家族の顔色を伺う治療の難しさ:70代女性の鍼灸症例と自己意志の大切さ

目次

はじめに:鍼灸治療と家族の影響

こんにちは、李哲です。
今日お話しするのは、70代の女性患者さんの症例。以下の治療例に書いた方です。

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彼女のケースは、鍼灸や漢方による治療の効果と、家族の意見に左右される治療選択の難しさを象徴しています。花粉症、むくみ、脳梗塞といった症状を通じて、患者さんが自分の意志で治療を選ぶことの重要性、そして家族の影響がどれほど大きいかを考えます。

この物語は、医療従事者として患者さんの主体性を尊重することの大切さを教えてくれました。

花粉症治療:鍼灸の確かな効果

彼女は長い間、当鍼灸院に通い、主に花粉症の治療を受けていました。目の痒み、鼻水、鼻づまりといった症状は、鍼灸で劇的に改善。花粉症は鍼灸治療において対処しやすい疾患で、これまで多くの患者さんが症状の軽減を実感しています。例えば、20年来の重度花粉症が改善したケースもあります。

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彼女の花粉症は比較的軽い病気でしたが、ある日の来院で深刻な症状が現れ、治療の新たな挑戦が始まりました。

心不全と腎不全:むくみへの鍼灸と漢方のアプローチ

ある日、彼女は顔と足がパンパンにむくんだ状態で来院。膝までむくみ、血圧も高く、動悸や息切れ、夜間の不眠を訴えていました。私は心不全と腎不全の合併を疑いました。中医学では、こうした症状は体内に水分が過剰に溜まる「水毒」が原因と考えます。

治療では、鍼灸と漢方薬(真武湯)を併用。数回の施術で顔と下半身のむくみが減り、動悸や息切れも改善。階段を上るのも楽になり、彼女の生活の質が向上しました。

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驚くべき現象:鍼から水が滲み出る

治療中に興味深い現象が起こりました。足に鍼を刺すと、刺入部から水が滲み出たのです。最初は驚きましたが、2回目以降はタオルを敷いて対応。彼女は「鍼を抜いた後も水が漏れ、ズボンが濡れて着替えた」と話していました。この現象は、鍼灸が体内の余分な水分を排出する効果を示しています。

残念ながら、この時の写真は残っていません。しかし、彼女の症状は確実に改善し、日常生活が楽になりました。

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脳梗塞と血栓予防薬:家族の圧力

しばらく来院が途絶えた後、彼女が突然訪ねてきました。診断は脳梗塞。発音障害があり、病院で血をサラサラにする薬(抗凝固薬)が処方されていました。

私はこの薬強く反対しました。抗凝固薬は既存の血栓を溶かせず、新たな血栓の予防効果のみで、血管を脆くし脳出血のリスクを高めます。スタンフォード大学の李宗恩中医師1も、以下の記事でこうした薬の限界を指摘しています。

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脳梗塞の後遺症(半身不随や言語障害)は深刻ですが、脳出血は命に関わるため、より危険です。私は彼女にこのリスクを伝え、鍼灸や漢方で血流を改善し、後遺症を軽減するアプローチを提案しました。

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家族の影響:治療選択の葛藤

しかし、彼女の反応は複雑でした。話を聞くと、夫が「病院の薬を飲まないと危険」と強く勧めていたのです。私は彼女にこう伝えました。

「あなたの飛蚊症、肩や手の痛み、心不全、腎不全、花粉症…すべて私が薬なしで改善しました。なぜ脳出血のリスクを冒す薬を飲み続けるのですか?」

彼女は涙目でこう答えました。

「先生、私も薬を飲みたくないです。でも夫が強く言うんです。これ以上家族に迷惑をかけたくない…」

この言葉に、私は返す言葉を失いました。脳梗塞は家族に「迷惑」をかけると感じ、脳出血のリスクは考えない。死ねば「迷惑」はなくなるかもしれませんが、それはあまりにも悲しい選択です。

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家族の影響:他の症例から見る問題

似たケースは他にもあります。

❶家族のために抗がん剤を受けると主張する患者さんがいるけど、実際には違う。だから李宗恩博士も怒鳴ったのです。

末期乳がんの咳と白血球低下が漢方薬で改善した症例|分子標的治療薬の副作用で生と死の境目をさまよう女性

❷また、誤った家族の判断で患者が命を落としたケースもあります。賢い家族がいれば救われますが、誤った判断は取り返しのつかない結果を招きます。

精神科薬の副作用でてんかんになり、手を切断したがる女性。肝臓移植して半年後に死亡した息子。

一方、家族や友人の支えが治療の成功につながるケースもあります。

❸例えば、非定型精神病の女性患者さんは、父親の励ましで病院の薬を止め、鍼灸に専念。わずか4回で不眠や落ち着きのなさが改善し、むくみや足のふわふわ感も解消しました。

非定型精神病の不眠症・落ち着きがないのを鍼4回で治し、ついでに手足のむくみ・足がフワフワするのも改善した例

❹また、乳がん術後の女性は、友人の後押しで抗がん剤を止め、鍼灸治療に専念。イライラや倦怠感、浅い眠りが改善し、元気に卒業しました。

乳がん術後、イライラが止まらない・倦怠感がひどくて何もできない・眠りが浅いのを治した鍼灸症例(1)

病気と心の弱さ:自己意志の重要性

病気になると、人は心が弱り、優柔不断になりがちです。家族や親しい人の意見に影響されやすい状況で、正しいアドバイスなら良い結果につながります。しかし、西洋医学一辺倒の考えが根強い現代では、鍼灸や漢方のような有効な治療法を知らない人も多く、誤った助言が命を危険にさらすこともあります。

体は自分だけの資産です。治療の選択は、自分の意志で決めるべきです。家族の意見を尊重することは大切ですが、自分の人生と健康を守るためには、主体的な決断が不可欠です。自分の選択だからこそ、悔いのない人生につながります。

社会的背景:女性の意思決定の難しさ

特に年配の女性患者さんでは、家庭での意思決定が夫に委ねられるケースが多いです。社会的背景や時代的な価値観が影響しているのでしょう。

生死に関わる治療の選択でさえ、自分の意志を貫けないのは、医療従事者として心が痛みます。彼女のような患者さんが、家族の顔色を伺いながら治療を選ぶ姿は、無力感を覚える瞬間です。

鍼灸と漢方の可能性:主体的な治療選択を

鍼灸や漢方は、むくみ、花粉症、脳梗塞の後遺症に有効な手段です。しかし、家族の理解がなければ、その効果も半減します。私は患者さんの健康を第一に考え、薬に頼らない自然な治療を追求してきました。彼女のケースを通じて、患者さんの主体性を尊重することの重要性を再確認しました。

中医学を学ぶ目的

まとめ:家族と治療のバランスを考える

彼女は現在、病院治療に専念しているようで、鍼灸院には来ていません。回復を心から祈っています。もし再び来院されたら、病院の薬を飲んでいるかどうかにかかわらず、最善の治療を提供します。

この症例を通じて、家族の意見が患者さんの治療選択にどれほど影響するかを痛感しました。患者さんが自分の意志で治療を選べる環境が整うことを願います。

  1. 李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)

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