こんにちは、李哲です。
中国・河北省の中医師、張静先生1の治療例、卵巢早衰和怀孕(2019.1.10 発表)を翻訳しました。病院では卵巣機能不全で人工授精するしかないと診断した女性が、漢方薬で様々な辛い症状を治した以外に、最終的には妊娠までした内容です。
漢方薬がいかに患者さんの役に立つのか、読んだあとは分かると思います。
結婚1年の不妊症女性
この患者さんは、ずっとネットを通じて治療した方で、私の友人の友人です。結婚して1年経っているけど、まだ子供ができてないから、いろんな治療を始めました。
ある日、彼女は友人に勧められて私の所に来ました。住まいが遠いので、直接来て診るのは時間がないそうです。
私が思ったのは、彼女は年も若いし、妊娠は難しくないでしょう。そして、ネットを通じて治療し始めたのです。
お腹が張って重い、はれて痛い症状は、温経湯で効果がなかった
彼女の1番の症状は、下腹部が重くてはる。冷たく感じる。特に起床後はガスが溜まり、下腹部がはれて痛くてつらい。
彼女は「骨盤内炎症性疾患が原因ではないですか?」と言ってました。以前、病院の検査で、骨盤内炎症性疾患だと言われたから。
ほかの症状は、生理の量がとても少ない。
彼女は、生理の量が少ないのが不妊症につながるのではないか?と心配していました。
私は彼女に説明しました。
「生理の量が少ないのと不妊症は関係ありません。心配しなくて良いです。ただし、毎朝お腹がはるのは、治さないといけません。」
処方箋、温経湯のアレンジしたのを7日処方。
診療所で煎じて、宅急便で送りました。最初は私が薬を煎じます。生薬は診療所のもので、煎じるのも自分、だから彼女になにか問題が生じたら、処方箋が原因だと分かるからです。
7日後、再診察したけどちっとも変化がない。朝は相変わらずお腹がはって辛いそうです。
瘀血を溶かす抵当湯2日で、お腹がはるのはすぐ治った
もう一度詳しく問診して、子宮の冷えは排除されました。そうすると、瘀血(おけつ)が原因です。
処方箋は抵当湯に変えました。
当時の診療所には、生薬が一つ足りなかったので、彼女に自分で買うようにしてもらいました。
彼女が買いに行ったら、同じような生薬が売り切れなのです。しかも値段が高くて、私が煎じて宅急便で送った総額よりも高い。少しでも安く済ませるために、生薬を揃えてから煎じて宅急便で送りました。
2回飲んでから、お腹がはる症状は、ほとんど治りました。
もうすぐ生理が来るけど、彼女は生理の量が少ないのを気にしだしたのです。そして、私は四物湯をアレンジして、生理の量を増やすようにしました。
まだ20代なのに、卵巣機能不全だと言われて落ち込んだ患者
問診をしてみたら、ほぼOKだと判断しました。彼女も妊娠したかったけど、2ヶ月連続で失敗したので、非常に落ち込んでいました。病院に検査に行ったら、「卵巣機能不全です、すぐ人工授精しないと間に合わない!」と言われました。
彼女は怯えて全面的な検査をもう一度してから、私に連絡したのです。
私は彼女を慰めました。
「妊娠は焦ってはいけません。中医学と西洋医学の判断基準は違います。病院の検査結果を気にしないで下さい。まだ20代なのに、卵巣機能不全なんて早すぎです。」
彼女の症状は、最近特に疲れやすい。排卵期はお腹のはりがひどい、足の指先がすごい冷える。
今回の漢方薬は、生理が終わってから飲み始めました。真武湯で体質改善を狙ったのです。
漢方薬2週間くらい飲み続けて、無事妊娠した
私は彼女に説明しました。
「漢方薬を飲むと、非常に妊娠しやすくなります。リラックスして。」
彼女はリラックスなんかできませんね。ずっと卵巣機能不全を考えていました。彼女は親しい友人に相談したら、友人が言うのは「張静先生の話を信じて!漢方薬飲みながら、こんなに疑うのは、なんの役にも立たないよ。」
彼女は今度こそ決意を出しました。漢方薬を10日飲んで、その後また追加して数日飲んだら、妊娠したのです。彼女は最初信じられなくて、何度も検査したけど、妊娠が確定されました。
李哲の解釈
上記の文章には、私の説明を入れました。
全然違う病名なのに、なんで同じ処方箋を使うのか?
