漢方には「温病派」と「経方派」、2つの流派がある
こんにちは、李哲です。
治療活動を行う20年、私はたくさんの漢方薬を飲む患者さんを見てきました。残念ながら漢方薬だけで治った人は少ない。おそらく、これが原因で漢方薬を信じる人がどんどん減っているでしょう。
私も長春中医薬大学を卒業したとき、「漢方・鍼灸は効果がない」と思いました。これは過去記事で説明しているので、よかったらご覧ください。
漢方薬の発祥地である中国ですら、漢方を信じる人と信じない人で両極端です。なぜこんな状況に陥ったのかは、中医学歴史で有名な2つの流派を話さないといけません。
- 「温病派」(おんびょうは)
- 「経方派」(けいほうは)
簡単に説明すると、「温病派」の処方だったら、何ヶ月飲んでも効かない。しかし、「経方派」はたちまち病気を治せる。
いったい、温病派と経方派は何が違うのか?なぜ温病派の処方は効かないと言うのか?に関して説明します。
温病派の定義
温病派は「時方派」とも呼びます。
(美名は、時代とともに進歩)
彼らの医学基礎になるのは『温病条弁』(吴鞠通著 1798年)。そして「南方無傷寒」の説を信じて、『傷寒雑病論』を捨てています。(もしくは勉強してもわからない)
温病派の処方箋の特徴
体を冷やす生薬が多い
温病派の特徴は、身体に陽気に対する認識が間違っています。処方箋は、よく陽気を傷つけるのが多い。
温病派の医師は「南方無傷寒」だと言うので、ほとんどの処方箋は「陰虚証を治す」「清熱解毒(熱を冷まして解毒する)」、冷やす生薬が多いです。
温病派の1番多い診断名は、「陰虚証」。
陰を補う生薬は、だいたい体を冷やすものが多いです。
処方箋は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」やりかた
病理学、薬理学の知識も間違っているので、処方箋は網羅主義で「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のやり方です。
たとえば咳を治すとき、彼らは『本草綱目』に載せている咳を治せる生薬を全部入れ。品数はなんと60,70種類のときもあるけど、結果的には効果がない時がほとんどです。

本草綱目:明朝の李時珍が1578年に完成した生薬の百科全書
珍しくて高価な生薬を使いたがる
ほかにある特徴は、珍しくて探しにくい生薬を使いたがる。
たとえば牛黄、サイガの角、サイの角…なかなか見つからない生薬だからこそ、自分の腕前を見せられる。患者さんが治らなかったら、「揃えてないあなたが悪いんだよ」と言い訳できます。

貴重な生薬:牛黄。胆石症になった牛の胆から取り出したもの。
民国時代の著名な作家:魯迅(ろじん)は、幼いときお父さんが重病になり、処方してもらったのが珍しい生薬ばかりでした。もちろん、全部揃える前にお父さんがなくなり。その後から、魯迅は「漢方は詐欺師でデタラメだ!」と偏見を持つようになりました。(皮肉な話ですが、魯迅はその後、肝臓がんで死去)
高価な薬な上に効かない。たくさんの騙された患者さんがいるから、「漢方薬はデタラメだ」と言われるわけです。
現代の一つの例を上げると、中国産の天仙液。抗癌作用があると宣伝され、高価な生薬ばかり入っているので、見た目はすごい効きそうです。残念ながら、天仙液では癌が治りません。ニハイシャ先生は以下の症例で断言していました。
功を奏しなくてもいい、保身の医学
温病派が生まれてから200年間、ずっと中医学の主流になりました。主な原因は、毒性が強い漢方を使わないので比較的に安全。患者さんを死なせたら、漢方医は商売もできなくなるからです。その代わり、効果が薄いもしくは効果がなくても良しとする。
まさに、自分の地位・名声を失わないための「保身」です。
治療に用いる生薬は、性質が温和なものばかり。
美名は、軽・霊・匠…重病・難病の治療効果は一切ない。ただの風邪ですら、彼らの治療だと数ヶ月でやっと治る。重い病気、たとえば癌の場合は、考えもしないで西洋医学の手術をすすめます。
温病派の代表的な漢方薬
温病派が200年前からずっと存在したので、代表的な市販薬は非常に多いです。現在の中国で販売している既製品は、ほぼ温病派の処方。以下がその一部です。
- 銀翹散
- 桑菊飲
- 竜胆瀉肝湯
- 牛黄解毒丸
- 防風通聖散
- 十味敗毒湯
- 安中散
- 平胃散
… …
一時期、中国ではやった「喉の痛みには板藍根」というのも、経方派の考え方ではありません。

