こんにちは、李哲です。
スタンダード大学の博士、李宗恩中医師1の漢方薬治療例、甲狀腺腫塊,心悸,胸口悶喘 – 當張仲景遇上史丹佛(2013-4-7発表)を翻訳しました。
甲状腺の腫れ・動悸を治すのには、西洋薬以外に漢方薬・鍼灸治療があることを知ってもらえると嬉しいです。
甲状腺が腫れて、動悸・咳・呼吸困難がある女性
2013.3.28 初診
女性、45歳、中国人。
主訴:
左首に腫れ(腫瘍)があり、サイズは約3cm×1.5cm。見つけてから半月経っています。

甲状腺の腫れは漢方薬で治る
ほかの症状は、
- 動悸。
- 夜は息が吸えなくて咳する。
- 手のひらは少し黒い。
- 最近は特に疲れやすい。
- 下肢静脈瘤はひどくて、足の踵は乾燥する。
問診内容と処方箋
寒熱:手足は冷え性。
汗:手汗をかくけど、体はほとんど汗をかかない。胸のほうはたまに汗をかく。
睡眠:12時半に布団に入って、寝付けるのに30分かかる。夜2時前後には1~2回目が覚めて、朝起きるのは7時。
食欲:正常、甘いものが好き。
大便:ほぼ毎日1回はある。
尿:2~3時間に1回。
口渇:あまり水を飲まない。温かい水を飲みたがる。
生理:周期は23日、半年前から生理不順が始まり、ほかの中医学先生の治療で治りました。生理が続くのは2~3日、血の塊があって色は濃い。
脈診:細小、無力、脈は浅くて尺脈は良く分からない。
舌診:舌苔は白、乾いている。舌の前は瘀血が見える。
眼診:腎臓の反応が悪い、肝臓の反射区は大きすぎで肌理が悪い。脾臓の反射区も悪い。
ツボ押し:三陰交穴と胆石症のツボは押すと重だるい、 腹診は正常。
処方箋:海藻 夏枯草 牡蛎 生地黄 炙甘草 生半夏 厚朴 生姜 白朮 茯苓 紫蘇の葉 瓜簍実 薤白
鍼灸の処方:列缺 照海 巨闕 関元 天突 三陰交

紫蘇の葉は食用でもあるし、病気治療でも使う
甲状腺の腫れ、胸が苦しい・咳は完全に治った
2013.4.5 再診察。
主訴:胸が苦しい、咳するのは50%減って、左首の腫れ(腫瘍)も半分以下になった。この数日は中脘上が痛い、漢方薬を飲んでから食後はさらにひどくなるそうです。あとは怒りやすい。
生理:1ヶ月で来ました。先日は少しの出血があったけど、すぐ止まりました。
脈診:尺脈はまだ著しくない。脈は細小、少し無力、脈はまだ浅い。
舌診:舌根部は舌苔が白で厚い。舌前は少し白で薄い。
処方:海藻 夏枯草 牡蛎 炙甘草 生半夏 厚朴 桂枝 枳実 生姜 陳皮 当帰 川芎 麦門冬 遠志 竜骨 柴胡 なつめ 茯苓
鍼灸の処方:巨闕 関元 公孫 内関 中脘
2013.4.12
主訴:甲状腺の腫れ(腫瘍)は完全に消えて、胸の痛み・苦しみもなく動悸も治りました。
李哲の解釈と感想
李宗恩博士の処方箋を見ると、不思議に「半夏厚朴湯」をもとにしています。一般的にはほかの処方箋を考えるかも知れませんが、さすがに切り口が鋭いです。根拠は分からないけど、結果から見ると李宗恩博士は正しいですね。
「半夏厚朴湯」は、喉に何かが詰まった感じがするときによく処方します。その効果は、私が患者さんから聞いた限り、一晩で治ったそうです。関連内容は以下の記事をご覧ください。
海藻は食用ですね。
甲状腺の腫れにも使うなんて、驚く方がいるかも知れませんが、漢方薬は医食同源の物が多いです。だから、生薬は安全性に優れているとも言えます。
もちろん、生薬は「上品・中品・下品」に分かれていて、すべて毒がないものではない。上品は毒がないけど、中品と下品は毒物たらけです。詳しい説明は以下の記事を参考にしてください。
上記の患者さんの症状を見ると、動悸・胸が苦しくて痛い心臓の自覚症状もあります。
なぜ甲状腺の腫れなのに、心臓の症状まであるのか?
中医学の理論で、甲状腺は心臓が司る範囲の一部です。だから、甲状腺に問題が出た時は、すでに心臓に問題があるのを示す。順番を簡単に言うと、心臓に問題がある⇒ ⇒甲状腺の異常が現れる。
根本が心臓なので、動悸・胸が痛苦しい症状を先に治さないといけません。幸いにも、漢方薬・鍼灸ですぐ改善したこと。以下はひどい心筋梗塞を漢方薬だけで治した例。参考にしてください。
鍼治療のツボは、幼なじみのやつばかりです。
ニハイシャ先生の鍼灸を習った人であれば、みんな予測できるツボ。
手足に鍼を刺すのに、甲状腺が刺激されて悪化するとは思わないでしょう?
鍼灸は非常に安全で有効な治療法です。
鍼灸だけの治療だと2週間以上かかりますが、少なくとも西洋薬みたいな副作用がありません!
死ぬまで西洋薬で甲状腺をコントロールするか、漢方薬・鍼灸で根治してみるか。どちらを選ぶかはあなた次第です。
(おわり)
李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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