こんにちは、李哲です。
中国河北省石家荘市の女医、中医師、張静先生の症例を翻訳しました。
内容を簡単に伝えると、制御不能の発狂・親を殴る子供を漢方薬と鍼で治した例です。なぜ親も殴るまで精神が狂ったのか、翻訳文詳細を見ればわかると思います。
ちなみに、翻訳文で出ている患者さんは、前回の記事でも登場しました。以下の記事、どうぞ参考に。
息子に殴られて、顔に傷だらけのお父さん
2022-01-27。
Wという患者さん、もともと鍼灸治療予約をしたけど、お昼休みに入っても姿を現していません。もし何かあったら、彼は必ず連絡が来るはず。だから、私は待っていました。
13時過ぎて、彼は一人の友人を連れてきました。友人はおでこ・顔に血の跡が残っていて、拭いてもわかるレベル。私は心の中で思いました。「遅れたのは、もしかして喧嘩に行ってきたのか?」
Wさんは私に説明しました。
「今日遅れたのは友人の家に行ったからです。ほら、見てくださいよ、息子に殴られて!」
友人が説明しようとしたら、Wさんはボスみたいに手を振ってました。
「私が張先生に説明する!」
3ヶ月引きこもりで30kg痩せ、布団から出ない息子
友人の17歳の息子は、すでに3ヶ月家から一歩も出ていません。3ヶ月で30kg痩せて、もともと100kgあったのに今は70kgくらい。
お父さんは息子に外出をすすめたけど、息子が布団の中から出ないから、お父さんは布団を引っ張りました。そして息子が激怒、麺棒でお父さんの頭を殴ったのです。
隣のお父さんは話しました。
「息子がストレス溜まったと思って、我慢して返さなかったです。少し殴ったあとは気が済むだろうと。しかし、息子はエスカレーターし、つるばしを持ってきて殴ろうとしました。私はすぐ家から脱出し、友人たちを集めて対策を考えたのです」
Wさんは友人の家に行きました。同時にほかの友人たちも集まり、息子とお話した結果、みんなの意見は:「息子は病気で治療が必要。張先生を呼んで!」
私は詳細を聞いて、心の中からビクビクしました。
Wさんは私を慰めてくれました。
「私たちがいるから大丈夫ですよ」
診察でお腹の硬いしこりを発見
最後、私は診療所のもう1人の先生と一緒に行きました。リビングについたら、お母さんともう1人40代の男性がいました。Wさんと友人が言うのは、「息子は布団の中にいます」
リビングの窓口近くにシンプルベッドがあったけど、中に人が入っているかどうかも分からない程度でした。
「張先生が来たよ。起きてみて」
しばらく経ってから、布団の中から息子が出てきました。
顔面蒼白で唇が赤、乾燥。何度も唇を噛んで、目線が定まらずあちこち飛んでいました。私たちの会話は非常に気をつけていました。ゆっくり子供を誘導して、私が座っているソファーの前まで連れて来ました。
脈診をするとき、子供の手はコントロールできないみたいに震え、歯もガタガタ鳴り出し、唇も震えはじめました。高揚した気持ちがまだ収まらない感じ。
私は息子と世間話をしました。
息子をリラックスさせるためです。しばらく話してから、息子の手を握ったときに話しました。
「手がすごい冷たいし、震えているけど、私が怖いですか?」
息子は頷き。
私「怖がらないでください。私たちの診療所はここからすごい近いです。住所を言えば、あなたはすぐ分かるはず」