病気の原因(源)が同じだから、同じ処方箋で治せるのです。
中医学では「異病同治」(いびょうどうじ)だとも言います。「異病同治」の例として、以下の記事がさんこうになるので、どうぞご覧ください。
張静先生の記事を読むと、2つのことが分かります。
- 生理の血が少ないのは、不妊症と関係がない
- お腹が腫れて痛いのは、瘀血(おけつ)が原因で、不妊症の原因でもある
治療として使った抵当湯。これは面白い処方箋なので、ご紹介しようと思います。
抵当湯は『傷寒論』に載せている有名な漢方薬。専門的に下腹部の瘀血(おけつ)を下ろすやつです。
処方内容はヒル(水蛭)、虻虫、大黄、桃仁。
詳しい日本語の説明は、以下の外部サイトが参考になります。記事中に登場する漢方医:矢数道明 – Wikipediaは中国でも有名な人物。
健康情報: 抵当湯(ていとうとう)・抵当丸(ていとうがん) の 効能・効果 と 副作用
ほかの生薬は置いといて、今日はヒルだけ話します。
蛭(ヒル)も漢方薬として使うのか?
驚かないでください。
かなりメジャーに使う生薬で、様々な難病を治してくれるありがたいものです。
ヒルは必ず血を吸うヒル。
市販のヒルを見たことありますが、どこから持ってきたのか、デブっているヒルばかりでした。血を吸うヒルはわりと小さいです。そんな大きなヒルだったら、本来の効果がありません。飲んでも瘀血(おけつ)が出ないので、徐々に皆さんは漢方薬が効かないと悪口を言うわけ。
本当の原因は、質が悪い生薬を使っているから、効果がないだけです。
本物のヒルを取りたいなら、仕方ないですね。足を川の水に入れて、ヒルがくっつくのを待つしかない(笑)
数年前、山間地域をハイキングして降りたとき、足が変だと思って見たら、なんとヒルがくっついて、めちゃくちゃ血を吸っていました。ある程度は防御したはずなのに、よく隙間から入って血を吸ってますね。
小さいときはド田舎育ちで、子供たちが川の水で泳いだあと、みんなお尻・足にヒルがくっついていました。お互いにサンダルでお尻を叩いて、ヒルを落としたのが懐かしい光景ですね。
瘀血を溶かす漢方薬は、もう一つ有名なのがあり、狂犬病を100%治す処方箋になっています。西洋医学では発作したら100%死ぬ病気、中医学ではどう治しているのか、以下の記事をご覧ください。
漢方薬で不妊治療を続けると、唯一のデメリットがあります。
男の子しか産めない。
以下の記事で、その原因を述べました。どうぞご参考に。
はり治療では、不妊治療と生理不順・生理痛を治すツボは同じです。子宮への血行不良を改善し、詰まっているところが通るようにします。
まだ症例にする程度のものがないので、鍼治療例は控えさせていただきます。今後もし良い症例があったら、またご紹介します。7年前の足ツボ整体の症例は一つあるので、良かったら参考にしてください。
張静先生は中国・河北省石家庄市の中医師です。『傷寒雑病論』の処方箋で様々な病気を治す若者実力派。本ブログでは彼女の症例を数多く翻訳しました。張静先生の診療所住所・電話番号などは以下の記事をご覧ください。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
↩︎鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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