はじめに: うつ病と漢方薬の関係
こんにちは、李哲です。
現代社会で急増するうつ病。その多くが手術の後遺症によるものだとご存知ですか?
ストレスや生活環境だけでなく、身体への直接的なダメージが心に影響を及ぼすケースが増えています。漢方薬は「気血」を補うアプローチでうつ病を治療し、西洋医学とは異なる根本的な改善を目指します。
今回は、アメリカの漢方医、鄭智城先生1の症例:アメリカ人患者2人の実例(2012-05-08発表)をもとに、漢方薬がうつ病にどう効くのか詳しく解説。さらに、表を活用して漢方薬や鍼灸の効果を整理し、なぜ手術がうつ病を引き起こすのか、そのメカニズムやケア方法を深掘りします。
また、研究論文から、手術後にうつ病リスクが増加する科学的証拠も紹介します。
うつ病と気血の深い関係
中医学では、心と体は密接に繋がっています。「気」(生命エネルギー)は体を動かし、「血」(栄養を運ぶ血液)は心を養います。このバランスが崩れると、うつ病の症状—無気力、絶望感、涙が止まらない—が現れます。例えば、気不足は疲労感や意欲低下を、血不足は不安や睡眠障害を引き起こします。
西洋医学では脳内のセロトニンやドーパミンを調整する薬が主流ですが、漢方薬は全身のバランスを整え、自然に心を回復。手術は気血を消耗させるため、うつ病のリスクを高めます。特に大きな手術ほど影響が顕著です。気血を補うことで血流を改善する方法は、血流を良くする漢方薬で詳しく解説しています。
症例1: 前立腺手術後にうつ病になった中年男性
患者の背景と症状
ペンシルベニア州在住のスペイン系中年男性が、友人に連れられて来院。彼は前立腺手術後からうつ病に悩まされていました。具体的な症状:
- 体力低下で仕事ができない
- 理由なく涙が止まらない
- 絶望感で生活に希望がない
顔色は暗く、脈は弱く、舌苔は白くて厚い状態。これは気血不足と湿気の停滞を示します。彼は「前立腺肥大で尿が出にくくなり、手術を受けた後から調子が悪くなった」と話しました。手術後の後遺症:
- 両手の震え
- めまい
- 寝汗
- 体が冷える
- 不眠症
- 下痢
漢方治療と結果
「虚証」と判断し、以下の処方を14日分提供:
| 漢方薬 | 効果 |
|---|---|
| 黄耆 | 気を補い体力回復 |
| 党参 | 気を補強し疲労軽減 |
| 桂枝 | 血流を改善し体を温める |
| 当帰 | 血を養い精神安定 |
| 炙甘草 | 諸薬を調和し気を補う |
| 香附子 | 気の流れを整えストレス軽減 |
| 枸杞の実 | 血を補い目を養う |
| 蒼朮 | 湿気を取り除く |
| 茯苓 | 湿気を排出し心身を軽く |
2~3週間後、彼は「体調が良くなり、仕事に復帰できた」と報告。涙も減り、「家族や友人に感謝している」と生活に希望が見えたそうです。ただし、睡眠障害は残っていました。
補足: 前立腺手術が気血を大きく損傷し、湿気が体内に溜まったことが原因。漢方薬で調整し、心身が回復しました。手術後の体力低下への対処法は、手術後の体力低下を漢方で回復でも詳しく紹介しています。
症例2: 肩の手術後にうつ病を発症した米兵
患者の背景と症状
アメリカ海軍兵士の男性。肩の手術後、体調が悪化し、うつ病の症状が現れました:
- 人と会うのが億劫
- 何にも興味が持てない
- 動く気力がない
その後、流行りの浣腸を試してさらに悪化。初診時は「肥満症」を主訴に来院。彼は筋肉質でしたが、心臓が弱く、睡眠時無呼吸症候群(SAS)も抱えていました。

漢方治療と結果
初回は以下の処方を7日分提供:
| 漢方薬 | 効果 |
|---|---|
| 黄耆桂枝湯 | 気を補い血流を改善 |
| 陳皮 | 消化機能を整え気を巡らす |
| 枳実 | 気の停滞を解消 |
2週間後、彼は「気持ちが晴れ、生活に希望が持てるようになった」と報告。さらに1週間、鎖陽(陽気を補い活力を高める)を追加。1ヶ月後、「漢方薬を飲むと気分が良いが、止めるとうつ症状が戻る」とのこと。そこで、保元湯をアレンジした処方を提案。
補足: 肩の手術で気血が損傷し、心臓の弱さがうつ病を悪化。漢方薬で気血と心臓機能を支え、精神的な安定が得られました。
なぜ手術後にうつ病が起こるのか?科学的根拠
鄭智城先生によると、うつ病の多くは「気血不足」が原因。手術は体内の「気」を抜けさせ、内臓にダメージを与えます。例えば:
- お腹を開く手術: 密封された体内環境が乱れ、気が漏れる。
- 内視鏡手術: ダメージは少ないが、多少の影響は避けられない。
