こんにちは、李哲です。
中国・北京中医薬大学の教授、郝万山先生*1の治療例:麻黄連軺赤小豆湯を翻訳しました。「異病同治」を詳しく解釈した内容なので、勉強になると思います。
麻黄連軺赤小豆湯は日本に既製品がないけど、非常によく使われる処方。特に皮膚が痒いときに、有力候補になるものです。
毎晩痒くて眠れないほどの蕁麻疹は、3日で治った
1976年唐山大地震が起きる前のこと。当時の私たちは、もちろん7月に地震が起きることは知らなかったです。当時の4月、私は劉渡舟先生と一緒に74、75クラスの学生さんを連れて、唐山の撫寧県で診察治療を行いました。
一人の学生さんが蕁麻疹で、毎晩痒くて一晩中眠れないそうです。
最初、私が治療しました。
湿気と風邪(ふうじゃ)を出し、熱を取る一般的な生薬を使いました。3日飲んだけど、全然効果がなくて宿舎に探しに来ました。当時、私は劉渡舟先生と同じ部屋に泊まっていました。
蕁麻疹の学生さん 「先生、3日のんだけど変わらないです」
私「では、劉渡舟先生に見てもらいましょう」
劉渡舟先生は脈診してみて、私に質問しました。
劉渡舟先生「どんな脈だと思いますか?」
私「彼は痩せ型だから、触れただけでも脈が分かります」
劉渡舟先生「触るだけで分かるかどうかじゃなくて、浮脈がどうかを聞いてます」
私「先生、彼は風邪も引いてないですよ。脈は触れただけでも分かりますが」
劉渡舟先生「風邪じゃないと浮脈はないですか?彼はどこが痒いんだっけ?」
私「皮膚です」
劉渡舟先生「皮膚は表ですが裏ですか?」
私「もちろん表です」
劉渡舟先生「皮膚が痒いなら表でしょう。脈はまた触れただけでも分かるし、これはもちろん表証ですよ」
私「先生!これは表証ですか!?」
劉渡舟先生「そうです」
私「え?どうしたら良いですか?」
劉渡舟先生「表証なら発汗!」
私「汗をかかせる事ですか?」
劉渡舟先生「そうです」
私「どんな処方が良いですか?」
劉渡舟先生「麻黄連軺赤小豆湯!」
これは『傷寒雑病論』の処方。
湿熱が皮膚の層にあるときに使います。
私は生薬の量を先生に聞いたあと、処方を出しました。劉渡舟先生が言うのは、「昼間は飲まなくていい。夜寝る前に飲んでください。そして、熱いお湯を飲んで布団をかけて、3日間汗を出します。」
こんな治療法があるなんて、私は知らなかったです。
3日連続で汗をかかせてから、彼の蕁麻疹は起きなくなりました。
その地方はシャワーもなかったです。
あとで分かりましたが、彼はたくさんのフケが落ちて、蕁麻疹も消えました。彼は現在、ある軍隊病院で働いています。当時、彼は軍人だったから。
顔がパンパン腫れた小児腎炎、7日で尿検査値がよくなり、顔の腫れも引いた
唐山大地震のあと、私たちは北京に戻りました。ある日、協和医院のお医者さん(北京中医学大学の卒業生)が電話して来ました。
協和医院のお医者さん「郝先生、1人小児腎炎の患者がいて、尿検査の数値が良くなりません。西洋医学のすべての手段を使ったけど、効果がないです。だから、中医学の先生に診てもらいたくて」
私「祝先生がいるんじゃないの?」
協和医院のお医者さん「祝先生は今日本にいます」
私「誰に診てもらいたいの?」
協和医院のお医者さん「劉渡舟先生です」
そして、私は劉渡舟先生と一緒に協和医院に行きました。子供の患者さんは、顔がパンパン腫れて、尿検査の数値はとても悪かったです。
先生が脈診したあと私も脈診して、先生は私に質問しました。
先生「どんな脈ですか?」
私「軽く触れるだけでも分かります。」
先生「それは浮脈ですよね?」
私「浮脈はどうしますか?」
先生「発汗!」
私「子供は風邪も引いてないです」
先生「あいや!顔がパンパン腫れて、脈は軽く触れるだけでも分かる。顔は表でしょう?上半身が全部腫れた時は発汗の処方です」
私「え?どんな処方ですか?」
先生「麻黄連軺赤小豆湯」
私「何日汗をかかせれば良いですか?」
先生「この子はちょっとひどいから、7日間を処方」
あとで、協和医院のお医者さんから電話がありました。7日間汗をかかせたあと、子供の顔の腫れが引いて、尿検査の数値もよくなったそうです。
10何年前、私が中医学大学で歩いているとき、一人のきれいな若い女性が来て話しかけました。
女性「先生、私を覚えていますか?」
私「え?誰ですか?」
女性「協和医院で入院した、腎炎になったあの子ですよ。」
その時、子供の顔はパンパンだったので、本当の顔が分からない。どうしても、今のスレンダーできれいな顔とは結びつけなかったです。
私「覚えられるわけがないですよ!」
女性「先生はとても印象深かったです。劉渡舟先生も。私は今中医学の講義に参加しています。どうしても二人に会いたかったけど、今日は道端で出会えて嬉しいです」
私「今は腎炎はどうですか?」
女性「それっきりで治りました。腎臓はずっと調子が良いです。私は今中国銀行で働いています。」
劇症肝炎と黄疸の患者、7日で皮膚のかゆみ・黄色い皮膚が治った
ある日、地壇病院の同級生が私に電話して来ました。
「1人の患者さん数ヶ月経っているのに黄疸が消えない。劉渡舟先生に診てもらいたいです」
そして、私はまた劉渡舟先生と一緒に行きました。患者さんは顕性(けんせい)黄疸、劇症肝炎。当時は真夏で、患者さんは胸まで開いて、皮膚がミカンの皮みたいに黄色い。誰でも一回でも見たら、永遠に忘れない色です。
肝炎は伝染病だったので、私はちょっと怯えてました。劉渡舟先生が脈診したあと、私も大胆に脈診してオフィスに戻ってから、先生が質問しました。
先生「脈はどうですか?」
私「浮脈です」
先生「浮脈はどう治療しますか?」
私「彼は劇症肝炎です。湿熱が中に溜まって、表の症状ではないです」
先生「皮膚が痒い症状がないですか?」
私「彼は痒いと言っています」
先生「皮膚が痒い、脈は浮いている。だから、これは表証です」
私が思ったのは、彼は急性肝炎。毒素が皮膚下に蓄積されて末梢神経を刺激しているから、もちろん痒くなる。しかし、劉先生はこれを表証だと診ているのです。
私「劉先生、どう治療したら良いですか?」
先生「あなたは習ったよ」
私「おぉ~分かりました。麻黄連軺赤小豆湯!」
先生「あ、やっと分かったか!」
私がこの処方箋を理解するのには、3回もかかりました。劉渡舟先生は良く言いますが、「あなた頭悪いね」
この患者さんは7日間汗をかかせることで、黄疸の数値は毎日下がりました。患者さんは北京園林局の患部で、数年前まで生きていたそうです。
浮脈が臨床での大事さ
脈が浮いているのは、臨床で大事な診断基準になります。
風邪を引くのが、「表証」だけではない。皮膚病、アレルギー性疾患、体が痒い、乾癬なども脈が浮いていれば、汗をかかせる方法で治せます。
*1:郝万山先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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