こんにちは、李哲です。
スタンフォード大学博士で中医師の李宗恩先生1の症例「被囚禁在身軀裡的靈魂 – 當張仲景遇上史丹佛」(2019.6.28発表)を翻訳しました。この症例は、先天性脳障害や発達障害に苦しむ子供が、漢方薬による治療でてんかんが治り、笑顔が増え、周囲とのコミュニケーション能力が向上した感動的な事例です。
先天性脳障害・発達障害:現代医学では「治療不可能」と言われた病気
先天性脳障害や発達障害は、現代医学において治療が極めて難しいとされています。しかし、李宗恩博士の3年間の治療により、完全な治癒には至らなかったものの、子供の状態は大きく改善しました。
具体的には以下の進歩が見られました:
- てんかんの発作が消失
- 笑顔が増え、感情表現が豊かに
- 周囲の物や人への関心が向上
- コミュニケーション能力の向上
完全な回復とは言えませんが、「ゼロから一へ」の進歩は、家族にとって大きな希望となりました。この情報が、同じ悩みを抱えるご家族に少しでも光をもたらせれば幸いです。
治療の背景:悲劇の中に見つけた希望
この症例は、悲劇的な状況から始まります。私の願いは、悲劇の中に少しでも喜びを届けること。しかし、運命そのものを変えることはできません。
3年前、治療法がないと言われていた状況下で、医師としての使命感と深い同情から、私は台湾の患者の治療を引き受けました。2016年の「漢唐経方論壇」でこの症例を初めて紹介し、3年後のフォーラムでは最新の経過を報告しました。重症患者の長期的な追跡は、治療の効果を評価する上で欠かせません。
中医学の視点では、こうした重症疾患は単なる「脳の問題」ではなく、体全体のバランスの崩れとして捉えます。この子供の場合、胎児期からの異常が体のエネルギー(気・血・津液)の流れを阻害し、てんかんや発育不全を引き起こしていました。西洋医学が薬物で症状を抑えるのに対し、中医学は根本的な体質改善を目指します。
子供の状態:胎児期から始まった過酷な運命
患者は、生まれながらに過酷な運命を背負った子供でした。胎児期の検査で以下の異常が判明:
- 神経管障害の指数が異常に高い
- 頭部が小さく、奇形が確認
- 心臓異常による脳発達障害
生後すぐ大動脈縮窄症の手術を受け、10ヶ月目からてんかん発作が始まりました。手足、聴覚、視力など、さまざまな面で発育不全が進行しました。
台湾大学病院は、抗てんかん薬(トピラマート、クロバザム、サブリル、イーケプラなど)を大量に処方し、「一生飲み続ける必要がある」と伝えました。しかし、これらの薬は脳の発育を抑制し、不安障害や原因不明の激しい泣き声、奇声を引き起こすなど、症状を悪化させる結果に。
抗てんかん薬の副作用は深刻で、特に幼児の脳は成長段階にあるため、長期使用は認知機能や情緒に悪影響を及ぼします。この子供の場合、薬の影響で感情のコントロールがさらに難しくなり、家族は絶望感に苛まれていました。
悲劇の現実:魂が閉じ込められた子供
初めて子供に会ったとき、4歳の彼の姿は衝撃的でした:
- 手足が曲がり、コントロール不能
- 支えがないと倒れる
- 両目は空虚で光がない
- 言葉が話せず、行動力ゼロ
- 他人とのコミュニケーションが不可能
知力は生後数ヶ月の赤ちゃん同等。まるで魂が「窓もドアもない牢獄」に閉じ込められているようでした。診断ではアンジェルマン症候群に似ているものの、DNA検査でも明確な結論は得られませんでした。
家族にとって、子供の状態は「悲劇」の一言に尽きます。親は「我が子が何を考えているのか、そもそも考えているのかさえ分からない」と涙ながらに語りました。この絶望感は、現代医学の限界を浮き彫りにします。
治療の3つの目標
初診時、子供の両親に以下の目標を提示しました:
- てんかん発作の軽減
- 不安障害の改善
- 外の世界とのつながり・コミュニケーション能力の向上
1と2は中医学で対応可能でしたが、3は未知数でした。治療の進展を見ながら評価を進める方針に。家族には「小さな一歩でも、それが希望になる」と伝えました。
漢方薬による初期の成果:てんかん減少と笑顔の増加
治療開始後、抗てんかん薬を全て中止し、子供の虚弱な体質に合わせた微量の漢方粉薬で内臓機能を整えました。脾胃(消化吸収機能)を強化し、体内の湿気や冷えを取り除く処方を選びました。例えば、白朮や茯苓を含む処方で脾胃を整え、桂枝で体を温めました。数ヶ月で以下の成果が:
