく胸が出てきました。
ほかの症例でも分かりますが、鍼治療でなくなった肉が出てきます。以下は関連症例、参考になると幸いです。
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体力の増加
最初は体力のなさ過ぎ。
疲れたら何日も横に倒れてました。
鍼治療を進めることで、3kmも歩けるようになり、スーパーでの買い物も普通にできるようになり、ハードは仕事でも耐えられる体になりました。
また、筋トレ・ダンスなどをすることで、さらに体力が増加。
倒れて何もできなかった生理痛
以前は生理の1~2日目は何もできず、倒れて寝たけど、鍼治療を行うことで、痛みが緩和し、少し痛いけど普通に動けるようになりました。
生理痛に対して、鍼灸はてきめんの効果が現れます。以下は三陰交への鍼で数秒で生理痛を治した例、参考になると幸いです。
複視(物が二重に見える)
鍼治療のとき、主力のツボは晴明穴でした。ほかの光明、足臨泣、三間などは補助的なツボ。1年くらいかけて、主な症状を治すついでに治りました。最後来たときには気にならないレベルなので、晴明を刺してない。
晴明以外にどんなツボを刺したかは、複視が数回で治った孫培栄先生の鍼灸症例が参考になります。
鍼治療中の不慮の事故
背中の鍼が深すぎて背中の痛みと呼吸困難になったとき、鍼ですぐ治しました。
以前、鍼治療で気胸になって、呼吸困難の方もいましたが、当時も鍼で治したのです。詳細は鍼治療のリスク「気胸」を鍼で即治療!をご覧ください。
鍼灸は両刃の刀だと言えます。効果が大きい一方で、気胸などの事故が起きないように、施術には十分な技術と注意が必要です。
西洋医学は間違えて内臓を取りました。間違えて神経を切りました。このときは取り戻しができない。鍼灸は取り戻しができる、ここがかなり違うところです。
鍼治療中での強烈な好転反応
- 鍼治療後にだるくて歩けない。
- めまいで起き上がれない。
これは私が今まで診た1番ひどい好転反応です。2~3ヶ月続いてやっと最後は出なくなり、体力なども一気に向上しました。
好転反応はよく初期の段階に現れますが、彼女は数ヶ月の鍼治療後に現れました。私が思うのは、数ヶ月の鍼治療で体内の気の巡りが改善され、やっと正常な人に近づき、そこからの鍼治療で好転反応が現れている。
好転反応の説明は、好転反応:発熱・筋肉痛について解説した記事をご覧ください。
気持ちの変化
2026年9月22日。
彼女が施術を終えたあと、こんな話をしてくれました。
「以前は新しい職場に行ったり、新しい仕事を任されたりすると、 不安な気持ちが強くて、いつもビクビクしていました。 でも今は全然怖くありません。 仕事も人間関係も、落ち着いて淡々とこなせています。」
体質改善とともに、精神的にも強くなったようで、 私も嬉しくなりました。
中医学では、五臓六腑は感情や性格の土台になると考えます。 五臓六腑の働いが安定すると、人は自然と落ち着き、 不安や恐怖に振り回されにくくなります。
今回の症例は、呼吸困難や倦怠感だけでなく、 心の安定という面でも大きな変化が見られました。
まとめ
西洋医学の検査では正常だと言われたけど、辛い症状を抱えている患者さん、臨床ではよく見ます。これは患者さんの精神に問題があるのではなくて、五臓六腑と経絡に問題があるからです。
西洋医学が治せないと言っても、落ち込まないでください。中医学は様々な症状から体調不良の原因を読み解く事ができるし、関連の治療もできます。
上記の女性、2年くらいの治療時間がかかったけど、最終的には大変身。
もともと症例にしたかったけど、完成するまで時間がかかりました。彼女のお母さんは笑いながら、「いつ書いてくれるんだろう」と待っていたそうです。拙い文章ですが、鍼治療の全記録を残しました。
呼吸困難、ひどい倦怠感、声が出ない、疲れやすい症状で悩んでいる方に参考になると幸いです。
この場を借りて、2年も頑張って通ってくれた彼女と彼女のお母さんに感謝を申し上げます。患者さんと家族の信頼がなかったら、こんな結果を得るのは難しいと思います。

前編はこちら
呼吸困難、失声、複視、極度の倦怠感に苦しんでいた女性が、 初診からどのように回復していったのかを時系列で詳しく紹介しています。
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