こんにちは、李哲です。
鍼は最強の鎮痛剤で、優れた即効性などメリットが多いのは事実です。ただし、金属製の鍼で身体を刺すので、100%安全だとは言えない。最も多く見られるのは皮下内出血(青アザ)、その次は気胸。
今日は気胸を鍼で治した例で説明します。
2020-9-7
1人の女性、30代、当院の常連さん。
コロナのひどい咳が治らなくて、鍼治療に来ました。
当時刺したのは背中の肺兪、心兪、風門。
仰向けで刺したのは中府、足三里(瀉法)、中脘、関元、公孫、内関、魚際など。
刺し終わった時は息が吸いやすくなり、咳もだいぶ楽になり、特に問題なかったですが、帰ったあとから背中、胸とわき腹の痛みが出ました。左肺に穴が空いたのか、左を下向きで寝ると呼吸が辛いそうです。
2020-9-10
三日後、彼女も来て以上の症状を話したとき、私はすぐ分かりました。これは気胸の症状!前回の背中に鍼をしたのが深すぎて、肺に穴が空いたと思います。
彼女にお詫びした後、すぐミスを補う鍼治療をしました。
足三里を最初に刺して、補法を行い。
その後は尺沢穴で補法。
これで背中・胸・わき腹の痛みが少し改善。
続けて公孫と内関など刺しました。内関は外関までつなげる。ゆっくり鍼を回したら、背中とわき腹の痛みは更に緩和しました。そのまま鍼を置いて、30分後に鍼を抜くときは、ほとんど支障がない。
もし上記のツボでも痛みが改善できなかったら、どこの経絡が痛いかを再確認して、ツボを調整する必要があります。古典の鍼灸本には、足三里を補う方法しか書いてない。私の経験上これだけでは足りないので、他のツボも一緒に刺しています。
2020-9-13
彼女が言うのは、気胸の痛みはもう治っている。
不幸中の幸いに、彼女の気胸は1回で治りました。
今日はコロナの咳を治すのがメイン。
肺に穴が空いたのに、鍼で穴が塞がるのか?と不信感の方もいるでしょう。簡単に説明すると、ツボを刺激することで経絡の流れを変え、穴が塞がるように気(エネルギー)を調達します。鍼の作用機序は、以下の記事で詳しく説明しました。参考になると幸いです。
気胸の時、病院に行っても治療薬がありません。「安静して下さい」と言うだけ。もしくは手術を薦めます。問題は手術しても気胸は再発する。鍼治療+漢方薬なら回復時間が短縮できて、肺の強化もできます。つまり、再発も防げる。
気胸は致命的ではないですが、辛いものです。
鍼灸師としても、気胸を起こしたくない。
しかし、不慮の事故が起きたとき、鍼はまだミスを補う方法があります。漢方薬も同じで、処方箋が合わなくて調子が悪くなったら、ほかの漢方薬で戻せます。これは西洋医学と違うところ。
以前、私が治療した一人の女性、手術後に片足が3cmも短いのが分かりました。歩く時にバランスが崩れるので、慢性的な腰痛・足のしびれに悩まされる日々。鍼をしても数日間は良いけど、またもとに戻る。なぜなら、両足の長さがだいぶ違うので、腰に負担がかかり過ぎて腰痛が起きるのです。これは鍼でもどうにもならない。
手術は不可逆的です。
一旦ミスが起きたら、あなたは永遠に悲劇を受け入れるしかありません。
この面でいうと、鍼灸は西洋医学の治療より遥かに安全です。
成功した症例ばかり書いているから、李哲はすごいと思わないでください。人間である以上、ミスはします。ただし、ミスしたら認めて謝る。腕を磨いてミスを最小限まで減らすのが、正しい道だと思います。
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