導入
こんにちは、李哲です。
てんかんは西洋医学では「不治の病」とされ、抗てんかん薬による発作抑制が主な治療法です。しかし、薬の副作用に悩む患者さんも多く、根本的な治療が求められています。
一方、5千年以上の歴史を持つ中医学では、てんかんの原因を「痰」と捉え、鍼灸で完治を目指します。この記事では、てんかんの原因、症状、そして鍼灸による治療例を詳細に解説し、大人でもてんかんを治す方法をお伝えします。
「鍼灸で本当にてんかんが治るの?」「実際の症例はあるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、中医学の理論を基に、なぜ鍼灸でてんかんを治せるのか、その原因と具体的な治療例を紹介します。
てんかんの原因:中医学の視点
中医学では、てんかんの主な原因を一言で「痰」と定義します。痰とは、体内の余分な水分(湿気)が長期間蓄積し、熱によって粘稠な状態に変化したものです。この痰が内臓や経絡(けいらく)に溜まり、神経や脳に影響を与えることで、てんかん発作が引き起こされます。
注:事故による脳損傷が原因のてんかんは稀なケースであり、本記事では一般的なてんかんの原因に焦点を当てます。

痰の生成プロセスは以下の通りです:
- 体内の水分代謝が乱れると、余分な湿気が蓄積。
- 湿気が体内で熱を帯び、粘稠な「痰」に変化。
- 痰が内臓や経絡に溜まり、特に神経周りに付着すると発作を誘発。
西洋医学では、てんかんの原因を「異常な脳波」としています。そのため、抗てんかん薬や、極端な場合には脳の一部を切除する手術が行われることもあります。しかし、こうした治療は根本的な解決にはならず、副作用やリスクが伴います。
実際、脳の半分を切除しても完治しないケースも報告されています。あなたが患者なら、こんな手術を受けたいと思いますか?
近年、てんかんの原因として新たに注目されているのが、西洋薬の副作用です。例えば、成長ホルモン製剤やワクチンが原因でてんかん発作が起きたケースが報告されています。以下は、ニハイシャ先生の治療例です。


てんかんの症状:癲と癇の違い
中医学では、てんかん(癲癇)は「癲(てん)」と「癇(かん)」の2つの症状を組み合わせた病名です。それぞれの症状は異なり、以下のように分類されます。
癲(てん)の症状
癲は精神的な異常を指します。主な症状は以下の通りです:
- 精神錯乱:走り回る、突然笑ったり歌ったりする、論理的な会話ができない。
- 異常行動:汚物を食べる、意味不明な行動を取る。
- 無気力状態:表情が乏しく、ぼんやりとした状態で静かにしている。
関連記事:うつ病と精神分裂の治療例
癇(かん)の症状
癇は身体的な発作を伴う症状です。代表的な特徴は以下の通りです:
- 突然の倒れ:意識を失い、目が吊り上がる。
- 身体的症状:手足のけいれん、口から泡を吹く、羊や豚のような奇声を出す。
- 発作後の症状:頭痛、強い倦怠感、めまい。
多くの場合、癲と癇の症状が同時に現れるため、総称して「てんかん」と呼ばれます。これらの症状は、痰が経絡や神経に影響を与えることで引き起こされると中医学では考えられています。
鍼灸によるてんかん治療の歴史
中医学の5千年以上の歴史の中で、てんかんの治療法は確立されてきました。古代の文献には、鍼灸による治療例やツボの記録が豊富に残されています。
例えば、明代の名著『鍼灸大成』(楊継州 著)には、以下の治療例が記載されています。
張さんの妻、てんかん歴20年。10数人の漢方医に診てもらうも改善せず。脈診で経絡に病気が入っていると判断。目の周りが黒く、発作時には手足のけいれんと奇声。治療として、中脘と鳩尾で胃腸を強化し、肩髃、曲池で経絡の流れを改善、痰を除去。翌日、患者は穏やかになり、脾臓を強化する漢方薬を併用して発作が減少。

