こんにちは、李哲です。
アメリカの著名な中医師、倪海厦(ニハイシャ)先生1の弟子:張孟超先生の漢方薬症例、十棗湯案例【一】崩漏を翻訳しました。
3ヶ月も続く不正出血、咳、痰に白い泡がある、手足が氷みたいに冷たいなどは、初期の肺がんの症状です。幸いにも漢方薬を飲み続けて3ヶ月、諸症状が治りました。以下の翻訳文、漢方薬に対する理解とマメ知識が増えれば幸いです。
3ヶ月も続く咳と不正出血、どこに行っても治らない
2008年2月27日、初診。
患者さんは43歳の劉さん、既婚女性。治療に来た原因は、この3ヶ月ずっと不正出血と咳が続いている。西洋医学と中医学の治療を受けたけど治らない。
当時、私が思ったのは、簡単な芎帰膠艾湯もしくは桂枝加竜骨牡蛎湯の類だろう。しかしまたすぐ、他の先生たちが治療してみて無効だったから、きっとほかの原因もあるでしょうと思いました。ニハイシャ先生がよく言うのは、:己を空っぽにする、先入観を入れるな!
問診内容
問診で分かったのは、、生理の血は薄い赤。サラサラで血の塊はない。出血が止まらない。
ほかの症状は、
- 腰とお腹は痛みがない
- 手足は氷みたいに冷たい
- 冷たいのも風にあたるのも嫌がっている
- 普段は汗をかきにくい
- 喉は渇かない
- 熱いものを飲みたがる
- 食欲はまだ良い
- 大小便は正常
毎朝白い泡の痰を吐いて、口の中は辛味を感じる
患者さんは「不思議な症状がある」と私に話しました。
「きたきた!」私はすぐ耳を立てました。ニハイシャ師匠がよく言うのは、患者さんの不思議な症状は、だいたい大事なキーワード!
彼女が言うのは、咳が2年くらい続いている。毎朝必ずたくさんの白い泡の痰を吐き出す。最初の痰が少し黄色い以外に、他の痰は全部白い。たまに血が混ざる。口の中は涼しい麻痺しているような感じ、辛味も感じる。
私は心の中で思いました。辛味は肺金の味。
問診で小青竜湯だと判断
私「睡眠はどうですか?朝までぐっすり寝れますか?」
彼女「ダメです。毎週2~3回、朝4時~5時の間に起きて寝れません。」
私「胸が苦しいですか?」
彼女「胸が苦しくて息が吸いづらいです。しかも、肩甲骨の間に手のひらサイズの寒い場所がある。まるで冷房が当たったように寒い。」
私は心の中で思いました。
あとひとつの質問で確実な診断ができます。小青竜湯か十棗湯か?
私「仰向けで寝られますか?」
彼女「寝られます。」
これは小青竜湯の症状に間違いない。私はすぐ処方しました。小青竜湯の乾姜を増加し、加工した附子(トリカブト)を追加。
脈診では左右の寸脈が細弦(みぞおちに水気が溜まっている腹証)。お腹全体的に圧痛がないけど、お腹に力がない。切診も私の判断に合っている。
不正出血の量、白い泡の痰は少し減った
20008年3月4日。
再診察1回目。
患者さんが言うのは、「不正出血が減った。たまに1~2日は血が出ない時もある。」
患者さんは絶賛してました。
「あなたは唯一、私の問題は婦人科ではなくて、肺に問題があると教えた先生です。肺に問題があるから、下をコントロールできなくて、生理の血が止まらない。さすがにニハイシャ先生の弟子!」
私は心の中で思いました。
またニハイシャ師匠のファンですね。
射干麻黄湯をベースにして処方せんをアレンジ
今は風にあたるのが嫌、咳と白い痰は減った。肩甲骨間の寒い範囲も、拳サイズに減っている。手足はまだ冷たい。表の寒気はなくなったけど、体内の冷えはまだ強い。
今日の処方は射干麻黄湯に乾姜、生のトリカブト10gを追加。
2008年3月14日。
著しい変化はない。
背中の肩甲骨の間の寒い範囲は拳サイズ。
喉は渇かなくて、手足は冷たい。
食欲は少し減った。
体内の冷えはまだ強い。
睡眠の質は改善した。
処方:射干麻黄湯に乾姜、白朮、茯苓を追加し、生のトリカブトを15グラムに増量。
手足の冷えは治ったけど、肝胆の問題が出た
2008年3月19日。
再診察3回目。
病状が変化しました。
- 生理の血は完全に止まってない
- 改善された睡眠は、夜中の2時に起きて、3時過ぎて悪寒してから白い痰が出て、その後やっと寝れる
- 手足の冷えは、もうなくなった
- まだ暖かいものを飲みたがる
- 朝起きた時は口の中が乾くし苦い
- 目も乾く
- たまに目の前が真っ黒になる
- 右脇腹が腫れて痛む
私は心の中で思いました。
恥ずかしい!師匠に聞いてから自分の間違いを分かりました。肺を治す時は先に肝臓を治す。私は処方の中に肝臓を治す生薬を入れないとダメ!
