こんにちは、李哲です。
中国北京・郝万山先生1の漢方治療例、郝万山讲伤寒论中的36个故事を翻訳しました。
脳腫瘍からくる強烈な頭痛と半盲(片方の視野が欠けている)が、6ヶ月の抵当湯で治った例です。脳腫瘍には手術・抗がん剤以外に漢方薬も良い選択肢である事を知って下さい。
脳腫瘍で強烈な頭痛と半盲になった女性
30年前、私は宋孝志先生について研修していました。当時、宣武病院から転院してきた一人の患者さん。彼女の症状は、強烈な頭痛と半盲(片方の視野がない)。
宣武病院の先生が脳血管造影検査をした結果、脳腫瘍が視神経を圧迫している。その時代は、まだ脳腫瘍手術が非常に難しかったです。だから、西洋医学の先生は言いました。
「私たちは打つ手がないです。手術は非常にハイリスクなのでオススメできません。中医学の先生に診てもらったらどうですか?」
中国の西洋医学の先生は、とても良いです。
彼らは解決策がないときは、中医学の先生に診てもらうのが事を勧めました。
患者さんはもちろん、藁にもすがる思いで治療に来ました。探したのはちょうど東直門にいる宋孝志先生。宋孝志先生は診察をしてから、しばらく処方箋を考えてました。
この患者さん、私は非常に印象深かったです。
40代の女性、頭痛で目が開けられない。
半盲もあるので、彼女は非常に絶望的でした。
抵当湯を3ヶ月飲んでから頭痛が消え、6ヶ月後には半盲も治った
宋孝志先生が出した処方箋は瘀血を出す抵当湯。ただし、煎じ薬ではなくて、粉薬にしてカプセルに入れて飲むようにしました。
一つのカプセルに0.3g入っている。最初は彼女に朝晩だけ1粒を処方。もし大便が1日1回だけで、軟便でなかったら更に1粒を追加。朝昼晩1粒ずつ。大便が一日1回、軟便であればOK。2回以上も軟便が出たら減量。

虻虫(ぼうちゅう):抵当湯に入っている生薬。ハエより大きくて、よく牛にくっついて血を吸う吸血動物。瘀血を溶かす力が非常に強い。
最初、彼女は1ヶ月飲んで改善がなかったです。
しかし、宋孝志先生は「続けて飲んでください」と言いました。
2ヶ月目になって、頭痛は減り始め視野が広がり。
3ヶ月目になって、頭痛はほぼ解消。
6ヶ月飲んだ時、視野は完全に回復し頭痛も消えました。
脳腫瘍の諸症状が治って困惑した私
6ヶ月目のとき、彼女は再診察に来たけど、すべての症状がなくなったので私は困惑しました。
脳腫瘍って消えるもの?
私は彼女に、もう一度脳血管造影をすることをすすめました。30年前はMRI、CT、超音波(エコー)もなかったです。唯一に調べられるのは脳血管造影検査。しかし、この検査は一定のリスクがあり、検査を受けるのも痛いです。だから、患者さんはやりたがらない。
私はなぜ彼女が治って、脳血管の腫瘍は本当に消えたのかを確認したかったです。
ある日、宋孝志先生がいないとき、私は彼女に話しました。
「必ず検査をしてください。腫瘍が他のところに行ったかも知れない。ある日、万が一破裂して大出血したら命を落とします。もう一度検査して確認したほうが良いです。脳腫瘍は簡単に消えるものではありません」
彼女は後で私に教えましたが、私に言われた日は眠れなかったそうです。
私は今思い出すと、あのときは若いバカでした。
そんなふうに言うのはダメ。
脳腫瘍が消えて愕然とした放射線科の技師
彼女は翌日に宣武病院に行って、検査が終わったあと、半年前の画像も一緒に見せて、放射線科技師に質問しました。
彼女「この2つの画像、何が違うでしょうか?」
放射線科の技師「これはあなたのものですね。もう一枚は、あなたのものではない」
彼女「なんで、もう一枚は他人のものですか?」
放射線科の技師「この1枚には脳血管の腫瘍が見えます。でも、ほかの一枚はなにもないです」
彼女「全部私のものですよ。半年前に検査したのもあなたです」
放射線科の技師「うそ!あり得ない!腫瘍があったのに、なんで今はないんだ?」
技師は腫瘍が消えた理由が分からなくて、彼女に聞きました。
「どうやって治療したのですか?」
彼女「中医学の先生に診てもらって、ずっとカプセルの薬を飲みました」
漢方薬を使わないで、手術をしたがる患者さんが増えた
抵当湯を粉薬にして、脳血管の腫瘍にこんなに良い効果があるのは、今まで1人しか見ていません。
私も臨床治療で宋先生のマネをして抵当湯を使ったけど、患者さんは続かないのが多かったです。あるいは、現代テクノロジーの発達で手術がさかんになったのもあります。

抵当湯に入っている生薬、桃仁(とうにん)、瘀血を溶かす作用がある。
患者さんはしばらく漢方薬を飲んで改善が遅いから、やはり手術のほうが良いと思って手術をしてしまう。だから、彼女みたいに効果が出た人はいません。
私がとても遺憾だと思うのは、彼女の住所と名前を覚えたけど、彼女が何度も引っ越したので最後は見つからなくなったのです。
もし、今でも追跡記録ができたら、彼女は今70歳でしょう。長期的な治療効果はどうなのか?確認したくてもできないです。
(おわり)
- 郝万山先生は中国有名な漢方医。現在北京で診療所をやっています。詳細はオススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
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