問診が終わって腹診をしたら、中脘穴あたりに拳サイズの硬いしこりが顕著でした。
騙し騙しで子供を診療所まで連れてきた
私「漢方薬を飲んでください」
Wさん「同時に鍼灸をやれば治りがもっと早いですよね?鍼治療もしましょう!」
子供は緊張していたのに、鍼をする話を聞いたらさらに戦闘状態になりました。Wさんはすぐ察して慰めました。
「私もまだ鍼をしてないよ。じゃ、私がサンプルになって見せるから、診療所に行って鍼してみよう。一緒に行こう!」
Wさんの意図は私も分かりました。とにかく、子供を部屋から外へ連れ出したい。Wさんは本当に口がうまくて、騙し騙しで子供を布団の中から診療所まで連れて来ました。
西洋医学は異常なしと診断、ほかの漢方医の治療でも無効
その間、私は子供が飲んでいる漢方薬を見ました。以前はどんな治療を受けたのか、チェックするためです。
最初、子供は異常が出たとき、西洋医学の病院に行ったら異常無しと言われました。その後、子供は徐々に情緒不安定と凶暴化になって、人を見る目つきまで変わりました。
おじいちゃん、おばあちゃんは怖くて家から出て、最後は親たちも家に住めなくなりました。子供はひとり暮らし。幸いにも子供は専門シェフなので、餓死になることはなかったです。
2ヶ月前、ある漢方医から処方してもらい、毎日煎じ薬を飲んでいますが一向にも良くなりません。目つきがドンドンきつくなって、情緒不安定もひどくなりました。今日の流血事件が最近の一番ひどい事件だったのです。
黒い便が出てからお腹のしこりも消え、そろそろ治るところまで進歩
私は子供に話しました。
「以前の漢方薬は飲まなくて良いです。新しい処方を出すので」
処方箋は〇〇〇〇
鍼灸は刺絡療法で中脘、太衝、豊隆で瀉血。
漢方薬に関しては特別に説明しました。
「数日飲んだあと、少し下痢になって黒い便が出るのは良いことです。もし下痢にならなかったら、病気は治りません」
1週間飲んでも下痢になってない。下痢のところか、便秘にまでなりました。もう一度処方してから、少しずつ下痢になってきました。
11日間飲んでから、腹部の硬いしこりは消えたので、そろそろ治るところ。その間は毎日刺絡療法をやりました。
心臓がドクンドクンして眠れられないのは治った
私「ほかに何かつらい症状がありますか?」
子供「毎晩ドクンドクンと心臓の鼓動が聞こえて眠れません」
私「水を飲む時は一口一口飲んでください。一気飲みしているから、このような症状が出ます。あなたの横隔膜あたりには、すでに水が貯まり始めています。2つの方法で解決できます。一つ目は漢方薬。2つ目は運動して汗をかくこと。自分で選んで下さい」
子供「歩いて帰って今日から運動します!」
私「ヨッシー!あなたができると信じてます」
14日後、私はもう一度聞きました。
「睡眠はどうですか?」
子供「もう大丈夫です。横になれば、すぐ眠れます」
処方箋は柴胡疎肝湯。7日分を処方。
これで最後の片付けをしました。
飲みきってから、子供は正常に戻りました。
病気の原因は陽明実証
治療が終わったあとに知ったけど、子供のお父さんは私が女性か男性かを聞いたそうです。おそらく、殴り合いになった時、逃げられるかどうかを考えたでしょう。
本当に!
