こんにちは。李哲です。
アメリカでの中医師:鄭智城先生*1の文章を翻訳しました。
中国語本文のリンク先は、
(2012-6-13発表)
試行錯誤の処方箋
最近治療に来た一人の友人、血便があるそうです。
血便の量が多くて毎回トイレで用を済ますと、便器には赤黒い血がたくさん出ている。
友人はしばらく自力で治そうとしたけど、治らないので私を探して来ました。
血便の治療経験はけっこうあります。
以前、私も血便したことがあるから。
Been there,done that。
私はすぐ自信満々で友人に処方しました。
白頭翁湯(はくとうおうとう)のアレンジ。
処方した理由は、彼はお酒の付き合いが多くて、ある日飲み終わってから血便が出たからです。
しかも、彼は普段から栄養たっぷりの物を食べているので、私は実熱証だと判断したのです。
ところで、世の中には容易な事はないですね。
2日飲んでも友人は、ちっとも良くなってない。
私は頭を抱えました。
アギョウを追加して1日分を追加。
また反応がない。
私は彼に聞きました。
「大便は柔らかいですか?硬いですか?痛みはありますか?」
彼の答えは、「軟便気味で痛みはない、順調に出ています。ただし、大便したあと血がいっぱい出ているのが見えます。」
恥かしくなりました。
友人は私を信頼しているけど、今2回も試してダメ。信頼も限界がありますからね。
もう一度試すことにしました。
病歴が長いの時は、虚証が多い。
病気の原因は実証の熱かも知れないけど、こんなに長い間の出血で虚証になるでしょう。
そして、治療方針を変えて虚証だと診断して治療し始めました。
虚証だと診断したのは、友人の舌診では実証の症状が無いからです。逆に舌は太って湿気っぽく、薄い赤、舌苔は白。
友人が言うのは、病気になる前は房事(性行為)が多かった。
すべてが虚証の推測に合うのです。
先に様子を探ってみる為、参附湯(じんぶとう)を1週間を処方しました。飲んでから精神状態が良くなり、出血が少し減ったような感じ。
完治までいかないのか!
また落ち込みました。
でも、頑張って治すしかない。
箱の隅々を探して、黄土湯(おうどとう)を2日分作ってあげました。
心の底で思ったのは、「これで効かない事はないだろう」。
また落ち込みました。
全然効果がない!
友人は私をせめてなかったです。
すごく信頼してくれて、「続けて処方箋して!」と励ましてくれました。
私は心の底では自信が薄くなりました。
続いて桃花湯(とうかとう)を処方。
この桃花湯(とうかとう)は、煎じたあと本当に桃の花みたいです。大量の赤石脂に米を入れて煮詰めると、ドロドロのお粥みたいになり、最後はまた赤石脂の粉を同時に飲みます。
またダメでした!
『傷寒雑病論』の処方がダメなら、簡単な生薬にしてみよう。
私は数年前に、アメリカの製薬メーカーが出してる韓国の人参をたくさん食べたことがあります。ビタミン剤みたいに包装されて売っているやつ。
人参を飲みすぎたのか、当時は10日の血便が止まらなくて、1両の熟地黄を煮詰めて飲んだら1回で治りました。
私は友人にも、この方法を使って見ることにしました。
しかし、やっぱりダメ!
本当に恥ずかしくなりました。
もう一度いろいろ考えて思いついたのは、長期的な下痢だったら烏梅丸(うばいがん)だろう?
以前、この烏梅丸(うばいがん)を使った事があります。
1杯ではなくて、半分しか飲んでないのに、2週間続いた血便がすぐ止まり、とても印象深かった。
そして、私は烏梅丸(うばいがん)を処方しました。
今度は附子、乾姜、桂枝、人参、胡椒などの温める生薬があるし、黄連・黄芩の消炎剤があるし、十中八九は効くだろう?
李哲の感想
上記の漢方薬を少し説明しようと思います。
1.白頭翁湯(はくとうおうとう)の適応症
肛門が熱くなる下痢には、効果抜群です。
たとえばコレラ。
中医学では湿熱痢と言います。
排泄物の臭いが強烈で、一日何十回も下痢する時、白頭翁湯は神の薬です。
2.烏梅丸(うばいがん)の適応症
寄生虫感染を治すことで有名です。あとは、長年の下痢を治すときも有名。
この烏梅丸に関して、ニハイシャ先生は説明したことがあります。以下の記事をご覧ください。
3.桃花湯(とうかとう)の適応症
血と便が混ざって同時に出る。腹痛があり、1日の便の回数は20~30回。たとえばクローン病。
以下は一つの漢方薬治療例。
正しく処方しているので、効果バツグンなのです。
4.黄土湯(おうどとう)の適応症
吐血に効く神の薬です。
吐血には、胃がんがあげられる。
つまり、胃がんは簡単に治せるものです。
一つの漢方薬治療例があるので、参考にしてください。
胃がんで死ぬ?
中医学を勉強した私には、わけわかりません。
しかし、ある医学では死ぬ患者が多いみたいですね。
5.参附湯(じんぶとう)の適応症
これは緊急救命に使うもの。死ぬ前になると、危険な症状が現れます。たとえば脂汗が止まらない、手足が氷みたいに冷たくなる、血圧が一直線で落ちる、呼吸が荒い。
ただの下痢にこの処方を使うのは、ちょっと大げさですね。
手足が氷みたい冷たい症状があれば、合うかも知れませんが。
6.漢方薬と鍼灸は、臨床効果がすべて
効果がないときは、漢方薬の処方箋が間違ったことを示します。
もしくは患者さんの飲み方に問題があり、禁止事項を守ってない。
鍼治療で効かない原因は、診断が間違って肝腎なツボを刺してない。
もしくは、十分な「得気」(とっき)を得てないのが多いです。
患者さん側の問題としては、鍼治療直後にお酒を飲んだなどがあげられる。
治療で失敗したからこそ、いろいろ分析が深まり、さらなる進化を得られます。
ある意味でいうと、漢方薬と鍼灸では経験をまとめる・反省が大事ですね。
~続編につづく~
*1:鄭智城先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。
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