こんにちは、李哲です。
スタンフォード大学の博士、李宗恩先生1の漢方薬治療例、臉部嚴重紅腫多年(疑似紅斑性狼瘡) – 當張仲景遇上史丹佛(06/30/2013 発表)を翻訳しました。顔がかぶれて赤く腫れ上がった女性、全身性エリテマトーデスの紅斑だと診断された女性には参考になると思います。漢方薬と鍼で治るのでぜひ試してください。
車事故後、顔が赤く腫れて痒くてたまらない女性
初診は2013/2/19。
患者さんは30代の女性、中国人。
顔が赤く腫れたのは数年前からです。見た感じでは、全身性エリテマトーデスの蝶形紅斑に似ています。そして、彼女からもう一つ希望がありました。できれば不妊症も治したい。
患者の主訴:
◯7~8年前、車事故があってから後頭部が痛くなりはじめ、ほぼ同じ時期に顔が赤く腫れて痒くなった、特に夜がかゆい。顔を掻きまくって、汁が出始めたのは4~5年前から。
◯手指の間は脱皮、発疹がある。
◯去年の冬から夜中3~4時に起きてトイレに行く。
◯悪夢が多くて、朝7~8時はよく悪夢に驚かされて目が覚める。
以下は問診表です。
●寒熱:足が冷たくて身体も寒がり。熱いのが苦手。
●汗:汗が出にくい、寝汗はかかない。
●睡眠:夜12時に寝る。以前は途中覚醒がなかったけど、今は3~4時に目が覚める確率が50%もある。朝は7~8時に起きて、寝起きは非常に疲れる。
●食欲:良すぎるくらい、特に不調はない。
●便通:正常。
●尿:頻尿で約1時間に1回、尿の色は透明。
●口渇:喉は渇かない、熱い水が飲みたがる。冷たい水を飲むと体調不良になる。
●生理:周期は不規則で、2~3日遅れる。生理の出血は5~7日、量が多い、色は赤、血の塊がある。生理前症候群はない。
脈診:左右の脈は、ほぼ同じで少し弱い。心臓の脈が弱いけど、結代脈がない。尺脈も長過ぎない。
舌診:舌苔は少し白で厚い、水様の舌、歯車のあとはない。
眼診:左の腎臓の反応が悪いけど、右は正常。左肝臓の地域には穴があり。
ツボの検査:
胆石症のツボ、三陰交とも正常。
処方箋:当帰飲子+防風+蝉退+ヨクイニン+杏仁+柴胡+荆芥。
鍼灸のツボ:血海 三陰交 曲池 合谷 築賓 内廷 委中(刺絡)
赤く腫れてかゆい顔は、だいぶ良い感じ
2013/2/25
主訴:赤く腫れてかゆい顔は、だいぶ良い感じ、右顔はまだ痕がある。漢方薬を飲んだあとは感覚がとても良い。漢方薬を飲む2日前は、心臓のドキドキが強かった。
寒熱:手が冷たい。
口渇:喉は渇かない。
睡眠:夜中の3~4時には起きないけど、悪夢はまだ見る。
尿:まだ頻尿。
脈診:緩、弱、沈ではない。
舌診:水様のベロ、舌はまだ太って大きい。
処方箋:前回と同じ。
当帰飲子+防風+蝉退+ヨクイニン+杏仁+柴胡+荆芥。
鍼灸のツボ:血海、曲池、三陰交、合谷、築賓、内廷。委中では刺絡。
2013/3/4
患者の報告:
顔の赤く腫れて痒いのは再発したけど、以前より軽い。食後、顔がもっと赤くなる。
寒熱:手足は冷たい。
口渇:喉は渇かない。
睡眠:良好、悪夢は見なくなった。
脈診:尺脈は弱。脈が細小、緩、浅い。
舌診:舌苔は白で分厚い、舌はまだ太って大きい。
処方箋:当帰 桂枝 白芍 細辛 木通 なつめ 炙甘草 川芎 生地黃 白蒺藜 防風 荊芥 黃耆 生姜 蟬蛻 蛇蛻 ヨクイン 杏仁 柴胡 郁金 黃芩
鍼灸のツボ:前回と同様。
病状は進歩して、顔の赤みが減り、発疹が出っ張らなくなった
2013/3/11
患者の報告:
病状は進歩して、顔の赤みが減り、発疹が出っ張らなくなった。でも、まだとても乾燥している。
寒熱:手は前より暖かくなった。
便通:正常。
食欲:良好。
生理:今週生理が来るかも。
脈診:緩、少し弱い、尺脈が沈。
舌診:舌苔の白、分厚いのは改善されたけど、舌が太って湿気があるのは変わらない。
処方箋:既製品の白虎加人参湯+生地黄+蝉退+ヨクイニン+杏仁+葛根+荆芥+炙甘草。
鍼灸のツボ:前回と同様。
赤く腫れて痒いのは完全に治り、妊娠もした
2013/3/18
患者の報告:
顔の皮膚はだいぶ良くなった。
初日は動悸が数秒間あって、数日前は皮膚がもっと赤くなったけど、脱皮したあとは良くなった。左側の皮膚が特に進歩した感じ。
寒熱:手は暖かくなったけど、足はまだ冷たい。
口渇:水が飲みたくなった。
脈診:平、弱い、無力。強く押すと無力。
舌診:舌苔は薄い白。
眼診:肝臓と腎臓の地域はまだ損傷が見られる。
処方箋:既製品の白虎湯+当帰四逆湯+ヨクイニン+杏仁+黄耆。
鍼灸のツボ:合谷、曲池、内廷、三陰交、血海、陰陵泉。
2013/6/14
患者の報告:
顔が赤く腫れたのは完全に治り、今は妊娠中。
李哲の解釈と感想
「当帰飲子」は日本では既製品があります。皮膚のかゆみ、赤みに対して効果があると言われています。同じ症状を抱えている方は、試すのもありだと思います。
皮膚病に悩まされ、さらに不妊症も治したい。病院に行くと、少なくとも皮膚科医院+不妊専門病院が必要ですが、中医学では1人の先生が同時に治せます。
五臓六腑の不調で、様々な自覚症状(病気)が出ます。
根本的な原因:五臓六腑のバランスを整えれば、自然にいろんな症状(病気)が治る。だから、陰陽五行論に基づいた中医学は、同時に様々な症状(病気)を治せるのです。
過去記事でも説明したので、興味がある方はどうぞご覧ください。
皮膚病、不妊症は比較的に治しやすいです。
上記の症例には、鍼灸のツボも書いているので、鍼灸師の参考になると思います。私も臨床でよく使いますが、効果バツグンだと言っても過言ではないです。たとえば、頑固な蕁麻疹(じんましん)。鍼治療で蕁麻疹が出る範囲は徐々に狭くなり、最後には出なくなりました。
不妊症の鍼治療例は、まだ書くほどのものはありません。何人か不妊治療が目的で来たけど、1回目の鍼の響きに衝撃を受けて、止めた人ばかりでした。今後もし症例があったら紹介します。
以前の翻訳文では、不妊症を治すために生理を整える必要があると書きました。関連の説明は参考になるので、よかったら目を通してください。
(おわり)
李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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