こんにちは、李哲です。
アメリカの中医師:鄭智城先生1の症例、、疑似尿毒症老妇皮肤瘙痒_郑智城_新浪博客(2013-10-19 発表)を翻訳しました。尿毒症みたいに全身が痒い女性が、わずか3日で痒みが著しく改善した例です。どんな漢方薬を使ったのか、翻訳文を見れば分かります。
全身かゆい女性、漢方薬3日で著しく改善された
数年前、ある痩せ型の中国女性が治療に来ました。彼女の主訴は、全身の皮膚が痒い。皮膚のツヤもなくなっていました。

私は当時、どう解決したら良いのか分かりませんでした。彼女が言うのは、数年前から不眠症で眠れないそうです。若い時、出産後にまったく眠れなくて、看護師が驚いて質問しました。「なぜ寝ないのですか?」彼女の答えは、「なぜ寝られないのか、私も知りません」
あとで火神派の鄭钦安の本を見てから、「陰虚証」であることが分かりました。「陰虚証」だから皮膚が乾燥して、陽気が陰の中に入れなくて眠れない。
鄭钦安の処方箋を真似して出しました。
- 黄耆
- 乾姜
- 当帰
- ハチミツ
- 五味子
患者さんが教えてくれたのは、すぐ効果が現れ、皮膚の痒みが著しく減りました。
この処方箋は、陰虚証と関連性がないように見えます。黄耆、当帰、乾姜、炙甘草、五味子など皆熱い生薬だから。しかし、鄭钦安の解釈は納得いくものでした。
●当帰+黄耆は「当帰活血湯」。比例は黄耆4:当帰1。
●乾姜と炙甘草は苦甘化陰。乾姜は苦い、甘草は甘い。
●五味子の作用は収斂(しゅうれん)。陰虚証で咳が出るときに最適な生薬です。
●ハチミツの肺を潤い、陰を補う作用は言うまでもない。しかし、たくさんの人は、ハチミツに消炎解毒作用があるのを忘れています。この処方箋で、ハチミツは肝の役割だと言っても良いでしょう。
李哲の解釈と説明
生薬の寒熱性質に関して、鄭智城先生は間違った認識があるので、訂正させていただきます。
黄耆:味甘、気微温
乾姜:味辛、気温
当帰:味甘、気温
五味子:味酸、気温
ハチミツ:味甘、気平
(みんな温める生薬ではありません)
生薬の作用を分析します。
●黄耆、五味子は気を補う。特に黄耆は皮膚病に効果バツグンで有名。新しい皮膚を再生してくれる作用があります。以下は黄耆が入った処方箋で皮膚病を治した例。参考になると幸いです。
●ハチミツは五臓六腑の陰液・血を補う。
●当帰は血を補う。
●乾姜は胃腸の働きを強化する。
全体的の傾向は、気を補う同時に陰液・血を補って、皮膚を潤う感じです。患者さんは痩せ型なので、胃腸の働きが弱いのが予測できます。だから、乾姜はうってつけの生薬。
乾姜を応用した処方箋で、体温を上げた例があります。以下の記事、参考にして下さい。
「陰虚証」は『傷寒雑病論』で言及してない言葉です。「陰虚証」は後世の漢方医たちが作り出したもの。もっとも多く引用しているのは、「温病派」の先生たち。どんな患者さんを見ても、陰液・血が足りないと判断し、補う生薬ばかり使います。結局、患者さんは治らず、将来的に悪化する種をまくのです。
鄭智城先生の症例は、漢方薬の構成と説明があるし、分かりやすいので今まで翻訳しました。しかし、問題点を見つけた時は訂正します。
上記の温病派に関しては、ほかの記事で詳しく説明しました。以下の記事、参考になると幸いです。
胃腸が弱い場合は、お腹の中脘、足の足三里など有効です。刺したあとは、食欲が湧いてきてご飯を食べる量が増えます。ご飯さえ食べてくれれば、自然に筋肉がついてきて、皮膚の調子も良くなる。
鍼灸もしくは漢方薬、どちらも食欲不振を治せます。以下はご飯が美味しくなり食べる量が増えた症例、参考にして下さい。
上記の女性患者、記述が少なくて判断しにくいですが、おそらく血が足りなくて皮膚を潤うのが少ないから皮膚の痒みが出たと思います。血が足りない原因は、不眠症、寝てないからです。
鍼灸治療の場合、漢方薬より即効性があるかも知れません。今までの経験だと、鍼を刺して間もなく痒みが止まります。1回で完治するとは言えませんが、少なくとも数日間はよく眠れます。一つの症例があるので、参考にしてください。
不眠症であろうと全身かゆい症状であろうと、血がたりないのか気がたりないのか、原因を突き止めれば自然に治ります。かゆいから痒み止め、眠れないから強制的に寝かせる睡眠導入剤…これでは病気が治りません。いずれか、薬の毒素がある程度まで溜まったとき、また新しい病気がたずねて来る!
不眠症、皮膚のかゆみは漢方薬もしくは鍼治療で、すぐ良い結果が見られます。しかも、内臓を治す根本的治療法で、副作用もありません。病院の薬に頼りたくない方は、ぜひ試して下さい。
鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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