
こんにちは、李哲です。今回は、10年以上治らなかった閃輝暗点(せんきあんてん)を鍼治療で改善させた73歳女性の症例をご紹介します。
この患者さんは、目がチカチカする閃輝暗点だけでなく、白内障、頑固な冷え性、肩の痛み、指関節の痛みやこわばり、コロコロ便といった多くの症状に悩まされていました。しかし、11回の鍼治療でこれらの症状が劇的に改善、もしくは完治したのです。
私は中医学の視点から治療を行い、彼女の生活の質を大きく向上させました。この記録では、治療の詳細な経過と閃輝暗点症の原因解釈を丁寧にお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
閃輝暗点とは?10年以上苦しんだ患者さんの背景
患者さんは73歳の女性。主訴は2006年から続く閃輝暗点で、目の前がチカチカして視界が遮られる症状に悩まされてきました。発作の頻度は年によって変動し、以下のように記録されています:
- 2006年: 18回(最も多い年)
- 2007年: 7回
- 2008年: 6回
- 2009年: 9回
- 2010年: 2回(最も少ない年)
- 2011年: 7回
2012年には両目の白内障手術を受け、視力は改善したものの、担当医から「閃輝暗点症は治らない」と言われました。その後も発作は続き、2014年と2015年は各1回、2016年には12回と再び増加。赤十字病院でのMRI検査では「脳と神経に問題なし」と診断され、西洋医学では解決策が見つからないまま10年以上が経過していました。
ニハイシャ先生1はよく話していますが、病気の原因がわからないと治せない理由を知ると、彼女の状況が理解しやすいでしょう。
一般的に閃輝暗点症は偏頭痛の前兆とされますが、彼女には偏頭痛がなく、特に運転中に発作が起きると危険で、生活に大きな支障をきたしていました。他にも以下のような症状がありました:
- 右首肩の痛み: 2015年10月から続き、朝食時に揉むほど。
- 白内障: 手術後も再び視力低下。
- 冷え性: 手足が氷のように冷たく、しもやけも。
- 指関節の痛みとこわばり: リウマチに似た症状。
- 便秘: コロコロ便でスッキリしない。
彼女の願いは明確でした。
「老後の生活の質を高めたい。できれば閃輝暗点症も、他の症状も治したい」。
この希望に応えるべく、私は鍼治療を提案しました。
中医学で考える閃輝暗点症の原因:肝・腎と生活習慣
中医学では、西洋医学の病名に縛られず、患者さんの自覚症状をもとに治療法を組み立てます。彼女の閃輝暗点症や関連症状を分析すると、以下のような原因が浮かびました。
1. 肝・腎の機能低下
中医学では、目や視覚は「肝」と「腎」に深く関係しています。具体的には:
- 肝の陰不足: 血液や栄養を貯蔵する「陰」が減ると、目の潤いが失われ、白内障や視力低下が起こります。
- 腎の陽の浮き: 腎が弱ると「陽」(活動エネルギー)が抑えきれず、上に浮いて目や頭に影響を与え、閃輝暗点のようなチカチカ感やめまいを引き起こします。
彼女の場合、73歳という年齢で肝腎の機能が自然に低下していたことに加え、長年の症状が重なっていました。詳しくは腎虚の具体的な症状とは?をご覧ください。
2. 毎晩の晩酌が影響
中医学では、過度な飲酒が肝に負担をかけ、血流や気の流れを乱すと考えます。彼女は毎日晩酌をしていましたが、これは肝腎の機能をさらに弱め、閃輝暗点や冷え性を悪化させる要因でした。
鍼治療の効果を最大化するため、私は「お酒をしばらく控えてください」と伝えました。実は、鍼治療中にお酒を飲むのは禁忌事項の一つでもあります。
