こんにちは、李哲です。
中国・河北省の張静先生*1の漢方薬治療例を翻訳しました。穿刺しても再発する胸水は、漢方薬で完治できることを知ってもらえると嬉しいです。
中国語本文のリンク先は、
(2020-12-08発表)
胸が苦しい・力が出ない・右胸と脇腹が痛くなった患者、穿刺しても胸水が再発
68歳の女性患者。
以前は健康的で風邪すら引かなかったですが、ある日突然胸が苦しい・力が出ない・右胸と脇腹が痛くなりました。
ほかの症状は
- 軽い咳がする
- 喉と歯が痛い
- 食欲は非常に落ちた
- ずっと胸が腫れて苦しい
- 便の量がとても少ない
- 舌は赤黒、舌苔は黄膩
病院で検査したら胸腔積液(胸水)、入院して穿刺してもらいました。数日後に退院したけど、退院時の胸水は1.4ml。1週間後、彼女はまた胸が苦しい症状が再発し、病院に行ったら胸水が2.3mlまで増えました。
病院の先生が言うのは、「肺が広がらなくなりました。今後は更にひどくなるでしょう」そして、彼女はこちらに来院。
漢方薬を飲んでから胸が苦しいのは治り、便も毎日出るようになった
私は彼女に説明しました。
「胸水穿刺はしなくていいです。胸水がなくなれば、肺の機能も自然に良くなります」
当院に来たときの症状は
- 深呼吸が辛い
- 胸が苦しい
- 便通は2日に1回出る
- 水を飲みたくない
- 脈診では沈滑数
処方は以下の通り。
红大戟、白前、黄芩、桂枝、人参、炙甘草、半夏、紫参。
飲み始めてから徐々に良くなりました。胸が苦しいのはなくなり、便も毎日出るようになりました。
▼李哲の補足説明:
胸水ではなくて、単なる胸が苦しい症状は鍼治療の効果も抜群です。以下は一つの症例、参考になると幸いです。
胸水は2.3mlから0.4mlまで下がり、胸が苦しいなどの諸症状はすべて治った
私は彼女の体が大丈夫だと判断して、1つの生薬:芫花(げんか)を追加し、「飲んだあとに吐き気がして下痢するけど、怖がらないでください」と教えました。
案の定、飲んだあとに吐き気がして便からは粘液・粘膜みたいなものがたくさん出ました。
彼女は不思議がって質問しました。
「なんで便から粘液が出るんですか?」
私「肺と大腸は表裏関係で、胸腔の異物は便から出ます」
その後、彼女は漢方薬があまりにもまずくて、飲むのを止めました。病院で検査したら、胸水は0.4mlまで減少。
私はもう一度漢方薬を飲むことをすすめたけど、彼女の答えは「自覚症状が一切ないし、とても楽なので、しばらく経ってからまた飲みます」
効果アップを狙った生薬が、邪魔になってしまった
彼女が漢方薬を止めたのは、私のせいが大きいです。もし、3gの芫花を追加しなかったら、そこまで吐き気がしないはず。もとの処方箋は、長めに飲めば同じように治ります。
患者さんは0.4mlの胸水を気にしてないけど、私は徹底的になくしたかったですね。
(おわり)
李哲の感想と解釈
張静先生の処方箋を分析すると、「澤漆湯」から澤漆・生姜を削除+红大戟。
「澤漆湯」は『傷寒雑病論』にある処方箋で、組み合わせは澤漆、半夏、紫参、白前、甘草、人参、桂枝、黄芩、生姜です。
红大戟は小さな毒性があるけど、芫花と比べ物にはなりませんね。最初の処方箋は飲んでも吐いたり下痢したりなかったけど、2回目の処方箋はすごいことになりましたから。
芫花は毒性が強いので、飲んだあと嘔吐・下痢になる。抗がん剤も毒薬だから、飲んだあとに吐き気・嘔吐するわけです。ただし、芫花は自然な毒なので、体に長く滞在しません。しかも、漢方薬は処方するとき、解毒作用がある甘草なども入れて、さらに体を守ります。
邪気を追出すけど、免疫力は損なわない。
これが漢方薬の匠の技。
免疫力と癌細胞を同時にやっつける抗がん剤とは、比べ物になりません。ちなみに、芫花の使用例は以下の記事もあります。参考にしてください。
胸水が穿刺しても再発するのは、当たり前のことです。胸水の源を突き止めてないから。漢方薬は胸水を抜く以外に、五臓六腑の強化も同時に行うので、胸水が二度と再発しなくなります。
胸水はまだ軽いバージョンですが、万が一肺に水がたまる肺水腫になったら、危篤な状況になります。西洋医学の治療で水を抜いても、患者さんは余命2週間しかありません。
中医学は西洋医学と違って、まだ治すチャンスがあります。以下はニハイシャ先生の症例、参考になると幸いです。
色々書きましたが、要するに胸水であろうと肺水腫であろうと、西洋医学の治療では治せません。唯一治せるのは、中医学を探すこと。
「澤漆湯」の日本語症例を探そうとしたら、あまりなかくて一つの論文しか見つけてないです。参考にしてください。
*1:張静先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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