風邪の熱・咳・顔の腫れを漢方で治療、肺炎・腎炎予防の成功症例

白い服を着たマスク姿の女性が温度計を持ち、心配そうに体温をチェックしている様子
風邪の症状を心配する女性が体温を測る様子

こんにちは、李哲です。
中国河北省、石家荘市の中医師:張静先生1の症例、感冒的传变,有时候非常快(2025-3-19発表)を翻訳しました。

この症例では、風邪の熱、咳、顔の腫れを漢方で治療し、肺炎や腎炎を予防した成功症例を紹介します。

目次

初日の症状:熱感、咳、便秘

ある日、友人が電話で「夜に体が熱っぽく、咳が出て、便秘気味」と相談してきました。翌朝、診察に来るとのことでしたが、忙しくて来られませんでした。

私は彼女の病歴をよく知っていたので、電話で問診し、7日分の中薬を処方。使用したのは千金苇茎湯に大黄を加えた処方です。

同日午後:薬を飲めず

その日の午後、彼女が車で私を送ってくれました。
私は「今夜寝る前に薬を1包飲んで」と伝えましたが、彼女は「ハサミがなくて薬の袋を切れなかった」と飲みませんでした。

3日目:咳が悪化、発熱、肺炎に進行

翌日、彼女から微信で「咳がひどくなり、発熱した」と連絡。小柴胡顆粒を自分で1包服用したものの、肺炎と診断されたとのこと。私はすぐに「小柴胡湯顆粒を1日3回服用して」と伝えましたが、咳が耐えられないと病院で点滴を受けたそうです。

彼女は「平躺するとつらいが、座ると楽」と訴えました。これは肺が化膿している兆候と考え、葶苈大枣泻肺湯を処方し、前の薬は飲まないよう指示。病状が悪化したため、早急な対応が必要でした。

5日目:顔の腫れと新たな症状

2日後、彼女が診所に来ました。舌は淡く、苔は薄く、喉がかゆい状態。口渴は不明でしたが、積極的に水を飲んでいたため判断が難しい状況。大便は正常に戻りましたが、彼女は「顔が腫れた気がする。顔が一回り大きくなった?」と心配そうに尋ねました。

そこで、小青龍湯に石膏を加えた処方を試しました。診所で1包飲むと、彼女は「吐き気がする」と訴えました。私は「この薬に催吐作用はない。これは病気を排出する反応だから、吐きたいなら我慢せず吐いて大丈夫。吐いても薬の効果は無駄にならない」と説明しました。

李哲の説明:
上記の反応は、好転反応の一つたとも言えます。漢方薬の好転反応は様々。例えば以下のような血を吐く反応もあります。一見びっくりする症状ですが、結果的には非常に良かったのです。
血の塊を吐いてから精神状態が良くなり、頭がぼっとする・耳がつまるのも治った【漢方薬の好転反応】

7日目:回復の兆しと喉の乾燥

1日おいて彼女に経過を尋ねると、「喉の乾燥以外は良くなった」とのこと。私は「喉が乾いて水を飲みたいなら、体内に熱が残っている。喉が乾くのに水を欲しくない場合、化膿が残っている可能性がある。よく観察して」と伝えました。彼女は「水を飲みたい」と回答。これなら快復は近いと判断しました。

病状の急激な変化:3つの処方で対応

わずか数日で、彼女の病状は千金苇茎湯、小青龍湯、葶苈大枣泻肺湯と3つの処方を使い分けるほど急速に変化しました。このような急激な進行は予想外でした。

白い皿に盛られた中医の生薬、苇茎(イギクキ)の乾燥素材
千金苇茎湯に使用される生薬、苇茎(いぎくき)

顔の腫れと腎炎のリスク

顔の腫れは注意が必要な症状です。顔が腫れる場合、身体全体も軽度の浮腫を起こしていることが多く、体内外の循環が悪化します。これが進行すると尿量に問題が生じ、放置すると腎炎に発展するリスクがあります。

多くの腎炎は、風邪の不適切な治療や未治療が原因で発生します。たかが風邪でも、放置や誤った治療が重症化を招くのです。

関連記事:「異病同治」の例:蕁麻疹、小児腎炎、劇症肝炎が同じ「麻黄連軺赤小豆湯」で治った

個人差と症状の多様性

体質により、風邪の進行は異なります。以下のような症状が現れることがあります:

  • 鼻づまりや嗅覚障害、鼻炎
  • 頻尿(特に小児に多い)
  • 長期間続く咳

頻尿の子供を連れた親御さんが「膀胱が小さいのでは?」と相談に来るケースも多いですが、これは風邪の治療ミスが原因であることがよくあります。この場合、中医学の「提壺揭蓋2という治療法が効果的です。

体質と外因が病状を左右

病状の進行速度は体質に大きく依存します。長引く咳が続く人もいれば、急速に悪化する人もいます。さらに、誤った治療やタイミングの遅れが悪化を招く外因となります。

中医で風邪を正しく治療するために

風邪は軽視されがちですが、適切な診断と治療が重要です。中医の視点では、症状の変化を細かく観察し、処方を柔軟に調整することが重症化を防ぐ鍵です。

特に、肺炎や腎炎への進行を防ぐには、早期の対応と体質に応じた治療が欠かせません。

李哲の説明

上記の症例には処方箋が三つもあって、非常に複雑だと感じます。でも、これは臨床でよくあること。傷寒雑病論(じょうかんざつびょうろん)の本を見ればわかりますが、風邪のシリーズを治す太陽篇は、ほかの太陰篇よ少陽篇などと比べて、圧倒的にページ数が多いです。

中医学理論でも言いますが、「風善行而数変 」。直訳すると、風邪(ふうじゃ)はあちこち遊走(侵入)しやすくて、症状の変化が非常に多い。

だから張仲景先師は、傷寒雑病論の一番最初になる太陽篇で、すごく詳しく書きました。後世の皆さんが間違わないように、治療のタイミングを失わないように。残念ながら、傷寒雑病論は古典だと歌われているけど、勉強する先生が少ない。なぜ病気を治せる中医学先生が少ないのか?これが大きな原因です。

風邪、インフルエンザ、コロナになったとき、どんな漢方薬を飲めば良いのか?ニハイシャ先生3の記事を翻訳したのがあるので、ぜひ参考にしてください。要点をつかめば、医者なしで自分で治せます。

  1. 張静先生は中国・河北省石家庄市の中医師です。『傷寒雑病論』の処方箋で様々な病気を治す若者実力派。本ブログでは彼女の症例を数多く翻訳しました。張静先生の診療所住所・電話番号などは以下の記事をご覧ください。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)

    ↩︎
  2. 中医の「提壺揭蓋(ていこけつがい)」は、頻尿や尿が出にくい状態を改善する治療法です。体内の水分代謝が滞り、膀胱に「蓋」がかかったように尿がスムーズに出ない状態を、まるで「壺の蓋を外す」ように解消することを目指します。特に、風邪の不適切な治療後に子供や高齢者に現れる頻尿や残尿感に効果的です。この方法では、利尿作用のある生薬(例:茯苓、沢瀉など)を使い、気血の流れを整えて体内の余分な水分を排出します。 ↩︎
  3. 倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。

    ↩︎
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