また、1406年に編纂された『普済方』には、てんかん治療に有効なツボが多数記録されており、中医学の長い歴史の中で、てんかん治療が不可能だったことはありません。
現代の鍼灸治療例
現代でも、鍼灸によるてんかん治療は効果を上げています。以下は、中国の名医・賀普仁先生(1926~2015)の治療例です。賀先生は中国政府から名医に選定された鍼灸の大家で、その治療法は後世に受け継がれています。
治療例1:2ヶ月で発作停止(24歳男性)
患者:張さん、24歳、男性。 突発的な失神、全身のけいれん、口から泡を吹く(月1~2回、1~2分間)。発作後は頭痛と強い倦怠感。
診断:幼少期の母親の死による情緒の問題で痰が蓄積、気の流れが乱れたことが原因。脈診では細く滑、顔色は黄色、舌苔は白。
治療:
– ツボ:大椎、腰奇(4寸鍼で3.5寸斜刺)。
– 頻度:2日に1回。
– 目的:痰を取り除き、経絡の流れを整える。
結果:2ヶ月後に発作が完全に停止。2年後も再発なし。現在は運転手の仕事に従事。
治療例2:半年で安定(9歳男児)
患者:朱さん、9歳、男児。 月1~7回のてんかん発作。突然倒れて意識不明、目が斜め、口から泡を吹く(発作は30分で収まる)。発作後は疲労感と無気力。
診断:胃腸に痰が溜まり、肝臓・胆嚢の気が乱れている。顔色は薄い黄色、舌苔は白と黄色、舌は薄赤、脈は滑数。
治療:
– ツボ:四神聡、中脘、頬車、地倉、合谷、大衝(子供のため置鍼なし)。
– 頻度:週1~2回。 – 経過:10回目の治療後、2ヶ月発作なし。ただし、記憶力低下と物忘れが残る。 – ツボ変更:百会、上星、中脘、合谷、大衝(16回目)。
– 最終治療:大椎、腰奇(陽気を補う)。
– 頻度:半年で9回。
結果:半年で発作が安定し、治療終了。軽い発作が2回あったが、10分で収まり、その後は安定。
関連記事:クライン・レビン症候群の治療例
てんかん治療の2つの原則
上記の治療例から、鍼灸によるてんかん治療には以下の2つの原則があることがわかります。
1. 痰を取り除く
てんかんの根本原因である「痰」を取り除くことは、鍼灸治療の核心です。痰は主に胃腸から生成されるため、中脘や合谷などのツボを刺激して胃腸機能を強化し、痰の蓄積を解消します。このアプローチにより、発作の頻度が減少します。
関連記事:歯磨き時の吐き気と痰飲の関連性
2. 脳への流れを良くする
督脈(脳に繋がる経絡)のツボを刺激することで、脳の機能を正常化します。特に、百会、上星、大椎は、神智(精神状態)に関わる病気に対して効果的です。これにより、失神やけいれんを防ぎ、精神を安定させます。
関連記事:ストレス解消の鍼治療
なぜ鍼灸でてんかんが治るのか?
西洋医学では、てんかんの原因が「脳波の異常」とされ、薬物療法や手術が中心です。しかし、原因が不明なため、完治は難しく、薬の副作用に悩む患者も多いのが現状です。一方、中医学では以下のようにアプローチします。
- 原因の特定:痰が経絡や神経を圧迫し、発作を引き起こすと考える。
- 根本治療:痰を取り除き、気の流れを整えることで発作を予防。
- 診断と進捗確認:脈診、望診、舌診で体の状態をチェックし、治療効果を確認。
患者自身も、発作の頻度減少や体調の改善を実感できます。中医学の診断法は独自で、詳細な説明は長くなるため割愛しますが、信頼できる鍼灸師に相談することで、適切な診断が可能です。
コメント