症例の概要:食事が肺に届くような感覚に悩む男性
こんにちは、李哲です。
中国河南省石家荘市の女医、張静中医師1の症例、吃下去的食物能走错了地方吗?(2021年12月29日 発表)を翻訳しました。以下からは翻訳文。
30歳の男性が、ある奇妙な症状に悩まされていました。彼は「食事をすると、食べ物が胃ではなく肺に入ったような感覚がある」と訴えます。具体的には、温かいものを食べると肺が熱くなり、冷たいものを食べると冷たくなるというのです。
理性的には「食物は100%胃に届いており、肺に行くはずがない」と理解しているものの、この不思議な感覚が2年間続き、病院での検査でも異常が見つからないため、少し抑郁(うつ状態)に陥っていました。
この感覚以外に目立った症状はなく、見た目も健康的で壮健そのもの。もしこの悩みを口にしなければ、誰も彼に問題があるとは思わないでしょう。しかし、この感覚が原因で不安を感じ、時には悪夢に悩まされることもありました。
中医師の提案:漢方薬による治療とその効果
私が彼に提案したのは、漢方薬を1回分服用することでした。この薬は下痢を引き起こすもので、6回以上の排便を促します。「もし排便回数が足りなかったら、また診察に来てください」と伝えました。
彼は「2回分まとめて欲しい、往復の手間が省けるから」と頼みましたが、私は「それはできない」と断りました。薬の強さを考慮し、安全のために様子を見ながら進める必要があったからです。
彼は1回分を服用し、結果として6回以上の激しい下痢をしました。すると、驚くことにその奇妙な感覚が消え、症状が完治したのです。
意外な展開:ダイエット目的で薬を求める友人
その後、彼は友人を連れて再び訪れました。「友人もこの薬を試したい」と言うのです。しかし、友人の目的は彼と同じ症状の治療ではなく、なんと「ダイエット」でした。彼曰く、「この薬で下痢をした後、体がとても軽く感じて快適だった」とのこと。友人がその話を聞いて「ダイエットに使えるなら自分も」と考えたようです。
私は内心で「冗談じゃない!」と思いました。この薬の強烈さを彼は全く理解してない。私は「この薬は気軽に使うものではない」と説明し、彼が2回分を欲しがった時も断ったほど慎重に扱っていました。無知とは恐ろしいものです。
中医学的解釈:体内に潜む「伏飲」が原因
私は彼にこう説明しました。
「あなたの体には『伏飲(ふくいん)』と呼ばれるものが潜んでいました。これは体内に滞留した異常な水分のことを指します。食事をするとこの伏飲が動き出し、肺のあたりに影響を与えるため、食物が肺に入ったような感覚を引き起こしていたのです。この漢方薬は、伏飲を体外に排出するために用いたもので、下痢を通じてそれを取り除いた結果、症状が改善したのです。」
まとめ:症状改善の鍵は正確な診断と慎重な治療
この症例からわかるのは、奇妙な症状であっても中医学の視点で原因を特定し、適切な治療を行うことで改善が可能だということです。ただし、薬の効果が強力な場合、安易な使用は危険を伴います。
彼の友人が減肥目的で薬を求めたように、知識がないまま自己判断で使うことは避けるべきです。正確な診断と医師の指導のもとで治療を進めることが、健康への近道と言えるでしょう。
(おわり)
張静先生は中国・河北省石家庄市の中医師です。『傷寒雑病論』の処方箋で様々な病気を治す若者実力派。本ブログでは彼女の症例を数多く翻訳しました。張静先生の診療所住所・電話番号などは以下の記事をご覧ください。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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