生薬:板藍根の花
日本では「板藍根のど飴」を売っていますが、板藍根が主成分ではなくて、たっぷりの砂糖が主成分なので、気をつけてください。 喉が治るところか、砂糖で脾胃が冷えて、将来的にほかの病気を惹き起こします。
経方派の定義
倪海厦(ニハイシャ)先生2の治療日記には、「経方」の言葉がよく出ます。経方派の知識は主に3点。
『傷寒雑病論』の処方箋を大元にして、アレンジする中医師を「経方派」だと呼びます。
経方派は3世紀前後に現れて、『温病条弁』(吴鞠通著 1798年)が出版されるまでの1500年間、ずっと経方派が盛んだ時代だと言えます。
経方派の処方箋の特徴
体を温める漢方薬が多い
清熱解毒・体を冷やす生薬を使う「温病派」と真逆で、「経方派」は陽気を大事にしているので、陽気を強化する生薬を使うのが多いです。日本のドラックストアでよく見かける桂枝湯、葛根湯。飲んだあとは、みんなポカポカになります。
トリカブトが入った処方箋だと、さらに暖かくなります。以下には乳がん患者がいますが、わずか2週間の漢方薬で手足が暖かくなり、痛みが治りました。

ありふれた生薬を使うので、値段がすごく安い
『傷寒雑病論』に載せてある処方箋、生薬の原価が安いので、治療費用がめちゃくちゃ安い。シナモン(桂枝)、芍薬、トリカブト、麻黄、大黄など原価はビックリするくらい安いです。
一つ例をあげます。
心臓疾患を治すとき、らっきょう(生薬の名前は「薤白」)を使うけど、皆さん、らっきょうの値段がいくらだと思いますか?
しゃっくりを止めるとき、みかんの皮を使います。みかんの皮って、値段が高いと思いますか?しゃっくりを止める簡単な処方箋は、以下のニハイシャ先生の症例をご覧ください。

安い漢方薬と比べ物にならないは西洋薬。特に難病・重病を治すとき、医療保険制度がなかったら、一般人は絶対に治療費用が払えない。アメリカは国民全員保険ではないから、治療しただけで貧乏になる人がたくさんいます。以下の記事をご覧ください。8年間の治療で破産寸前になった患者さんもいます。

処方箋はシンプル・イズ・ベスト
『傷寒雑病論』の処方箋は、シンプル・イズ・ベスト。少し組み合わせを変えるだけで、治療する部位が変わります。たとえば、
- 甘草+桂枝だと心臓がドキドキするのを治せる。
- 甘草+芍薬だと、お腹の痛みを治せる。
- 甘草+乾姜だと、寒がり・風邪を引きやすい・汗かき・食欲不振などを治せる。
簡単な処方だけど、即効性は愕然とするものばかりです。
甘草+乾姜+桔梗、3種類で頑固な寝汗・不眠症を治した例があるので、どうぞご参考に。
『傷寒雑病論』の処方箋に関する面白い統計情報がありました。
- 生薬が1種類だけの処方箋は、15個。
- 生薬を2種類入れた処方箋は、40個。
- 生薬を3種類入れた処方箋は、45個。
- 生薬を4種類入れた処方箋は、30個。
- 生薬を5種類入れた処方箋は、28個。
合計158個。
『傷寒雑病論』に載っている処方箋は全部で281個なのに、5種類以下の処方箋はすでに半分以上を超えている。これは非常に怖い数値です。いかにシンプルに組み立てられたか、皆さんはお分かりでしょうか。
性質が猛烈な劇薬を使うときが多い
経方派と温病派の1番目立つ違いは、劇薬を常用することです。たとえば半夏、ウズ(烏頭)、甘遂、大黄、トリカブト、細辛…何時も劇薬を使うと限らないけど、必要なときに容赦なしで処方します。だから、治療効果は迅速で治りが早い。
「経方家」は小さな風邪から様々な癌まで、あらゆる病気を治療するし、効果てきめん。特に風邪・インフルエンザを治すときは、1日目で緩和。2日目には完治するのがほとんど。以下はいくつかの症例、参考になると幸いです。
▼白血病と全身性エリテマトーデス(SLE)は、西洋医学にとって難病です。しかし、「経方家」の正しい漢方薬治療を受ければ、短期間で治る。「温病派」先生は最初から治療を拒否し、患者さんを病院に送ります。

