
こんにちは、李哲です。
アンジェルマン症候群は、重度のてんかんや発達障害を引き起こすまれな遺伝性疾患です。この記事は、著名な中医師・倪海夏(ニハイシャ)先生1の治療日記:癲癇(2008-8-11発表)を基に、16歳の少女が漢方薬で重度のてんかん、運動障害、意識障害から劇的に回復した症例を紹介します。
西洋薬の限界と副作用に苦しむ中、漢方薬がもたらした希望の物語を、治療経過や家族の葛藤とともに詳しくお伝えします。
アンジェルマン症候群とは?てんかんの原因と症状
アンジェルマン症候群の概要
アンジェルマン症候群は、15番染色体の特定領域(15q11-13)の遺伝子異常により発症する神経発達障害です。主な症状には、頻発するてんかん発作、発達遅延、言語能力の欠如、運動障害、特徴的な行動(頻繁な笑顔や興奮しやすい傾向)があります。
患者の多くは幼少期から重度のてんかんを経験し、日常生活に大きな制約が生じます。西洋医学では抗てんかん薬による対症療法が一般的ですが、副作用や効果の限界が問題です。この症候群は家族にも深刻な精神的・肉体的負担を強います。
てんかんの原因:中医学の視点
中医学では、てんかんの原因を「痰」の蓄積とみなします。脳や神経系に滞った「陳年の痰」が神経伝達を妨げ、発作を引き起こすとされます。この痰の蓄積は、出生時の羊水処理が不十分な場合に発生しやすいとされています。
産婦人科での新生児ケアにおいて、肺内の羊水を十分に排出しないと、将来的にてんかん、喘息、肺炎、皮膚炎などのリスクが高まります。
伝統的には、新生児を逆さにしてお尻を軽く叩き、泣かせることで羊水を排出する方法が効果的とされますが、現代の医療現場ではこのプロセスが省略されることもあり、健康問題の原因となる場合があります。

典型的な症状
- 重度のてんかん発作:頻繁で強烈なけいれんにより、顔や手足が変形し、よだれが止まらず、意識がもうろうとする状態が続きます。
- 運動障害:筋肉の萎縮や変形により、歩行が困難で車椅子が必要。手足の動きが不自然で、握力も低下。
- 知的・発達障害:言語発達がほぼなく、外部とのコミュニケーションが困難。知能の発達も遅れる。
- その他の特徴:睡眠障害、異常な笑顔や興奮行動、口が閉じられないことによるよだれ。
これらの症状は、患者本人だけでなく家族にとって「終わりのない悪夢」です。西洋薬では発作の抑制が不十分で、副作用がさらなる苦しみを加えることが多い中、漢方薬は根本的な改善の可能性を示します。

重度のてんかんと身体障害を抱える16歳の患者
2008年3月12日、16歳の少女が母親に伴われ、倪海夏先生の診察室を訪れました。彼女は幼少期からアンジェルマン症候群による重度のてんかん発作に苦しみ、倪先生がこれまで見た中で最も重症なケースでした。
発作はほぼ一日中続き、睡眠時のみ静かになる状態。強烈なけいれんにより顔は歪み、口は閉じられず、よだれが絶えず流れ、両目は吊り上がった状態で、意識はもうろう。手足は変形し、筋肉は萎縮して握力も失い、まるで狼のような声を発していました。
車椅子で移動し、その姿は脳性麻痺の患者を思わせるほどでした。
母親は16年間、娘を献身的に支え続けました。彼女の姿を見た倪先生は、心から悲しみを覚えつつ、強い使命感を抱きました。「この親子を救わなければ、彼女たちの一生は悲劇で終わる」と決意。母親の偉大な愛と忍耐に敬意を表しつつ、漢方治療で希望の光を灯すことを誓いました。

抗てんかん薬の副作用:歩行障害と効果の限界
少女は当時、クロナゼパム(Klonopin)という抗てんかん薬を服用していました。この薬はてんかん発作を抑える目的で処方されていましたが、効果はほとんどなく、発作は依然として頻発。逆に、副作用として歩行障害が悪化し、両足はカマキリのように曲がり、膝をついて足先で踏ん張るように歩く状態でした。
両手のけいれんにより握ることもできず、母親が支えながら左右に揺れるように移動する姿は、見る者に深い印象を残しました。
母親は、薬が娘の状態を改善せず、むしろ悪化させている現実に絶望。西洋薬の毒性と副作用が、娘の体をさらに蝕むのではないかと恐れていました。この状況は、漢方治療への期待を一層高めるきっかけとなりました。