お酒以外にも辛いもの(唐辛子)が禁止。お酒以外にも辛いもの(唐辛子)が禁止で、鍼治療中の辛いもの禁止とその影響を知ると、その理由がよくわかります。
3. 冷え性と脾胃の弱さ
手足の強い冷えやコロコロ便は、血流不足と「脾胃」(消化器系)の弱さが原因です。脾胃が弱ると、体を温める力が落ち、便通も悪くなります。これが彼女の全身症状に影響を及ぼしていました。コロコロ便が改善する中医学の理由も合わせてご覧ください。
私は初診でこう伝えました。「4~5回鍼を試してみてください。効果を感じたら続け、変化がなければやめてもいいですよ」。彼女は私の提案を受け入れ、治療が始まりました。
11回の鍼治療経過:詳細な記録と驚きの改善
以下は、2017年1月7日から2月9日までの11回の治療記録です。週2回のペースで進め、各回のツボと経過を詳しくお伝えします。
1回目(1月7日):強烈な反応とお腹の温かさ
- 使用ツボ: 関元、気海、巨闕、合谷、曲池(左)、後渓(左)、太陽、養老、陽白透魚腰、晴明、復溜、腎関、三陰交、太衝(置鍼30分)
- 経過: 初回で針を回した際、緊張からか猛烈な吐き気が起こり、仰向けで嘔吐。鍼を抜くと落ち着き、「お腹がポカポカして気持ちいい」と好感触。強烈な好転反応は初めてでしたが、体が治療に反応している証拠でした。

2回目(1月10日):便通改善と閃輝暗点症の安定
- 使用ツボ: 関元、巨闕、中脘、公孫、太衝、三陰交、復溜、陽陵泉、曲池、合谷、養老、太陽、晴明、陽白透魚腰、百会
- 経過: 前回の嘔吐後はだるさがあったものの、温泉効果もあり便通が改善。コロコロ便がスムーズに。閃輝暗点症は1週間再発せず、コーヒー、乳製品、サプリを中止。胃腸を整える中脘と公孫を追加し、嘔吐予防にも成功。
公孫穴が嘔吐、吐き気を治すパワーがどれだけ強いかは、吐き気を20分で治した公孫穴の効果で詳しくわかります。
3回目(1月14日):肩の痛み解消と視力向上
- 経過: 朝の肩の痛みが自然に消え、「揉まなくて済んだ」と驚き。目のピントが合いやすくなり、白内障の改善を実感。手指のこわばりや痛み(リウマチに似た症状)もほぼ消失。肩の治療はせずとも、全身の血流改善が効果を発揮しました。
4回目(1月17日):白内障改善と喉のイガイガ解消
- 使用ツボ: 関元、巨闕、中脘、太衝、三陰交、復溜、陽陵泉、曲池、合谷、養老、太陽、晴明、陽白透魚腰、頭臨泣、天突
- 経過: 白内障がさらに良くなり視界がクリアに。風邪で喉がイガイガし、痰が絡んでいたが、天突と中脘で即座に軽減。「喉がスッキリした!」と喜びの声。階段登りの疲れやすさは肝脾の弱さが原因と推測。鍼で痰が消える即効性も参考にしてください。
5回目(1月20日):咳の鎮静と痰の軽減
- 使用ツボ: 関元、巨闕、中脘、太衝、三陰交、復溜、陽陵泉、曲池、合谷、養老、太陽、晴明、陽白透魚腰、尺沢、魚際、天突、公孫、内関
- 経過: 風邪が悪化し咳がひどく、舌が黄色(肺の熱)。尺沢と魚際で咳が静まり、置鍼中に「痰が消えた」と実感。治療後は少し咳が残るも改善傾向。

6回目(1月24日):睡眠の質向上と痰の減少
- 経過: 咳が減り、夜はぐっすり眠れるように。痰はまだあるが薄い黄色に変化。食欲も良好で「美味しく食べられる」と満足。肺炎のような症状が落ち着きつつある兆し。鍼で食欲不振が改善する理由も合わせてご覧ください。
7回目(1月27日):背中のツボで咳を鎮める
- 使用ツボ: 関元、巨闕、中脘、太衝、三陰交、復溜、陽陵泉、曲池、合谷、養老、太陽、晴明、陽白透魚腰、肺兪、風池、風門、心兪
