治らない咳の原因は宿便と瘀血かも!大柴胡湯+桂枝茯苓丸で治癒した例

この記事は約6分で読めます。
中医学で咳を治す方法は、いろいろある

こんにちは、李哲です。

アメリカの中医師、鄭智城先生1の症例、大柴胡汤:医生最怕治咳嗽_郑智城(2013-12-23発表)を翻訳しました。

なかなか治らない咳は、宿便と瘀血が原因かも知れません。

正しい処方箋を使えば、一晩で効果が現れます。間違った処方箋だと、当たり前ですが数日飲んでも効果が出ない。漢方薬の奥深さ、少しでも興味を持って頂けると幸いです。

咳の原因は五臓六腑にもなる

中医学にはある説があります。
「先生は咳の患者さんを怖がる」

なぜなら、咳の原因は様々で、五臓六腑すべてが咳の原因になるからです。

たくさんの咳する患者さんが来た時、私も治療で迷います。

私が咳を治す処方はいろいろです。良く使うのは小青竜湯ショウセイリュウトウ麻杏甘石湯まきょうかんせきとう小柴胡湯しょうさいことう大柴胡湯だいさいことう。ほかには清金益気湯、止咳散など。有効なときもあるし無効な時もありました。

李哲の説明:
麻杏甘石湯まきょうかんせきとうは咳に効果がありますが、咳のタイプにもよります。合わないときは使うと逆にひどくなる、もしくは一時的に治ってもまた再発します。以下はその症例。

子供の繰り返す風邪(発熱、咳、喘息)、1週間の桂枝加厚朴杏仁湯で治り、再発もしてない例

補う漢方薬で治らない咳

最近治療した中年女性の咳。
最初は補中益気湯ホチュウエッキトウを処方して、彼女の喉がつまる感じと咳は減りました。

しかし、新たな問題が出ました。
全身の筋肉が無意識に動くのです。

私の判断は下焦が弱くて、漢方薬の力で更に弱くなっている。人参を追加したら、けいれん・震えるのは治りました。

この処方で咳は減ってきたけど、まだ残っています。このまま良くなると思いきや、徐々に悪化して一日中咳が止まらなくなりました。特に夜は咳がひどい。体も弱くなり、目がとても痛くて、白い痰が絡んで出にくいそうです。

今回は「黄耆甘草湯」を2日処方しました。1日目の漢方薬を飲んでから、目の激痛はなくなり体力回復したけど、咳は続いている。痰が出やすくなり、色は黄色。

本を調べたら「止咳散」だと判断し、2日分を処方したけど無効。相変わらず止まらない咳でした。

李哲の説明:
「黄耆甘草湯」は鄭先生の記事で、絶賛されたことがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

黄耆甘草湯(頻尿、睡眠障害を治せる効果バツグンの漢方薬)

大柴胡湯+桂枝茯苓丸に変えたら、一気に良くなった

あれこれ使ったのに治らない!
私はもう一度考え直しました。

気を補うのもダメ、肺を広げるのもダメ、もしかして攻撃したほうが良いのか?

彼女の便通を聞いてみたら、「最近は便が出にくい。でもお腹が張る感じはないです」の返答。脈診では右が弦脈盛、左関脈は弦脈数。ベロは赤くて、舌下の静脈怒張がある。典型的ではないけど、打つ手がないので宿便を出す「大柴胡湯だいさいことう」と瘀血を治す「桂枝茯苓丸ケイシブクリョウガン」を1日分出しました。

李哲の説明:
桂枝茯苓丸ケイシブクリョウガン」は乳がん治療でも良く使われます。子宮卵巣の瘀血を溶かすことで有名な漢方ですね。乳がんの漢方薬処方箋は、以下の記事が参考になると思います。

中医学で分類する乳癌ステージ1の自覚症状、よく使われる漢方薬を説明します

今回は一気に良くなりました。
彼女が言うのは、夜中の12時に激しい咳をして痰が出たあと、ずっと静かに寝られて、翌日には2回の便通があったそうです。

李哲の説明:
大柴胡湯だいさいことう」は主に肝臓と胆のうの病気を治す漢方薬です。鄭先生の他の記事でも現れました。信じられないかも知れませんが、大柴胡湯だいさいことうで肝不全・肝臓の壊死が治ったのです。詳しくは以下の記事をご覧ください。

急性肝不全(劇症肝炎)の患者、大柴胡湯を飲んで嘔吐と下痢・食欲不振が治り、肝機能数値も正常になった例

李哲の感想

漢方薬は鍼灸と違って、間違った生薬を使うとちっとも効きません。だから、処方の難しさがあるのです。

上記の補中益気湯ホチュウエッキトウ、黄耆甘草湯は気を補う処方。脈が弦脈で数、なぜ補中益気湯ホチュウエッキトウを使うか、私には理解できません。おそらく、鄭先生もなにかの根拠があったでしょう。私にとっては、後から推測するしかないですね。とにかく、最後は治って良かったです。

中医学の昔話には、確かに咳を治すのを嫌がる中医師が多かったです。咳は再発しやすくて、なかなか治らないから。 

臨床で一つ気をつける点は、咳が長い間治らない時、初期の肺がんの可能性がある。ただし、これは西洋医学の検査には出ない、中医学の理論でしか判断できません。以下は一つの例、どうぞご参考にしてください。

上記の「五臓六腑が咳の原因になる」を解釈します。

もともと、最初は肺の問題で咳の症状が出ます。しかし、治療が間に合わなかった、もしくは無効な治療で、咳する時間が長くなったりすると、ほかの臓器にも影響が出るので、この時は肺だけ治す方法では根治ができない。咳は必ず再発します。

黄帝内経こうていだいけい』に書いた内容を例にすると、

咳した時に尿が漏れる症状は、すでに膀胱にまで悪影響が及んでいる。だから、肺を治す以外に、膀胱も治さないといけません。

咳した時に便が漏れる症状は、すでに大腸まで悪影響が及んでいるので、肺と大腸両方治さないといけない。

上記の2つは、あくまでもひどいバージョン。
軽く影響した時は、精密な分析が必要です。

問題は、影響を受けた臓器がどれなのかを、見極めるのが難しい。

根本が見えてくれば、漢方薬の治療方法は簡単で、異病同治などの理論もあるわけです。以下は、全然違う病名なのに同じ漢方薬を出した例。参考になると幸いです。

鍼治療の場合は、漢方薬ほど難しくないです。

寒熱を分析すれば、あとは関連のツボを刺せば、すぐ効果が現れます。中には寒熱を問わず有効なツボもあります。たとえば天突穴、膻中穴、内関、公孫、肺兪など。以下は一つの鍼治療例、参考にして下さい。

鍼は即効性があるけど、誰でも1回で治るとは限らないですね。

私も以前は咳を治すとき頭を抱えたけど、今は昔ほど悩まないです。臨床経験が増えたのが大きなキッカケかも知れません。ただし、鍼灸の勉強では油断大敵なので、引き続き頑張ります。

(おわり)

  1. 鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました