高齢者の便秘を治す漢方薬:腎臓を強化して、腸を潤う「済川煎(さいせんせん)」

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こんにちは、李哲です。
アメリカの中医師:鄭智城先生1の記事、济川煎:老人家大便难中医如何处理_郑智城(2014-01-25 発表)を翻訳しました。高齢者の便秘に最適な漢方薬が紹介されています。日本ではあまりなじまない漢方薬ですが、役に立つ情報になると幸いです。

一般的な便秘解決策は、高齢者に向かない

年寄りは、習慣性便秘になりやすいです。
一般的なアドバイスは繊維素が多い野菜・果物をたくさん食べて、水をたくさん飲む。

このアドバイスは、見た目は非常に合理的。
気が強い若者にとっては、ピッタリ合うかも知れません。
しかし、高齢者に対しては合わないです。

李哲の説明:
鄭智城先生は以下の症例で呼びかけました。果物はなるべく少なめに食べましょうと。参考になると幸いです。

めまい・気持ち悪い原因は、果物の食べ過ぎだった。全身のむくみは2日の麻黄附子細辛湯で治り、首が辛いのは1日の桂枝加葛根湯で治った。

高齢者の便秘は「腎虚証」が原因

年寄りは一般的に腎虚証じんきょしょうが多いです。

中医学の理論で、腎臓は大小便を司る。
腎臓が弱くなると、大小便は両方とも影響をうけやすい。
便秘ぎみになり、頻尿など前立腺のトラブルが起きます。

簡単にいうと、歳をとった腎虚証が原因で便秘になる。

済川煎を処方した理由と各生薬の紹介

この前、一人の黒人のおばあちゃんが来ました。便秘がひどくて、4日も出なかったときは意識不明になり、病院に運ばれて薬を飲んだけど、あまり効果がなかったそうです。

私は済川煎(さいせんせん)を処方しました。5日分。処方内容は当帰、牛膝、肉従蓉(にくじゅよう)、沢瀉(ダクシャ)、升麻、枳穀。

牛膝(ごしつ)の画像

牛膝(ごしつ)の画像

処方を解釈すると、肉従蓉で腎臓を強化し、当帰は腸を潤う

一般的に高齢者は津液・血液も足りないので、腸内は潤いが足りません。肉従蓉で腎臓の陽気を強化する同時に、当帰で腸内を潤わないといけません。

肉従蓉は貴重な生薬で、「砂漠の人参」という別称があります。

ご当地の人は肉従蓉を野菜として食べていて、ご当地の平均寿命は比較的に長いそうです。今の野生西洋参みたいに、過度の採伐がひどいです。

升麻で気虚を改善することで、腸の働きもよくなる

普段はこの2種類の生薬だけでも、便通が解消されます。しかし、年寄りはもう一つトラブルがあります→「気虚」。「気虚」だと臓器が下がり気味になるので、升麻を少し入れて、垂れ下がった臓器を持ち上げます。気の流れがよくなれば、腸の動きも戻る。

李哲の説明:
鄭智城先生は他の記事で、臓器が垂れ下がることに関して述べてました。詳細は以下の記事をご覧ください。

子宮後屈の原因は「気血」の不足。胸が垂れるのも同じ原因で、気血を補う方法で戻せます

たくさんの人は、お腹のマッサージを勧めています。これは外部からの力。升麻、牛膝、枳穀(きこく)、3つの生薬は少ない力で体内を動かせるので、マッサージよりおオススメ。 魚をあげるより、魚を釣る方法を教えたほうがいいですね。

漢方薬1杯目で便が出たけど、その後は頭痛・めまいがする

黒人老婦人は再診察に来たとき言うのは、「1杯目の漢方薬を飲んで便通がありました。最初は硬かったけど、あとは柔らかい便。その後は頭痛とめまいがしました」

頭痛・めまいは彼女の体がとても弱くて、便が出る時に「気」も出たからです。この処方箋で分かるのは、体が弱い人は枳穀(きこく)を追加してはいけない。私は当時いろいろ考えて1gの枳穀(きこく)を追加したけど、やはり入れないべきでした。

枳穀(きこく)の画像

枳穀(きこく)の画像

後世の処方箋は良いものもある

張仲景ちょうちゅうけいは高齢者の便秘に、蜜煎導法(みっせんどうほう)しかない感じです。蜂蜜を円錐形に練ってから、肛門にいれるやり方。この方法より、済川煎(さいせんせん)のほうが便利です。

後世の処方箋は繊細に設計されているのもあるので、全部否定するのはダメですね。

李哲の説明:
鄭智城先生が話した後世の処方箋と言うのは、『傷寒雑病論しょうかんざつびょうろん』をもとにしない流派。中医学業界では、「温病派」と呼ばれるのが多いです。正統派の中医学と何が違うのか、以下の記事で詳しく説明しました。参考になると幸いです。

漢方が効かない原因は、「温病派」処方かも知れない。「経方派」と「温病派」の処方箋の違いを詳しく説明します。

(おわり)

  1. 鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。

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