ストレスでなんでも吐いてしまう「心因性嘔吐」を猪苓湯で治した例

ストレスで吐き続ける「心因性嘔吐」は、西洋医学では治療が難しいことがあります。
しかし中医学では、嘔吐の原因が胃ではなく“尿のトラブル”にあると考え、漢方で改善できるケースが多いのです。

この記事では、3ヶ月間吐き続けた患者さんが漢方で回復した症例を紹介します。

⭐ この記事で分かること

1.心因性嘔吐・ストレス嘔吐が起こる本当の原因
2.胃ではなく「尿が出にくいこと」が嘔吐を引き起こす理由
3.猪苓湯(ちょれいとう)が効く症状の特徴
4.嘔吐が改善した実際の症例
5.鍼灸で吐き気を止めるツボと治療の考え方

目次

3ヶ月間吐き続けた患者さんの症例

水を飲んでも吐く、薬も吐く異常な状態

一人の西洋医学のお医者さん、私の講義を聞いた人です。ある日、彼から電話がありました。

彼「先生、私の一人の患者さん、手が焼けてます。どうにか助けてください!」
私「どういう症状ですか?」

彼「心因性嘔吐です。水を飲むと水を吐く、ご飯を食べるとご飯を吐く、薬を飲むと薬を吐きます。もっとも不思議なのは、輸液2個までは吐かない。3個以上をしたら、必ず残りを全部口から吐きます。こんな患者さん、初めて見ました!

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検査では異常なし、心因性嘔吐と診断

私「吐いて何ヶ月経っていますか?」
彼「3ヶ月です。」

私「どんな検査をしましたか?」
彼「嘔吐を起こす病気は、すべて排除しました。だから今は、“心因性嘔吐”だと診断しています。」

これは直接患者さんを見ないといけないですね。

問診で見えた「怒り・不眠・尿トラブル」

病院に行って、私は患者さんに聞きました。

私「何がきっかけで病気になったのですか?」
患者「主人と喧嘩してからです。」

私「なんで喧嘩をしたのですか?」
患者「浮気したから!」

これは当たり前に怒るでしょう。

主人との喧嘩という強いストレスがきっかけで嘔吐が始まりました。

ストレスで激怒し嘔吐する女性の漫画イラスト(心因性嘔吐のイメージ)
強いストレスが心因性嘔吐を引き起こすイメージ図

私は彼女が以前使った漢方薬を見ました。嘔吐を収める生薬ばかり。胃を温めるやつ、胃の熱を取るやつ、補う方法、攻撃する方法、あらゆる手段を使ったけど、漢方薬を飲むと吐いてしまうのです。

彼女の舌苔はない、ベロは赤く光っている。
脈診では細弦数。
陰虚証の症状ばかりでした。

私「夜は寝られますか?」
患者「あいや!一晩中眠れません。病気になる前から不眠症でした。」

陰虚証は強烈な嘔吐で起きたのか、もしくは昔からあったものか、私は確認するために彼女に聞きました。

私「今回の嘔吐になる前に、どんな病気がありましたか?」
患者「以前は慢性的な泌尿器感染症がありました。よく尿が出にくくなって、尿道が痛かったです。今回も発作しました。」

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嘔吐の原因は胃ではなく「尿が出にくいこと」

陰虚+水と熱が膀胱に停滞する

OK。
上は口が渇く、イライラ、落ち着きがない眠れない症状がある。下は尿が出にくい、尿量が少ない症状がある。

これって猪苓湯ちょれいとうですよね?

スライスされた猪苓(ちょれい)の生薬と断面
猪苓湯の主役生薬・猪苓(ちょれい)

猪苓湯ちょれいとうの仕組みは、陰虚証で水と熱がくっついて、膀胱の尿を作る機能が悪くなり、尿が出にくい、もしくは尿道が痛い。水と熱がくっつくと、陰液を損なって口が渇きます。下の腎臓の陰液が足りないと、上の心臓の火だけ興奮状態になり、夜はもちろん寝れません。

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尿が出ないと水が上に逆流し、胃を圧迫して吐く

以上の症状、彼女は全部揃っていました。もっとも著しいのは嘔吐。

傷寒雑病論1』の猪苓湯ちょれいとうで、水邪は流動性があります。水邪が肺を犯すと咳が出る。胃を犯すと嘔吐が現れる。腸を犯すと下痢になる。

だから、咳、嘔吐、下痢は猪苓湯ちょれいとうの3つの副症状です

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猪苓湯で嘔吐が改善した理由

水と熱を分けて排尿を促す

私は彼女が猪苓湯ちょれいとうだと疑いはじめました。
弁証が正しいかどうかは、検証するしかない。

心因性嘔吐の治し方は、胃ではなく“尿の問題”を改善することです。

猪苓湯の中には澤瀉(ダクシャ)と猪苓があるけど、これはみんな利尿作用が強い生薬。

また、滑石もあるので、これは熱を下げる・炎症を抑える作用があります。

両者の共同作業で、溜まった水分と熱は尿から出る。

水中で育つ澤瀉(ダクシャ)の生薬植物
猪苓湯に使われる生薬・澤瀉(ダクシャ)