- てんかん発作が大幅に減少
- よだれが減少し、飲み込む意欲が向上
- 精神状態が安定し、笑顔が増えた
- 姿勢が安定し、支えがあれば座れるように
両親は「大きな進歩」と喜びましたが、私は「長期疾患は初期の効果に油断せず、継続が重要」と伝えました。漢方薬は即効性よりも、時間をかけて体質を整える点が重要です。
試練の連続:風邪とてんかんの再発
冬の到来で子供は頻繁に風邪を引き、脾虚症(消化機能の低下)が悪化。風邪が治りにくくなると、てんかんが再発し、呼吸器トラブルや体内の冷え・湿気が増加しました。
私たちは緊急治療で風邪を抑え、てんかん治療を継続。何度も繰り返す試練の中、以下の進歩が:
- 体質改善により、強い漢方薬が使えるように
- 子供の成長で薬の効果が安定
この過程で、家族の協力が不可欠でした。両親は漢方薬の調合や投与スケジュールを厳守し、定期的に詳細な報告を送ってくれました。この信頼関係が、治療の成功を支えました。
最大の成果:てんかん完治とコミュニケーションの進歩
直近半年の報告では、てんかん発作は完全に消失。大きな音に一瞬反応することがあるものの、発作とは判断されていません。情緒不安定も減り、以前のような激しい泣き声はなくなりました。
最も感動的な進歩は、外の世界とのつながり:
- 名前を呼ぶと反応し、笑顔で応える
- 嫌いな物や行動に明確な拒否反応を示す
- 認知能力が向上し、親子での楽しい時間が誕生
母親は「やっと親子の絆を感じられた」と涙ながらに語りました。子供が自分の意思を少しでも表現できるようになったことで、家族の日常に笑顔が増えました。
家族への影響:希望と現実の間で
この治療は、子供だけでなく家族全体に変化をもたらしました。治療前、両親は「子供がこのまま何も感じず生きるのでは」と絶望していました。しかし、漢方薬による改善で、子供が笑い、反応する姿を見るたび、「我が子と心が通じ合っている」と実感できたのです。
特に母親は、子供が初めて自分の呼びかけに笑顔で応えた瞬間を「人生で最も幸せな瞬間」と振り返ります。父親も「以前は介護の重圧で疲弊していたが、今は子供の小さな進歩が生きる力になる」と語ります。この症例は、先天性脳障害の子供を持つ家族にとって、希望の光を示しています。

長期的な視点では、家族は子供の将来を前向きに考えるようになりました。完全な自立は難しいものの、「子供が幸せを感じられる瞬間が増えた」ことが、家族の絆を深めました。母親は「これからも小さな進歩を積み重ねたい」と希望を語ります。
限界と希望:小さな窓を開ける
中医学は大きな成果を上げましたが、子供は依然として自立が難しい状態です。家族には今後も介護の負担が続きます。悲劇の本質を変えることはできませんが、小さな窓を作り、閉じ込められた魂に光を届けることができたと信じています。
漢方薬の強みは、体全体のバランスを整える点にあります。この子供の場合、脾胃の強化と湿気・冷えの除去が、てんかんや情緒不安定の改善につながりました。例えば、黄耆で気を補い、陳皮で消化を助ける処方が効果的でした。しかし、脳の構造的異常は完全には修復できません。それでも、家族が「子供の笑顔を見られるだけで十分」と語る姿に、治療の意義を感じます。
中医学の治療プロセスは、単に薬を飲むだけでなく、家族全体の生活習慣を見直す機会でもあります。食事の改善、十分な休息、ストレスの軽減が、漢方薬の効果を最大化しました。この症例を通じて、家族は「健康とは何か」を深く考えるきっかけを得ました。
まとめ
この症例は、先天性脳障害や発達障害に希望を与える一例です。漢方薬と中医学の力で、てんかんが治り、子供の笑顔とコミュニケーション能力が向上しました。完全な解決は難しいかもしれませんが、家族にとっての「小さな奇跡」は、未来への一歩です。
同じ悩みを抱えるご家族へ。中医学は、現代医学では不可能と言われた症状にも光を当てられる可能性があります。諦めず、信頼できる中医学先生に相談してみてください。
李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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