心因性嘔吐症(しんいんせいおうとしょう)、神経性嘔吐症に関して、西洋医学は特に良い薬がありません。
漢方薬は何を根拠にして、どうやって治しているのか?
以下の翻訳文で解説しています。
こんにちは。李哲です。
今日は中国・郝万山先生*1の治療例を翻訳しました。
中国語本文のリンク先は、
翻訳文
一人の西洋医学のお医者さん、私の講義を聞いた人です。ある日、彼から電話がありました。
彼「先生、私の一人の患者さん、手が焼けてます。どうにか助けてください!」
私「どういう症状ですか?」
彼「心因性嘔吐です。
水を飲むと水を吐く、ご飯を食べるとご飯を吐く、薬を飲むと薬を吐きます。
もっとも不思議なのは、輸液2個までは吐かない。
3個以上をしたら、必ず残りを全部口から吐きます。こんな患者さん、初めて見ました!」
私「吐いて何ヶ月経っていますか?」
彼「3ヶ月です。」
私「どんな検査をしましたか?」
彼「嘔吐を起こす病気は、すべて排除しました。
だから今は、“心因性嘔吐”だと診断しています。」
これは直接患者さんを見ないといけないですね。
病院に行って、私は患者さんに聞きました。
私「何がきっかけで病気になったのですか?」
患者「主人と喧嘩してからです。」
私「なんで喧嘩をしたのですか?」
患者「浮気したから!」
これは当たり前に怒るでしょう。
私は彼女が以前使った漢方薬を見ました。
嘔吐を収める生薬ばかり。
胃を温めるやつ、胃の熱を取るやつ、補う方法、攻撃する方法、あらゆる手段を使ったけど、漢方薬を飲むと吐いてしまうのです。
彼女の舌苔はない、ベロは赤く光っている。
脈診では細弦数。
陰虚証の症状ばかりでした。
私「夜は寝られますか?」
患者「あいや!一晩中眠れません。病気になる前から不眠症でした。」
陰虚証は強烈な嘔吐で起きたのか、もしくは昔からあったものか、私は確認するために彼女に聞きました。
私「今回の嘔吐になる前に、どんな病気がありましたか?」
患者「以前は慢性的な泌尿器感染症がありました。よく尿が出にくくなって、尿道が痛かったです。今回も発作しました。」
OK。
上は口が渇く、イライラ、落ち着きがない、眠れない症状がある。
下は尿が出にくい、尿量が少ない症状がある。
これって 猪苓湯(ちょれいとう)ですよね?
猪苓湯の仕組みは、陰虚証で水と熱がくっついて、膀胱の尿を作る機能が悪くなり、尿が出にくい、もしくは尿道が痛い。
水と熱がくっつくと、陰液を損なって口が渇きます。
下の腎臓の陰液が足りないと、上の心臓の火だけ興奮状態になり、夜はもちろん寝れません。
以上の症状、彼女は全部揃っていました。
もっとも著しいのは嘔吐。
『傷寒雑病論』の猪苓湯で、水邪は流動性があります。水邪が肺を犯すと咳が出る。胃を犯すと嘔吐が現れる。腸を犯すと下痢になる。
だから、咳、嘔吐、下痢は 猪苓湯の3つの副症状です。
私は彼女が 猪苓湯だと疑いはじめました。
弁証が正しいかどうかは、検証するしかない。
私は 猪苓湯(ちょれいとう)を処方して、ご主人に言いました。
「あなたは毎日介護しないといけません。この漢方薬は、1時間に1さじを奥さんにあげます。1さじ以上、飲ませてはいけない!」
私が話したのは、2つの目的があります。
一つ目は、彼女はもともと何でも吐くので、この漢方薬を全部吐いたら台無しになる。だから、ちょっとずつあげて、体が慣れるようにしたのです。
2つ目は、ご主人が毎日隣にいて、1時間に1さじ薬を飲ませることで、奥さんに許してもらうこと。
2日後、彼から電話が来ました。
彼「先生!奇跡が起きました!」
私「どうしたんですか?」
彼「1さじずつ上げたら、彼女は徐々に量が少なすぎると文句を言いました。もう吐かない。“この漢方薬は非常に合っている”と彼女は言ってました。」
私「合っているなら、そのまま飲み続けてください。」
彼「また1さじずつ飲ませますか?」
私「ご主人が1さじずつ飲ませるのが好きなら、1さじずつで良いです。奥さんがたくさん飲みたいなら、それでも良い。」
1週間後、彼女は流動性の飲食ができるようになりました。
また1週間後には、輸液も要らなくなり、彼女は大喜びで冷たいトマトを1個食べたらすぐトマトを吐いてしまったのです。
彼はまた電話して来ました。
彼「冷たいトマトを食べたら、吐いてしまいました!」
私「大丈夫です。そのまま飲み続けて。」
3週間後、彼女は無事退院。
心因性嘔吐は再発が多い病気です。
だから私は彼に頼んで、追跡訪問をしました。
5~6年追跡しても、彼女は再発してなかったそうです。
ある日、私が診察室に彼女が来ました。
「郝先生、私を覚えていますか?」
私は目の前のデブちゃんが誰か分かりませんでした。
彼女が言うのは、「その時、私は神経性嘔吐で体重が35kgまで下がって、〇〇病院に入院した患者です。」
彼女に会ったのは病院に往診したときの1回だけ、その後は電話で追跡訪問だったので顔は覚えてないです。
彼女が私に言うのは、「先生、今回はダイエットしてくれますか?」
李哲の感想
猪苓湯の適応症は、尿が出にくい。尿道の痛み。
腎臓結石、膀胱結石、尿路結石、膀胱炎などはみんな以上の症状が出ます。つまり、猪苓湯は以上の病名のときに治療ができる。
上記の例を分析します。
尿が出にくいと水がたまり、上の胃を圧迫すると、ものが胃に入ったとき反射的に吐いてしまいます。
病気の根本原因は尿にあり、胃ではありません。
だから、胃を治す漢方薬をたくさん飲んでも効かないのです。
問題の本質を尋ねないで、胃がつらかったら胃を治す。頭が痛かったら頭を治す。これは本物の中医学ではないですね。西洋医学と変わりがない。
尿が出にくいとき、鍼灸では寒熱を分析して、寒だったらお灸。熱だったら鍼をします。
ツボは中極穴一つで足りる。
針の場合は、陰陵泉を刺すと尿が更に出やすくなります。
もし尿の問題ではなくて、胃の問題だったら更に治すのが簡単。
以下は妊婦さんの治療例で一般的ではないですが、他の患者さんにも同じツボを使います。吐き気がする・嘔吐などはすぐ改善するので、鍼治療を試してください。
◆最先端医療機器の後遺症:アルツハイマー、内臓が体外に出て、陰部から大量出血、激痛で失神、仕事する能力がなくなり、性生活もできなくなった
◆妊娠初期の食欲不振(つわり)、味覚異常、便秘ぎみ、お腹にガスがたまるのを2回で緩和。
*1:郝万山先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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