背中の感覚を聞いたら、冷たい部分は実は左の背中に偏っている。左の胸は引きつらて不調を感じ、不調の部分は背中と同じサイズ。まるで投影みたに前後対照。
不思議な症状がいろいろ起きて、治療が低迷
そして、もう一つ不思議な症状がありました。
夜2時に目覚めて、悪寒は左だけに起きて汗が出る。
私は心の中で思いました。
夜中に汗をかくのは陽が陰に入れない症状、なんで治療すればするほど悪化しただろう?
彼女が言うのは、右の背中は悪寒もないし、汗が出るのもない。同時に白い痰を吐いて、3時以後にやっと寝れる。西洋医学の検査で右肺は呼吸が正常。左肺は呼吸が浅くて、ちょっと速い。
患者さんは私の意見を採用して、すべての侵入性の検査はしてない。再び処方したのは、3月14日の処方箋に柴胡、オウゴン、ウコン、四物湯などを追加。
飲んでから患者さんが言うのは、「夜中の2時には目覚めない。でも、4時~5時の間に目が覚めるようになった。」そして患者さんは自ら漢方薬を止めた。止めてから気づいたのは、朝までぐっすり寝れる。
今の症状は
- 白い泡状の痰が出る
- 不正出血はまだあり
- 左の肩甲骨あたりに、拳みたいな範囲の冷たさは変わらない
- 右脇腹の腫れと冷えは変化なし
肺を攻撃すると肺の時間帯に起きる。肝臓を攻撃すると肝臓の時間帯に起きる。どちらもダメなので、守ることにした。師匠から教わったのは、攻撃してダメだったら守る。不敗の状況を維持して、あとでチャンスを見つけてまた動く。
2008年4月。
4回目の診察。
処方箋は以下の通り。
帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう) に白朮、茯苓、乾姜、トリカブトを追加
飲んでから患者さんが言うのは、朝方1時~5時に1時間毎に目覚めて白い痰が出る。とてもつらいので、また自ら漢方薬を止めた。漢方薬を止めたら朝まで寝られる。
十棗湯を処方するかどうかで葛藤
もし患者さんが座って寝るしかない場合、私は十棗湯を使います。ニハイシャ師匠は何回も言ってましたが、これが十棗湯を使うチャンス。私も師匠が使うのを何度か見て素晴らしい効果が分かる。しかし,彼女は仰向けで寝られるのです。
どうしたら良いのか?