- 関節手術: 血流が滞り、気が不足する。
研究論文でも、手術後のうつ病リスク増加が報告されています。European Heart Journal Open(2022)のSWEDEHEART研究では、冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者が一般人口と比較して新たなうつ病発症リスクが高いことが判明。

特に若年層(65歳未満)では術後5年以内にリスクが顕著で、男性で1.34倍、女性で1.51倍でした。この研究は、手術が心身に与えるストレスや炎症反応がうつ病を引き起こす可能性を示唆しています。
また、PMCの論文(2016)では、手術による免疫抑制が感染症リスクを高め、それがうつ病と関連することも指摘されています。
これらの科学的証拠は、気血不足がうつ病の根本原因である中医学の視点と一致します。ストレスがうつ病に与える影響は、ストレスを漢方で解消で漢方的な視点から詳しく述べています。
手術後のうつ病を防ぐケア方法
手術後の気血不足を防ぐには、早めのケアが重要です。以下に具体的な方法を示します:
- 漢方薬の活用: 手術直後に黄耆や当帰を含む処方を飲む。体力回復と血の補充に効果的。
- 食事: 鶏スープや赤身肉で血を養い、ショウガで気を巡らせる。
- 軽い運動: 散歩やストレッチで血流を改善。ただし、無理は禁物。
- 鍼灸: 三陰交や関元で気血を補う。
研究でも、術後ケアがうつ病予防に有効とされています。例えば、術前のカウンセリングや家族支援が回復を助けると報告されています。鍼灸による体調改善の具体例は、鍼灸で体調を整えるで紹介しています。
漢方薬と西洋医学の違いを表で比較
| 項目 | 漢方薬 | 西洋医学 |
|---|---|---|
| アプローチ | 気血を補い全身を整える | 脳内物質を調整し症状を抑制 |
| 効果 | 心身ともに明るく、自然回復 | 一時的な症状緩和 |
| 副作用 | ほぼなし | 依存性、自殺リスク |
| 依存性 | なし | 高い可能性あり |
西洋薬の精神安定剤は頭がぼんやりしたり、興奮剤は依存性が高いリスクがあります。対して、漢方薬は全身のバランスを整え、心の回復を促します。
うつ病治療におすすめの漢方薬と鍼灸
おすすめの漢方薬
| 漢方薬 | 主な効果 | 適用例 |
|---|---|---|
| 黄耆 | 気を補い体力回復 | 疲労感、無気力 |
| 当帰 | 血を養い精神安定 | 不安、睡眠障害 |
| 香附子 | 気の流れを整えストレス軽減 | イライラ、抑うつ |
| 茯苓 | 湿気を排出し心身を軽く | 倦怠感、頭重感 |
おすすめの鍼灸ツボ
| ツボ | 主な効果 | 適用例 |
|---|---|---|
| 三陰交 | 血を補い気力を高める | 疲労、気力低下 |
| 血海 | 血を養い体力回復 | 貧血、体力低下 |
| 中脘 | 消化機能を整える | 食欲不振、胃もたれ |
| 関元 | エネルギーを補充 | 冷え、虚弱体質 |
| 太衝 | 肝気を調整しイライラ解消 | ストレス、怒り |
| 百会 | 精神を落ち着かせる | 不安、頭痛 |
| 天柱 | 頭をスッキリさせる | 頭重感、集中力低下 |
| 合谷 | 不安を和らげる | 緊張、不眠 |
鍼灸は体に穴を開けず、副作用がないため、手術後の体力低下も防ぎます。治療後は通院不要です。
李哲の感想: 人の精神は薬でコントロールできるのか?
手術や西洋薬が内臓を傷つけ、うつ病を引き起こすケースが増えています。人の気持ちを薬で無理やり変えるのは限界があります。
例えば、抗うつ薬の副作用で自殺衝動や攻撃性が高まる事例は深刻(詳細はこちら)。漢方薬は気血を整え、自然に心を回復させるのが強み。過去記事でも討論しています: うつ病に関する討論。
読者へのアクション喚起
手術後にうつ病で悩んでいるなら、漢方薬や鍼灸を試してみませんか?気血を補う治療は、西洋医学では得られない心身の回復をもたらします。当院では個別の症状に合わせた鍼灸処方を提供。詳しい症例や相談は、こちらをご覧ください。うつ病を根本から改善し、希望ある生活を取り戻しましょう。
鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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