筋肉が急に減る、お腹の冷えと不快感、青あざが出やすい、不整脈、食欲不振の45歳男性を治した症例

「体重が急速に減り、筋肉がどんどん失われていく」――45歳男性に起きた深刻な症状。

お尻は少し座るだけで青あざ、腹部一周の不快感、冷え、不整脈…。

この記事では、中医学の治療で筋肉の流失が完全に改善した症例を、処方の意図まで含めて分かりやすく解説します。

✨ この記事でわかること

1.45歳男性に起きた 急速な体重減少・筋肉の流失・青あざ・冷え・不整脈 の原因を中医学的に解説

2.小建中湯+四物湯+苓桂朮甘湯 を中心とした処方の狙いと改善の仕組み

3.2回目以降に 附子(トリカブト)を追加した理由 とその効果

4.鍼灸と漢方で 筋肉の減少が完全に改善した治療経過

5.放置すると起こり得る ALS・重症筋無力症などの重症化リスク

6.食欲不振や筋力低下に役立つ ツボと治療のポイント

※スタンフォード大の博士、李宗恩中医師1の症例:急性肌肉嚴重流失(09/24/2013発表)を李哲が完全翻訳しました。

目次

患者情報(筋肉萎縮が進んだ45歳男性)

男性、45歳前後、中国人。
筋肉を失って、痩せていくばかりの症状が深刻。

初診 (07/31/2013)

🔎合わせて読みたい:コーラなどのリン酸塩が筋肉と皮膚を老化させる理由

患者さんの主訴は以下のとおりです。

今年5月から体重が急速に減少、筋肉が減少し、皮膚が老化。
お尻は少し座っただけで青アザができる。、4~5個の柔らかいクッションを敷かなければならない。

疲れた表情でベッドに座り、メガネを手に持ちながら目を閉じて休む中高生男性の写真
筋肉が急に落ちる症状で強い倦怠感に悩む様子をイメージしたアイキャッチ。

6月から腹部一周(帯脈)がとても敏感で不快、同じ感覚がそけいぶまで広がった。

左右後方の頭皮が痛む。
心拍は普段100/分、冷たい物を食べると不整脈が起きる
身体の両側に不快感があり、四方に移動する感覚。

寒熱:冷えを恐れる。
大便:2回/日。
胃口:食が細い。

🔎合わせて読みたい:お腹が空かない原因は脾胃の弱り|食欲不振の中医学的解説

体診:腹部が大まかに硬い。
脈診:脈が細小、わずかに緊、尺脈あり、左脈と右脈の強さがほぼ同じ。
舌診:全舌苔が薄白、歯痕あり。
眼診:脾区が大きく、肝脾比例約1:1、肝脾紋が悪い

処方:桂枝、白芍、炙甘草、紅棗、生薑、茯苓、白朮、柴胡、鬱金、当帰、川芎、熟地黄、細辛、豬苓、澤瀉、麦芽糖。
針灸:三陰交、地機、陰陵泉、太白。

2回目の診察 (08/07/2013)

主訴:
左足がとても敏感、鍼治療後は痛む。体重がまた1~2ポンド減少。

寒熱:時々上半身が熱く、足が冷える。
大便:2回/日。

脈診:脈が弱く、無附骨、重按で少しあり、脈平、左脈と右脈の強さがほぼ同じ。
舌診:苔薄白、歯痕が少し減る。

処方:生附子、乾姜、炮附子、桂枝、白芍、炙甘草、なつめ、生姜、茯苓、白朮、柴胡、鬱金、当帰、川芎、熟地黄、細辛、猪苓、沢瀉、麦芽糖。

針灸:三陰交、地機、陰陵泉、太白。

ヒゲ状の長い根を持つ乾燥当帰が重なって並んでいる写真
補血・活血に用いられる当帰。筋肉の萎縮や血行不良の改善に使われる代表的な生薬。

3回目の診察 (08/22/2013)