私はずっと悩みました。
もう一度『傷寒論』を開いて見て、いろいろ考えました。『傷寒論』の条文には、座って寝るしかない以外にも十棗湯を使う時がある。もし、医書に書いたタイミングより早めに肺の水を出したらどうだろう?私は試す事を決めました。
私は心の中から知っています。
肺の水を出さないと、将来彼女は確実に肺がんになる。
十棗湯を飲んで嘔吐・下痢したあと、朝までグッスリ寝られうようになった
2008年5月3日。
5回目の診察。
処方箋:十棗湯1回分。
薬は漢唐診療所の粉薬、なつめを茹でた汁で飲む。この薬を飲んでから、2008年4月の処方箋を飲む。【帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう) に白朮、茯苓、乾姜、トリカブト】
患者さんが言うのは、朝7時15分に飲んでから気持ち悪くなり、お腹が激痛。人がだるくて、起き上がれない。
ご主人から電話が入りました。
「救急車呼んだほうが良いですか?」
私は慰めました。
「とりあえず様子見ましょう。一人ひとり体質が違うので、すぐ下痢するとは限らないです。」
朝10時頃、患者さんは排便が始まったけど、下痢ではない。嘔吐で吐いたのは、薄いグレー色の液体と黒い粉末。その後はたくさんの痰を吐いた。
午後5時、初めて10何回の下痢になりました。嘔吐ではもう出るものがなく、乾いた嘔吐がするだけ。手足が氷みたいに冷たくなり、汗が出る。
何人の患者さんから話を聞いたけど、十棗湯を飲んでから汗が出る.嘔吐.下痢、この3つの症状があります。
午後7時、すべて正常になり、事前に準備したお粥が食べられるようになりました。
1時間後には手足が温かくなり、その夜は朝までぐっすり寝られるようになりました。その後は漢方薬を飲んでも、咳で起きる事はなかった。
2日間下痢したあと、不正出血は治った
2008年5月17日。
見た目でも分かるけど、患者さんの顔色が良い。顔にある薄い黒色は消えて、珍しく笑顔が見えました。
患者さんが言うのは、十棗湯で2日間下痢した後、急に生理が始まって、その後はチョロチョロの不正出血が完全に消えた。
水の病気だとも言えるでしょう。
経言:水分,此病易治,何以故,去水,其経自下。
背中の冷える範囲が著しく減り、わき腹の痛み、口の中が辛いのも治った
背中の冷たい範囲は親指みたいなサイズに縮まり、場所も肩に近い所に移動。右脇腹は強く押さない限り痛くない。
甘遂半夏湯を使わなくて済みました。ニハイシャ師匠が言うのは、十棗湯のわき腹まで痛いのは、水が肺の下にあるから。甘遂半夏湯のわき腹が痛いのは、水が肺の外側の隔膜にあるから。
たまには咳がする。痰は少ない。
たまには朝方4,5時に起きるけど、すぐまた寝れる。
面白いのは口の中が辛いのも治った。
この患者さんのために、私も何日か不眠症になりました。やっとホッとして寝れるようになりました。
今日の処方箋:
射干麻黄湯、八珍湯、乾姜、加工したトリカブト。
2008年5月31日。
患者さんが言うのは、もう完治。
治療経験:附子(トリカブト)と甘遂の違い
一人の師匠から教わったのは、患者さんは私たちの一番良い先生。本当にそうだと思いました。
この治療例で私が分かったのは、トリカブトと甘遂の違い。

冷えがある時、生附子じゃないと駄目です。 しかし、水が貯まりすぎた場合は、甘遂じゃないと駄目。水の処理が終わった後、加工した附子で陽気を固定しないと、水がまた戻る。
なぜ生附子で患者さんが寝られないのも分かりました。 生附子は水を蒸発させて水蒸気になるけど、もともと水が多いのに水蒸気が溢れて、患者さんは逆になれないのです。水が貯まりすぎた場合は、生の附子だけでは処理できない!
この治療例を書いたのは、自分の功績をアピールするためではないです。日ごろ、いろいろ教えて頂いた師匠に感謝を表すためです。師匠のお陰で弟子の私はもう少し進歩しました。
ほかの弟子たちにも参考になれば幸いです。私みたいに同じ過ちを踏まないように。
倪海厦(ニハイシャ)先生の評価
張孟超はカリフォルニアの開業医です。皆さん、彼の治療例を見て彼がどれだけ強いか分かったでしょう。
思考がはっきりしている。
経方の最強の処方箋が出せる。
きっと将来に輝く漢方医です。
彼は私が自慢している弟子の一人。
上で話した患者さん、すでに肺がんの初期。西洋医学は肺がんの初期なんか診断できません。検査で分かった時は、すでに肺がんの末期。
超孟超の処方箋の技は、思考が非常に正確で、タイミングを掴んだのも良い。だから、患者さんの長年の苦痛を解決してあげられた同時に、肺がんの予防もしている。本当に素晴らしい。
私は生徒さんの治療例をここに公表する理由は一つだけです。本当の中医学はどこまで治療できるのか?
私の生徒さんたちの治療成果は、すでに私の予測を超えています。こんな素晴らしい弟子たちが、海外で人助けをしていて本当に嬉しいです。
我々中医学はCMをやる必要がありません。実力を見せれば、西洋医学は相手にもなれない。
(おわり)
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
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