少量ずつ飲ませる治療の工夫

私は猪苓湯ちょれいとうを処方して、ご主人に言いました。
「あなたは毎日介護しないといけません。この漢方薬は、1時間に1さじを奥さんにあげます。1さじ以上、飲ませてはいけない!」

私が話したのは、2つの目的があります。
一つ目は、彼女はもともと何でも吐くので、この漢方薬を全部吐いたら台無しになる。だから、ちょっとずつあげて、体が慣れるようにしたのです。

2つ目は、ご主人が毎日隣にいて、1時間に1さじ薬を飲ませることで、奥さんに許してもらうこと。

3週間で退院、5〜6年再発なし

2日後、彼から電話が来ました。

彼「先生!奇跡が起きました!」
私「どうしたんですか?」

彼「1さじずつ飲ませたら、彼女は徐々に量が少なすぎると文句を言いました。もう吐かない。“この漢方薬は非常に合っている”と彼女は言ってました。」
私「合っているなら、そのまま飲み続けてください。」

彼「また1さじずつ飲ませますか?」
私「ご主人が1さじずつ飲ませるのが好きなら、1さじずつで良いです。奥さんがたくさん飲みたいなら、多めに飲ませても良いです。」

赤い布の上に置かれた滑石(かっせき)の生薬
猪苓湯に含まれる生薬・滑石(かっせき)

1週間後、彼女は流動性の飲食ができるようになりました。また1週間後には、輸液も要らなくなり、彼女は大喜びで冷たいトマトを1個食べたらすぐトマトを吐いてしまったのです。

彼はまた電話して来ました。

彼「冷たいトマトを食べたら、吐いてしまいました!」
私「大丈夫です。そのまま飲み続けて。」

3週間後、彼女は無事退院。

ストレスで嘔吐が続く心因性嘔吐は、再発しやすいと言われています。
だから私は彼に頼んで、追跡訪問をしました。
5~6年追跡しても、彼女は再発してなかったそうです。

激ヤセだった患者さん、今度はダイエットのために治療に来た

ある日、私が診察室に彼女が来ました。
「郝先生、私を覚えていますか?」

私は目の前のデブちゃんが誰か分かりませんでした。彼女が言うのは、「その時、私は神経性嘔吐で体重が35kgまで下がった、〇〇病院に入院した患者です。」

彼女に会ったのは病院に往診したときの1回だけ、その後は電話で追跡訪問だったので顔は覚えてないです。

彼女が私に言うのは、「先生、今回はダイエットしてくれますか?」

中国・郝万山先生2の治療例、郝万山经方36首故事1 を李哲が完全翻訳しました。

鍼灸で心因性嘔吐を改善する方法

以下からは李哲の文章になります。

尿トラブルなら中極穴・陰陵泉

尿が出にくいとき、鍼灸では寒熱を分析して、寒だったらお灸。熱だったら鍼をします。

ツボは中極穴一つで足りる。

鍼の場合は、陰陵泉を刺すと尿が更に出やすくなります。

以下は血尿が出た女性、自力でお灸をすえただけで血尿が治り、3か月止まった生理まで再開しました。本当に一石二鳥の効果。

血尿の治し方:お灸で3~4日で改善!病院治療で死亡のリスクも

胃の問題なら別のツボで即効性あり

もし尿の問題ではなくて、胃の問題だったら更に治すのが簡単です。例えば胃痛、吐き気、気持ち悪い、胃酸逆流、胃の膨満感…私は臨床でたくさんの症例を積んできました。以下は2つの症例、参考になると幸いです。

牡蠣あたりの吐き気・下痢を鍼1回で改善!食欲回復の症例

胃痛・胃もたれ・吐き気を鍼1回で治した例(陰陵泉と足三里を応用)

吐き気がする・嘔吐などはすぐ改善するので、鍼治療を試してください。

まとめ:心因性嘔吐は「原因の場所」を見極めれば治る

上記の例を分析します。

尿が出にくいと水がたまり、上の胃を圧迫すると、ものが胃に入ったとき反射的に吐いてしまいます。病気の根本原因は尿にあり、胃ではありません。

だから、胃を治す漢方薬をたくさん飲んでも効かないのです。

問題の本質を尋ねないで、胃がつらかったら胃を治す。頭が痛かったら頭を治す。これは本物の中医学ではないですね。西洋医学と変わりがない。

  1. 傷寒雑病論がどんな本のかは、傷寒雑病論の詳細:歴史的偉大さと衝撃的な影響が参考になります。 ↩︎
  2. 郝万山(かく ばんざん、Hao Wanshan)は、中国の著名な中医学(漢方医学)の専門家で、特に『傷寒論』の研究と臨床応用で知られています。もっと詳しい紹介は以下をご覧ください。

    郝万山先生の生涯と功績:中医学『傷寒論』の第一人者 | 漢方医学の巨匠

    ↩︎
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