- 経過: 痰が透明になり、咳も減少。仰向けで効果が薄いため、うつ伏せで背中のツボを追加。「いつまで通えばいいか」と遠方からの通院負担を相談され、「咳と痰が治まれば一旦終了」と提案。
8回目(1月31日):気功の経験と紫色の気
- 経過: 咳は1日2回程度に減り、痰もわずか。置鍼中に「鍼を回すと紫色の気が見える」と気功経験者らしい感想。体がポカポカし、気持ち良い状態が続く。鍼治療中の不思議な睡眠体験で似たような不思議な話も読めます。
9回目(2月2日):乾燥による空咳を解消
- 経過: 痰と咳がほぼ消え、乾燥による空咳がたまに。置鍼中は咳き込まず、のど飴も不要に。「体調が安定してきた」と実感。
10回目(2月7日):肺炎の完治と冷え性の変化
- 経過: 咳と痰が完全に消え、3週間の肺炎が完治。手足の冷えは残るも、「昔は死んだ人の手と言われた」と笑いながら改善を実感。冷え性の原因と鍼での改善で冷え性の背景も理解できます。
11回目(2月9日):冷え性とガスの解消、最後の仕上げ
- 使用ツボ: 足臨泣、行間、火主、湧泉、三陰交、復 slip、関元、中脘、巨闕、中極、養老、合谷、曲池、太陽、晴明、頭臨泣
- 経過: お腹のガスがなくなり、手足が電車内で初めて温かく。左足の指の痛みも治療し、「鍼地獄から脱出した!」と満面の笑みで卒業。メガネの度が合わなくなるほど視力が改善。
治療結果の詳細:11回で得られた効果
11回の鍼治療で以下の成果が得られました:
- 閃輝暗点: 1ヶ月間発作なし。再発の可能性は低く、実質完治。
- 白内障: ピントが合い、視界がクリアに。メガネの度調整が必要なほど。
- 肩の痛み: 2回目で消失。血流改善が自然に解消。
- 指関節の痛み・こわばり: リウマチ類似症状が2回でほぼ完治。
- 冷え性: 頑固な手足の冷えが軽減し、しもやけも改善。
- コロコロ便: 便通がスムーズになり、お腹の張り解消。
- 肺炎症状: 咳と痰が3週間で完治、睡眠の質も向上。
全てを完治させたわけではありませんが、彼女の「老後の生活の質を高めたい」という願いは大きく叶いました。
中医学の視点:なぜ鍼で改善したのか
中医学では、体のバランスを整えることで自然治癒力を引き出します。彼女の場合:
- 肝腎の強化: 太衝や復溜で血流と気を補い、目を養う。
- 脾胃の調整: 中脘や公孫で消化を整え、冷えや便秘を改善。
- 全身の血流: 関元や合谷で全体の流れを促進し、肩や指の痛みを解消。
西洋医学では「原因不明」とされた閃輝暗点も、中医学のアプローチで根本から改善できたのです。詳しくは鍼が効く中医学の仕組みをご覧ください。
鍼治療の価値:病院では得られない効果
鍼は保険適用外で「高い」と言われますが、考えてみてください。病院で11回通院し、閃輝暗点症、白内障、冷え性、関節痛、便秘が同時に改善するでしょうか?
薬の副作用リスクなく、8万円で自然に治せるなら、むしろ経済的とも言えます。彼女の場合、鍼以外に解決策は見つかりませんでした。
閃輝暗点でお悩みの方へ
10年以上治らない閃輝暗点症に悩む方、西洋医学で解決しないなら、鍼治療を試してみませんか?中医学では、あなたの症状をトータルで見て治療します。この症例が一つの希望になれば幸いです。
お困りの症状があれば、遠慮せず全てお聞かせください。全力でサポートします。
(おわり)
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
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