お父さんのような考え方だったら、中医師の私たちは格闘技も練習しないといけないですね。でも、子供の話に戻りますが、陽明実証は発作したときは、本当に誰でも抑えられません。
子供の病気の原因は以下の通りです。
飲食の不適切で食積(食靠れ)になり、時間が経つことで腐った食べ物から毒素が出て血液に流れ、最後は陽明実証になったのです。
私は食靠れを取り除いて、血液代謝を改善することで治しました。
李哲の解釈と感想
処方薬の解釈
四物湯+四君子湯の組み合わせは、胃腸が弱くて食欲不振・貧血などの症状には効果的だけど、上記の子供のような発狂する人には効きません。また、四物湯と四君子湯を処方するのも温病派の特徴だと言えます。
温病派の先生は小さな病気は治せるかも知れませんが、急性の病気・重病には効かない。経方派の先生じゃないと無理です。温病派と経方派の違いは過去に説明した記事があるので、参考にしてください。
張静先生が〇〇〇〇だと書いているところは公開していないので、詳細が分かりません。あくまでも推測ですが、おそらく大承気湯・大柴胡湯などの下剤だと思います。
胃のあたりに拳サイズの硬いしこりがあるので、食べ物の詰まりに違いはありません。治せるのは漢方薬の下剤しかないです。
大承気湯はニハイシャ先生の症例に出ています。以下の記事、よかったらご覧んください。
食靠れは鍼でも治せる
食靠れは簡単に言うと食べすぎが原因。
食べる量が多くなくても、その人が消化できる限度を超えると食べすぎだと言います。
ちなみに、人間には満腹中枢があるので、食べすぎを事前に防げます。美味しすぎて食べすぎた場合は、お腹が苦しいのは当たり前。このとき、漢方薬もしくは鍼治療、両方とも治せます。以下は一つの鍼治療例、参考になると幸いです。
発狂などの精神疾患は、陽明実証がほとんど
重点的に論じたいのは、発狂などの精神疾患と陽明実証。陽明というのは中医学の言葉で、西洋医学の理論でいうと胃腸がメインの消化器です。陽明実証というのは、胃腸に何かが詰まった状態。
精神疾患なのに、なぜ胃腸?
2千年前の『黄帝内経』には面白い解釈がありました。
足陽明胃之病候、
是动则病,洒洒振寒,善伸,数欠,颜黑,病至则恶人与火,闻木声则惕然而惊,心欲动,独闭户塞牖而处,甚则欲上高而歌,弃衣而走,贲响腹胀,是为骭厥足陽明之別、名曰豊隆(…間は省略…)
其病、気逆則喉痹卒喑。実則狂癲:虚則足不収、脛枯。取之所別也。引用先:『黄帝内経・霊柩・経脈篇第十』
上記の青いマークした所がキモです。
●欲上高而歌,弃衣而走
直訳すると、高い位置に登って歌う、服を脱いて走り回る。
(以前、超有名人の草〇〇が公園で裸で走るのをやりましたね)
●実則狂癲
直訳すると、足陽明胃経の実証は発狂、精神錯乱。
胃腸に宿便もしくは食べ物・瘀血が長い間滞在したとき、食べ物・大便・瘀血から毒ガスが出ます。ガスは軽いので下から出るのではなくて、上の脳に入ってきて、脳の活動に影響し発狂・精神錯乱が起きます。
瘀血・宿便が原因での精神疾患は、以下の症例が参考になると思います。
張静先生は陽明実証が発作したときは、誰でも抑えられませんと書いてますが、本当にそのとおりです。弱々しい人でも、陽明実証が発作したときは無尽のパワーが出て、恐ろしい怪物になります。4~5人のマッチョマンでも抑えられなくて、逆に殴られるかも知れません。
こんなに恐ろしい病気、どうすれば良いのか?
上記の黄帝内経には、すでに回答しています。
治療としては、足陽明胃経の絡穴:豊隆を選べば良い。
漢方薬は以下の症例が参考になると思います。
西洋医学では鎮静剤でむりやり落ち着かせますが、体内に残っている宿便・瘀血・食べ物はどうしますか?外に出さないと、毒ガスが生じて発狂・精神錯乱が再発します。その時はまた鎮静剤?あなたは死ぬ日まで鎮静剤を飲みたいですか?鎮静剤の副作用、あなたは知っていますか?
精神科の薬、その副作用は数え切れないほど多いです。最もひどいのは自殺願望が増えて、無差別殺人に走ること。以下は自殺願望が増えた患者の症例、参考になると幸いです。
陽明実証であろうと、もしくはほかの原因であろうと、中医学は体内の状態を把握して関連の治療ができます。そして二度目の再発を防ぐ。
精神錯乱、発狂などの精神疾患で悩んでいる方は、ぜひ中医学治療を受けてみてください。
(おわり)
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