主訴:身体の状態がかなり良くなったと感じる、今は一日中座っていても、クッションなしでお尻が不快や青あざにならない。腹部一周(帯脈)の不快感がなくなった。

寒熱:手足が比較的温かい。
大便:2回/日。
小便:頻尿、1回/時。

脈診:脈が平緩、無力、軟。
舌診:苔薄白、歯痕が見えなくなった。

処方:生附子、乾薑、炮附子、桂枝、白芍、炙甘草、紅棗、生薑、茯苓、白朮、柴胡、玉金、当帰、川芎、熟地黄、細辛、豬苓、澤瀉、麦芽糖。

針灸:三陰交、地機、陰陵泉、太白。

木の棒にとろりと巻きついた麦芽糖が垂れている写真
小建中湯の要となる麦芽糖。胃腸を温め、食欲不振や筋肉の消耗を改善する働きがある。

4回目の診察(09/06/2013)改善点のまとめ

患者さんの主訴:

  • 筋肉の流失現象が完全に治った。
  • お尻、お腹、そけいぶの不快感は治った。
  • 筋肉が比較的に有力、体重が上昇し始め、皮膚も比較的良くなった。
  • 大便正常、小便の頻尿感が減少。

🔎合わせて読みたい:足のつけ根の痛みと残尿感が改善した鍼灸・漢方の症例

処方の分析と中医学的な解釈|李哲の説明

1回目の処方の狙い(小建中湯・四物湯・苓桂朮甘湯など)

1回目の処方箋は以下のとおりでした。

桂枝、白芍、炙甘草、紅棗、生薑、茯苓、白朮、柴胡、玉金、当帰、川芎、熟地黄、細辛、豬苓、澤瀉、麦芽糖。

大雑把にいうと、以下の処方箋と狙い目が推測されます。

●小建中湯(桂枝、白芍、炙甘草、紅棗、生薑、麦芽糖)

●苓桂朮甘湯(茯苓、白朮、桂枝、甘草):めまい、むくみ、お腹の硬いしこりなど改善する利尿剤でもあり、食欲不振を治す作用もある。

スライスした白朮の断面をピンセットで持ち上げた写真
脾胃を強めて水分代謝を整える白朮。筋肉の減少やむくみの改善に欠かせない生薬。

●四物湯(当帰、川芎、熟地黄、白芍):主に補血、瘀血除去の作用がある。座っているだけでお尻に青あざができるくらい、これは瘀血があるのと、貧血があることを示します。

●利尿薬(豬苓、澤瀉、):むくみなどを改善する

●肝気鬱結を改善する生薬(柴胡、玉金、当帰、川芎):肝臓に良い生薬を処方した理由は、眼診で肝脾紋が悪い項目があるからだと思われます。

上記の患者さん、最大の問題点は食欲不振で筋肉がずっと減っていること

これは脾臓を強力に強化しないといけない。だから、食欲不振を治して筋肉を養う「小建中湯」を主力にしたのです。

🔎合わせて読みたい:尿の勢いが弱い・夜間の足つりが改善した小建中湯の症例

2回目以降に附子が追加された理由

2回目以後から処方は少しアレンジされていますが、ベースは1回目の処方箋。面白いのは2回目以後の処方箋です。

生附子、乾薑、炮附子、桂枝、白芍、炙甘草、紅棗、生薑、茯苓、白朮、柴胡、玉金、当帰、川芎、熟地黄、細辛、豬苓、澤瀉、麦芽糖。

前回の処方箋から生附子、乾姜、炮附子。心臓と腎臓、胃腸を強力に温める3種類の生薬が増えました。

乾燥した乾姜の塊が複数並んでいる写真
乾姜は胃腸と肺を強力に温める生薬。附子と併用することで心腎の陽を補い、冷えや筋肉の消耗を改善する。

毒性が強すぎて患者さんが死ぬのではないか?と心配している方は、過去の小論文:附子、天雄、烏頭の違いと効能説明。トリカブトは解毒剤があるけど、猛毒の抗がん剤は?!をご覧下さい。