漢方薬治療で大量の痰が排出、劇的改善へ
倪先生は少女の症状を詳しく診察し、「陳年の痰」が脳や神経に滞り、てんかん発作を引き起こしていると診断。痰を取り除く漢方薬を処方し、母親にこう伝えました。
「娘さんの病気は、血脈や神経に溜まった痰が原因です。この痰がなくなるまで回復は難しい。私は劇薬を処方しますが、服用後、大量の痰が口や便から排出されるでしょう。心配しないでください。ただし、硬い食べ物は喉に詰まるリスクがあるので避けてください。」
処方箋を受け取った少女は、漢方薬の服用を開始。すると、驚くべきことに、すぐに大量の痰が排出されました。母親は「想像もできない量でした。大きなバケツが必要で、娘の体内にこんなに痰があったなんて信じられません」と驚きを隠せませんでした。
痰の排出は、中医学でいう「邪気」を取り除く重要なプロセス。発作の頻度が減少し、少女の状態に変化が現れ始めました。
この劇的な変化は、漢方薬が根本原因に働きかけ、身体を浄化している証でした。母親は希望を見出し、治療への信頼を深めていきました。

西洋薬を中止し、漢方薬で意識と歩行が回復
1週間後、母親は決断を下しました。「西洋薬をすべて止めたい」と。クロナゼパムの副作用で歩行障害が悪化し、発作も抑えられていない現実を目の当たりにし、漢方薬への信頼が高まったためです。
倪先生は即座に答えました。「害しかない西洋薬はすぐ止めていい。娘さんの治療は私に任せてください!」この言葉に、母親は感情を抑えきれず、診察室で大粒の涙を流しました。10人以上の研修医が見守る中、彼女の決意と倪先生の自信が新たな希望を生み出しました。
2週間後の3回目の診察では、予期せぬ出来事が。少女の父親が現れ、西洋薬の再開を強く主張しました。離婚後、娘を母親に任せ、たまにしか会いに来ない父親は、西洋医学を盲信し、漢方治療に懐疑的でした。

倪先生は冷静に、しかし厳しく対応。「娘さんの状態を初診から見ていれば、私の治療の意味が分かったはず。今、彼女には西洋薬を続ける選択肢はありません。漢方薬を続けるかどうかはあなたが決めてください。」
この言葉に、母親は固く決意を表明。「漢方薬を続けます。西洋薬は止めます!」父親は黙り込み、母親の強い意志が治療の継続を決定づけました。
漢方薬を続けた結果、少女の症状は劇的に改善。意識がはっきりし、両足でまっすぐ歩けるようになり、よだれも止まりました。両手のけいれんも消失し、周囲の出来事に反応できるまでに回復。
診察室に入る姿は、初診時の車椅子での姿とは別人のようでした。母親は娘に何度もキスをし、喜びを抑えきれませんでした。
受付嬢が目撃したエピソードも感動的です。待合室で少女が雑誌を手に取り、母親に「これ面白いよ!」と話しかける姿は、普通の親子のような交流を示していました。この変化は、漢方薬が少女の知能と身体機能を回復させた証でした。

漢方薬の優位性と今後の展望
この症例は、漢方薬がアンジェルマン症候群の重度なてんかんや運動障害を劇的に改善し得ることを証明しました。西洋薬が副作用で患者を苦しめる一方、漢方薬は痰を取り除き、気血の流れを整えることで、根本的な改善をもたらしました。少女の知能は発病前の状態に近づき、外部とのコミュニケーションや学習の可能性が再び開けました。
倪先生は、少女の筋肉と骨を強化する漢方薬を追加処方。正常な運動能力を取り戻し、将来の自立に向けた支援を続けました。母親は娘の明るい未来を信じ、治療を続ける決意を新たにしました。
倪先生自身も、この親子の回復に深い感動を覚え、「彼女の一生が悲劇で終わらないよう、全力を尽くした」と振り返ります。
この治療例は、漢方薬の副作用の少なさと効果の高さを示し、西洋医学では解決できない難病への新たな希望を提示します。アンジェルマン症候群やてんかんに悩む患者と家族にとって、漢方治療は検討すべき選択肢です。

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