▼てんかんが、わずか1週間で80%改善しました。これも経方家こそ出せる治療効果です。温病派の処方で「てんかん」を治せるのは、まだ聞いたことがありません。

▼産後大出血。
西洋医学は子宮全摘手術をすすめるけど、妊娠できなくなるので、患者さんは断固拒否。幸いにも、漢方薬で一晩で血が止まり、子宮も取らなくて済みました。

▼糖尿病、乳癌などの様々な症例が入った記事です。血糖値が一晩で下がったのはビックリするかも知れませんが、中医学では良くある話です。

経方派の処方箋は、両刃の剣(りょうばのつるぎ)
経方派が流行らない理由は、「温病派」が流行ったのと真逆です。
経方派が使う生薬は、性質が温和なものが少ない。逆に、重病・難病を治すとき、毒性が強いのが多くて、両刃の剣(りょうばのつるぎ)とも言えます。処方箋が正しい時は、たちまち治る。処方箋が間違った時は悪化して、患者さんを死なせる可能性もあります。そして、遺族に「毒性が強い生薬のせいで死んだ」と悪口を言われる。
経方派の先生が背負う責任は非常に重く、肝が小さいとやってられません。こんなハイリスクの仕事、好きになる人が少ないのも想定内のこと。いずれの時代も、自分の地位・名声を捨てるまで、患者さんのためにと思う先生は少ないです。
代表的な漢方薬
経方派のよく見かける漢方薬は、たくさんありますが、少しだけ記述します。日本のドラックストアには、葛根湯が並んでいるのが1番多かったので、おそらく葛根湯を知っている日本人は多いでしょう。
- 麻黄湯
- 桂枝湯
- 葛根湯
- 大承気湯
- 麻黄附子細辛湯
- 四逆湯
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
- 烏頭桂枝湯 … …
経方派と温病派の特徴の比較表
流派の説明をところどころしたので、分かりやすくするために表を作りました。
温病派(おんびょうは) | 経方派(けいほうは) | ||
中医学基礎になる著作 | 『温病条弁』(吴鞠通著 1798年) |
(いずれも3世紀前後の著作) |
|
病気に対する認識 | 陰虚証が多くて、清熱解毒・体を冷やすのが多い | 陽気を大事にして、体を温めるのが多い | |
使う生薬の特徴 | 処方の組み立て |
煩雑。 一つの処方箋に、30~50種類の生薬を使う |
シンプル。 一つの処方箋に、2~5種類もしくは10種類の生薬を使う |
毒性が強い生薬を使うのか |
使わない 性質が温和なものばかり使う |
使う 性質が猛烈、毒性が強い生薬を使うときが多々ある |
|
手に入りやすさ |
珍しい生薬を使いたがる。 たとえば犀の角、牛黄 |
安くてあり溢れるものを使う。たとえば桂枝、生姜、芍薬、半夏、トリカブト、甘遂 | |
治る期間 | 長く飲んで治す。簡単な風邪すら数ヶ月でやっと治る | 短期間で治る。風邪なら1~2日で完治 | |
重病、急病、救急治療 | できない | 得意 | |
治療費用 | 高価な薬で長期間で治るから、治療代はわりと高い | 安い生薬で短期間で治すから、治療代はすごい安い |
中医学の将来は、経方派が切り拓く
温病派のボロクソ言ったように見えますが、全部否定するわけではありません。温病派が200年も存在しているのも、それなりの効果があるからです。たとえば、胃腸が弱い方に補中益気湯、六君子湯、平胃散などの効果は否定できません。ただし腸閉塞、十二指腸潰瘍、胃がん、食道癌など治せないのが痛いところ。
病気を早く治したい。
重病・難病を治したい時は、『傷寒雑病論』の劇薬を使わないと治せません。
たとえば乳がん、肝臓がん、全身性エリテマトーデス…温病派の処方は10年飲み続けても治りません。乳癌患部の腐った肉が再生されるなんて、温病派の先生は想像もできないでしょう。『傷寒雑病論』の処方がどれだけ強力かは、以下の症例を見れば分かります。
中医学の発展から見ると、重病・難病・緊急救命ができない「温病派」が主流になるのはダメ。けっきょく、みんな病院に駆け込んで薬の副作用で早死。そして、「漢方薬はプラセボ効果で、病気を治せない」という間違った観念がどんどん広がります。
経方派の先生が増えれば、本物の漢方薬・鍼灸の効果を実感する人が増えて、「病気には漢方薬・鍼灸!」という正しい考え方が常識になる。
幸いにも、ニハイシャ先生がいろんな症例を公表し、中医学教育に力を入れてから、世間は経方派を再び重視し始めました。今はニハイシャ先生の弟子たちが努力して、症例を公開する以外、生徒を募集して教えることで、さらに経方派を信じる人が増えています。
最近の例を上げると、西洋医学の病院が漢方薬を積極的に導入・応用して、新型コロナウィルス肺炎を短期間で完治したニュースです(以下のリンク記事をご覧ください)。病院の医師たちを裏で指導するのが、ニハイシャ先生の弟子:楊貞先生と李宗恩博士です。

日本はどうでしょう…
漢方薬の既製品は溢れているけど、漢方薬・鍼灸で病気を治したい人はあくまでも少人数。ほとんどの方は、病院に行きます。しかも、日本ナンバーワンの病院を選びたがる。
肩書きがすごい先生がいて、最先端の医療機器が揃えば、病気が治せる病院だと思いますか?ノーベル医学賞をもらえば、日本の医療技術が高いと思いますか?
違います。
西洋医学が適しているのは、骨折・ケガなど外科手術のみ。内科の病気は、治療すればするほど死期が早まる!
経方派の漢方薬・鍼灸こそ、患者さんを救える仁術です!
最後の関連記事には、西洋医学でいう「不治の病」「難病」の症例を一部貼りました。漢方薬・鍼灸のパワーがどれだけ強いのか、ご覧ください。
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
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漢方に流派が二つあるなんて知りませんでした
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つたない文章ですが、参考になると幸いです。