ところで、なぜトリカブトを2種類も入れるのか?
これが中医学先生の一般レベルとハイレベルの違い。

簡単にいうと、

  • 生附子:心臓の陽を強化
  • 炮附子(加工したトリカブト):腎臓の陽を強化
  • 乾姜:胃腸と肺の陽を強化

1回目の処方箋でまだ手足が冷える、頻尿、舌苔が白い、歯痕が見えるので、一般的の温める処方箋では足りないと判断し、強力なトリカブトを2種類も入れたのです。結果をみれば分かりますが、李宗恩博士の判断は正しかったです。

🔎合わせて読みたい:お腹が氷みたいに冷たい症状、生附子と炮附子を同時に使って著しく改善した症例

さらに重症化すると起こり得る筋肉疾患

上記の患者さん、今現れているのは筋肉がどんどんなくなることです。このまま放置したらどうなるのか?

もちろん、筋肉と1番関連性がある病気です。たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)、重症筋無力症。

ここまでひどくなったら、漢方医でも治すのが超大変です。西洋医学は?あ、聞かなくて良いです。彼らはすでに指定難病に定義しているから、もちろん治療方法も原因も分かりません。

大変だと言っているけど、全く治せないわけではありません。実際に有効性を示した症例があります。以下の症例、参考にしてください。

alsの漢方薬治療例:1週間で不眠症、手足の冷え性が良くなり、両手に力が入るようになった

ALSの漢方治療例:2ヶ月で両肩が動けて、足指の屈伸運動ができるようになり、体も暖かくなってきた

ALS、左半身の冷えが治って力が入るようになり、筋肉の痙攣も著しく改善

食欲不振に効くツボ

病気の原因は、鍼灸も漢方薬も同じです。脾臓、胃、心臓などを強化するのがメイン。

鍼灸には食欲不振を治すツボがたくさんあります。たとえば足三里、公孫、中脘、下脘、上脘、上巨虚、下巨虚、豊隆などなど。

今まで食欲不振の方はたくさん治しました。たとえば以下の食あたりの症例。

牡蠣あたりの吐き気・下痢・食欲不振が鍼1回で改善した例

鍼灸で食欲不振や筋肉減少は改善できるのか

食欲不振は治しやすいけど、失った筋肉を戻すのは漢方薬ほど強力ではないかも知れません。ただし、時間をかければ鍼灸でもできます。

今まで1番印象深いのは、車事故で太腿のお肉が手のひらライズくらいなくなった女性、鍼治療で徐々に肉が増えて凹みがだいぶ消えたことです。

詳細は以下をご覧ください。

もう一つは足つぼ整体の症例。半年ですごい痩せ型から、6kg体重が増えたクローン病男性の例です。

まとめ:筋肉が急に落ちる症状は早期治療が鍵

筋肉(もしくは筋力)が突然たくさん失う。
このとき、慌てていろんな検査を受けなくて良いです。ひょっとしたら怖い病名を聞いて、一生治らないと言われたら精神的ストレスで、自ら自分の体を滅ぼすかも知れません。

先に有能な漢方医もしくは鍼灸医を探してください。2~3か月治療してみて効果がなかったら、その時また病院へ行って検査しても良いでしょう?

症状を発見してから治療すれば、早い段階で治ります。

関連症例:同じ悩みを持つ方の改善例

筋肉の弱り・筋力低下が気になる方へ

重症筋無力症を15回で改善した鍼灸症例

眼瞼下垂と複視が鍼で改善した症例

食欲不振・体重減少で悩む方へ

バセドウ病が4ヶ月で改善し体重増加した症例

乳がん転移後に体重が増えて便通がよくなった漢方治療例

冷えが強くて体調が悪い方へ

手足の氷のような冷えを改善した2つの漢方症例

肝臓がんの冷え性・腹痛・食欲不振が改善した症例

  1. 李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)

    ↩︎
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次