こんにちは、李哲です。
アメリカの中医師、鄭智城先生1の症例、黄芪甘草汤:一个常被忽略的小方_郑智城(2013ー11ー13 発表)を翻訳しました。頻尿、咳、睡眠障害が良くなり、美白効果まである漢方薬の物語です。参考になると幸いです。
夜間頻尿に効果的な黄耆甘草湯
黄耆甘草湯は以前使ったことがなかったです。ある日この処方を知り始め、書かれた効果は「治老年人溺尿,玉茎痛如刀割,不論年月深久立效」。これで私は注意し始めました。
ネットにはある人が使った経験談があって、お母さんに飲ませたら夜間頻尿がだいぶ減ったそうです。
黄耆甘草湯は夜間頻尿だけではなくて、咳まで治せる
私も試すことにしました。 私のお母さんも夜間頻尿があります。秋に入ってから咳も増えました。いろいろ処方したけどあまり効果がなくて、黄耆甘草湯を処方したらすぐ咳が緩和したのです。
私の長女も咳が多かったです。一番最初の処方は効かなくて、この黄耆甘草湯をアレンジにしてみたら速効性が出ました。
長女は最近寒気にやられたのか、咳して鼻水がダラダラ、くしゃみなどの症状。私は風邪の処方箋を出したけど、逆に悪化して一晩中咳をしていました。長女と私は二人とも寝られなくて大変。黄耆甘草湯にしたら、すぐ咳が止まりました。鼻水はその後、何日かで自然に消えました。
長女がいろいろ病気になりやすいのは、ワクチンを打ったのが多いからです。これは過去記事を見れば分かります。
不眠症で精神が崩壊しそうな男性、著しい変化が起きた
ある日、一人の男性が電話して来て言うのが、「最近1~2ヶ月睡眠が悪いです。特にこの1週間は眠れなくて精神崩壊しそうです。」
彼はすぐ休暇を取って診察に来ました。
脈診してみたら、両側とも軟弱無力。

これは酸棗仁・竜骨・牡蛎・釣藤鈎(ちょうとうこう)など使う症状ではない。そして、大胆に黄耆甘草湯を処方しました。3日分。(実はそんなに大胆でもありません。本当に大胆だったら10日分以上を処方します。)
数日後、電話して聞いて見ました。彼が言うのは、睡眠の状況は著しく良くなり、途中覚醒がなくなった。
睡眠の質、頻尿が改善しただけではなくて、皮膚の黒ずみまで改善
一人の若い男性。
「仕事が忙しくて睡眠の質がとても悪い。漢方薬で睡眠の質を改善したい」と言ってきました。
この男性はマッチョマンで、普段は格闘技などやる人で虚証ではなさそうでした。しかし、脈診してみたら不思議と軟弱無力。
私は同じ黄耆甘草湯を処方しました。
男性の反響は睡眠が明らかに良くなり、頻尿も改善。のどが渇いて水を飲みたがる症状も消えました。一番不思議なのは、顔と首にあった黒ずみの皮膚が明らかに減ったこと。
性病の排尿痛も改善
もう1人の男性。
性病(性行為感染症)になり、排尿痛で治療に来ました。
最初はほかの処方をしたけど無効。その後、黄耆甘草湯を処方したら、また速効性が現れました。
治せなかった惜しい症例
以前、一人の男性が頻尿と睡眠の質が悪くて、診察に来たことがあります。
当時、私が処方したのは補中益気湯+腎四味。
頻尿はすぐ良くなったけど、睡眠は改善されてない。その後、四逆湯+ 腎四味を処方。
今度は睡眠がすぐ良くなったけど、頻尿が再発。最後は治療を止めました。今考えたらその時は、黄耆甘草湯を出すべきでした。頻尿と睡眠障害が一緒によくなるはずです。
李哲の感想と説明
黄耆甘草湯の構成
黄耆甘草湯は清朝の『医林改錯』に出ています。処方せん内容は黄耆120g・甘草30g。
これはなかなかの量、中医師が処方するのにも肝が要ります。日本の漢方医が見たら失神するでしょう。1日で120g???
漢方薬は弁証論治が必要なので、漢方医にみてもらった方が良いです。頻尿があるからと言って、1人で勝手に飲まないでください。

腎四味とは
腎四味の構成は、莵絲子・クコの実・補骨脂・仙霊脾。
以下は莵絲子(としし)の画像です。莵絲子(としし)は滋養強壮の効果があり、腎臓と肝臓を養う力が強い。種なので生殖機能の強化ができます。腎四味の一つの生薬。
滋養強壮薬として有名になってから、どんどん野生のものが少なくなり、値段がびっくりするくらいあがる。もしくは、国の制限(生薬の根絶を防ぐため)で生薬が使えなくなるのが、漢方薬の大きな問題ですね…

鍼灸で頻尿を治すときのツボ
鍼灸治療だと関元・中極・陰陵泉・霊骨大白など。ほかのツボは、当時の患者さんの自覚症状で調整します。鍼灸は漢方薬と違って、尿が出ない若しくは頻尿。真逆の症状でも同じツボを使う。その理由は過去記事で説明しています。
不眠症治療で鍼灸も効果バツグン
睡眠障害には一般的に内関・神門・心兪・大衝などが有効。風市と三間の組み合わせも、すごく有効だそうです。
長年のひどい不眠症でなければ、鍼したその夜はよく寝れるはず。もちろん、1回では完治できないので、数週~数ヶ月必要かも知れません。ただし、若い人は治りがめちゃくちゃ早いです。以下は一つの鍼治療例、参考になると幸いです。
(おわり)
鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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