左肋骨下の腫れ物が3日の「五積散」で消えた例

左肋骨の奥に「何かある」。
長年治らなかった腫れ物が、たった3日間の五積散で消えた——。

本記事では、数々の処方で改善しなかった理由と、五積散が劇的に効いた中医学的背景を詳しく解説します。

※アメリカの中医師:鄭智城先生1の症例、胰脏不明原因肿块终于治疗见效_郑智城(2012-03-14発表)を李哲が完全翻訳しました。

目次

諸症状は改善しているのに、左肋骨下の腫れだけ治らない理由

今年の始まりの時、一人の西洋人女性が再診察に来ました。

彼女の症状は、長年左肋骨下の奥部に腫れ物があって、痛くもないそうです。彼女が言うのは、「何かがそのへんにあります。」

左肋骨の違和感を示すように指差し、苦しそうな表情をする白人女性
左肋骨の張りや違和感を訴える患者をイメージした写真

彼女は見た目は白人だが、完全に白人でもない。あとで知りましたが、イタリアの血が流れているそうです。

ベロはとても怪しく、薄い赤でたくさんの裂けた溝が見えます。そして、潤いが多い。脈診も特別で、他のところは目立たないけど、関部だけ出っ張っていたのです。

彼女の処方箋はいろいろ使いました。半夏瀉心湯、六君子湯、苓桂朮甘湯、五苓散、猪苓湯、四逆散、大柴胡湯、三稜、莪朮などなど。とにかく、考えられる処方は全部使ったけど、腫れ物が消えません。

幸いにも、彼女のほかの症状は改善されたので、断続的に再診察に来ています。

🔎あわせて読みたい:苓桂朮甘湯でめまい・嘔吐が即効改善した症例はこちら

五積散に変更したら3日で腫れ物が消えた実例

今年の始まりの時、ちょうど五積散を知ったばかり。
これは防風通聖散と真逆の処方で、温めるほうが多いです。

清朝の名医、喻嘉言が『医門法律』で書いたのは、「能治多病,粗工咸楽用之」。
(李哲の直訳:たくさんの病気を治せるので、面倒くさがりの先生・病状がよく分からない先生は使いたがる)

私が思ったのは、自分はまだ未熟な先生だし、こんな良い処方だったら使ってみよう。
そして、彼女の関部の脈が鬱結したのが著しいので、この処方は合っているかも。当時、彼女に処方したのは3日分。

薄緑色の茶碗に盛られた甘草と薬草の本、禅と書かれた石の飾り
五積散に含まれる生薬・甘草のイメージ

3ヶ月後、彼女はまた来ました。

私「前回の処方はどうですか?」
彼女「良いです。腫れ物が消えました。でも、最近はまた出てきたみたいです。」

私「本当に?効果は何日くらい続きましたか?」
彼女「だいたい1ヶ月続きました。」

脈診してみたら、関部の脈はほぼ平。
以前の出っ張っている脈と完全に違う。
これは確実に効果があることですね。

五積散はなぜ効いたのか?中医学的な機序を分析

五積散で効果が出たのは、皮膚の穴を開けるからです。

以前の処方は、全部体の中だけ考えていました。
しかも、ある部分だけを考える。
水、もしくは痰、気、血など。

五積散はすべての老廃物をまとめて出す処方箋。同時に皮膚の穴を開ける漢方薬です。

万病は風邪(ふうじゃ)から来ると言いますね。

ニハイシャ先生2はもっとすごい言葉がありますが、「すべての癌のもとは風邪である!」

全面的に解決する五積散のおかげて、彼女の病気もやっと効果が見れました。幸いのことです。

黒い陶器皿に横たえられた当帰と、背景に見える薬草を煎じるきゅうす
五積散に含まれる生薬・当帰の写真

李哲の解釈

五積散は15〜18種類の生薬を使う“総合処方”

五積散(ごせきさん)は、15~18種類の生薬を入れているみたいですね。数打てば当たるだろうの感じ。古典派(経方派)と違う温病派の典型的なやり方です。

温病派の詳細は以下をご覧ください。

『傷寒雑病論』3の処方箋の構成を見ると、簡単なやつが多いです。普通は5~6種類の生薬で組み合わせ。多くても10種類くらいの生薬でしょうか。18種類というのは、さすがに『傷寒雑病論』のスタイルではないです。

ちなみに、日本で五積散が売っています。
興味がある方は、どうぞ調べてみてください。

治療は「効果があるか・ないか」の2択しかない

左肋骨下の脾臓あたりですが、上記の処方箋を見ると当てはまるのがないです。だから、いろいろ処方箋を変えても効果がなかったでしょう。

漢方薬って、本当に判断が難しいです。 
イチかバチかの問題なので、処方があっていればすぐ効果が出る。処方があってなかったら、何週間飲んでも効きません。

治療って、そんなものではないでしょうか?

すべての治療は、結果的に2択のみです。

  • 効果がある
  • 効果がない

この道理をわかれば、皆さんは西洋医学の有効率何%の話に騙されないでしょう。

有効率60%だから、あなたが使っても60%効くと思いますか?

結果的には100%効く、もしくは100%効かない。
60%の効果があるなんて、ありえません。

以下の記事では、私の勉強経歴を振り返りながら、漢方薬・鍼灸に対する認識を書きました。漢方薬はもちろん、鍼灸もツボが間違ったりすると、効果が出ません。

🔗中医学との出会いで治療観が変わった体験談はこちら

鍼灸なら三焦経を整えることで肋骨下の腫れに対応できる

上記の彼女の状態だと、西洋医学の病名:脾腫が考えられます。

鍼灸治療では、手足の三焦経(さんしょうけい)を考えますね。

たとえば手少陽三焦経のの外関、支溝。
足少陽三焦経の陽陵泉、絶骨、光明。
あとは、肋骨あたりの日月・章門など。

腫れ物ではないですが、わき腹の痛みを治した事があるので、参考にしてください。

わき腹、肋骨の痛みであろう、何かの腫れ物であろう、鍼灸治療ではそのへんを流れている経絡を見て、相応のツボを選択し手技を考えます。

効果があるかないかは、鍼を3~4回してみれば分かります。

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  1. 鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。

    ↩︎
  2. 倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。

    ↩︎
  3. 傷寒雑病論の解説は、傷寒雑病論の詳細:歴史的偉大さと衝撃的な影響をご覧ください。 ↩︎
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