薬であれば3分の毒を持っている→これは生薬に対する中途半端な理解

「薬は必ず毒を持つ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、この“是薬三分毒”という説は、生薬の世界ではまったく当てはまりません。

中医学の原典『神農本草経』を紐解くと、生薬には毒のない上品が多く存在し、むしろ滋養強壮のために日常的に使われてきました。

本記事では、この誤解の正体と、生薬の本来の分類・使い方をわかりやすく解説します。

目次

なぜ「是薬三分毒」は誤解なのか

是薬三分毒薬であれば3分の毒を持っている)」
この都市伝説は中国人が発明したものです。

見た感じでは客観的で科学的そうです。
たくさんの中医学業界の人も、この説を認めています。

しかし、よく考えるとこの話は間違っている。

神農本草経が示す生薬の3分類(上品・中品・下品)

皆さん、中医学の4大聖典の一つ、『神農本草経しんのうほんぞうきょう』を読んだ事があれば、『神農本草経しんのうほんぞうきょう』は生薬を上品・中品・下品に分けているのが分かります。

上品:毒性がなくて、滋養強壮効果がある

上品に属している生薬は、性質が穏やかで毒性がない。
長期的に服用しても大丈夫で、滋養強壮効果があります。
だからこそ、上品に属しているのです。

上品の代表者は人参(性質はほんの少しだけ寒、韓国人は年中サムゲタンを食べている)、甘草、天門冬などなど。

木の容器に盛られた乾燥人参の頭部のクローズアップ。神農本草経で上品に分類される滋養強壮の代表生薬。
木の容器に盛られた乾燥人参の頭部。『神農本草経』で上品に分類され、滋養強壮の代表として古くから使われてきた生薬。

下品:強い毒性があり、緊急救命が得意

下品に属している生薬はほとんど毒性があり、重病を治すのに使うものです。現代医学でいうER緊急救命室で使うもの。

例えば附子(トリカブト)、烏頭(うとう)、大黄、半夏などなど。このような生薬は、しょっちゅう使うものではありません。

李哲の説明:
附子(トリカブト)に関して、間違った認識を持っている方が多いので新たに解説しました。以下の記事、参考になると幸いです。
附子(トリカブト)・天雄・烏頭の違いと毒性・効能を詳しく解説した記事はこちら

中品:毒性は少~中、一般の病気治療で使う

中品に属しているのは、上品と下品の間のやつ。
例えば麻黄・当帰・芍薬などなど。

緑の葉に囲まれた赤黒い芍薬の花。中品に分類され、当帰などと組み合わせて病気治療に使われる代表的な生薬。
深い赤黒い花弁が美しい芍薬。中品に分類され、当帰などとともに幅広い病気治療に使われる代表的な生薬。

ここで分かりますが、漢方薬はすべてを含めていて、なんでもありです。すべての自然に生まれてもの、水も米も含めて漢方薬として使えます。『本草綱目ほんぞうこうもく』がこのような生薬の百科事典です。

こんな状況を踏まえ、生薬であれば3分の毒だと言うのは論理思考に合わない。

西洋薬と漢方薬の決定的な違い

漢方薬は西洋薬と違います。

西洋薬は合成された化学薬品。純度が高くて、性質が非常に偏っています。基本的に生薬の下品よりも下品。だから、薬であれば3分の毒性があるというのは、西洋薬に適している。(西洋)薬であれば3分の毒性があるのが正しい。

ピンク色の錠剤と薬価が記載された説明書の一部。西洋薬が高純度の化学薬品で副作用が多いことを示すイメージ。
ピンク色の錠剤と薬価が記された説明書。西洋薬は高純度の化学薬品で作用が偏りやすく、副作用が多い点が特徴。

臨床でみると、病院の薬で体調不良になった患者さんは非常に多いです。以下は、不妊治療薬で食べ物アレルギーになり、顔が赤く腫れ上がり、腹痛が生じた患者さんの例。詳細はこちら

健康な人にとって、上品に属している生薬をよく食べると滋養強壮効果があり、元気で長生きできます。全然問題がない。良い所だけで、悪い所はありません。

※アメリカの中医師、鄭智城先生1の記事、是药三分毒是对中药一知半解的说法_郑智城(2012-09-18 発表)を李哲が完全翻訳しました。

李哲の補足:生薬分類の本当の意味と臨床での使い方

生薬を上品、中品、下品に分ける理由

鄭先生の話した通り、生薬は上品、中品、下品に分けられています。

生薬の種類代表的な生薬毒性使用場面
上品人参、甘草、天門冬などない普段の養生・滋養強壮剤
中品芍薬、当帰、麻黄など小~中の毒病気治療
下品トリカブト、ウトウなど大毒が多い重症・難病・救急救命
竹のザルに盛られたスライスした生の附子。強い毒性を持ち、重症・救急治療に使われる下品生薬の代表。
竹のザルに盛られた生の附子(トリカブト)。強い毒性を持ち、重症・難病・救急救命に用いられる下品生薬の代表格。

3種類の格をつけるのは、尊いとか階層を分けるためではありません。どんな時に使って良いのかを示すためです。

表記したように、病気になったときは必ず下品・中品を主役として使います。滋養強壮効果がある上品も病気治療に使いますが、あくまでも脇役で主役ではありません。そして病気が治り、もっと体力をつけたい・元気になりたいときに登場するのが上品の生薬。

例えばヨクイニン。
中国有名な薬膳:『四神湯』の材料の一つです。日常で食べると湿気を取ってくれるので、ダイエット効果があり、湿疹・汗疹などにも効果的です。

🔗むくみ・湿気取りに使われる薬膳『四神湯』の効果と作り方はこちら

無数の人体実験を通して、生薬は昔から厳格に使用基準があり、適応症が決められました。こんな厳密な科学的な漢方薬を誤解するなんて、『神農本草経しんのうほんぞうきょう』も読んだことがない人でしょうね。中医学を批判したいときは、先に中医学の著作を読まないとダメです。

鍼灸は漢方薬と違って上品、下品の差がない

鍼灸は漢方薬と違って、あなたが病気なくても大丈夫。病気がある場合は、さらにOKです。例えば中脘は胃痛、下痢を治せます。健康な人に中脘を刺しても、腸が動きすぎて下痢になったりしません。

特にお灸は滋養強壮効果もあって、鍼みたいに専門知識がない素人でもできるので、昔から民間で幅広く使われていました。以下は良く使われるお灸のツボを紹介した記事、参考になると幸いです。

人工的に合成された化学薬品は言うまでもない。任意の西洋薬の添付文書を見て下さい。その副作用は本来の治療項目よりも多くて、目が点になるほどです。

よくある質問(FAQ)

生薬はすべて毒があるのですか?

いいえ。『神農本草経』では、生薬は上品・中品・下品に分類され、上品には毒性がありません。むしろ滋養強壮のために日常的に使われてきました。

「是薬三分毒」は本当に間違いなのですか?

中医学の観点では誤解です。 この言葉は本来 西洋薬(化学薬品)に当てはまる概念で、生薬全体に当てはめるのは不正確です。

上品・中品・下品はどう使い分けるのですか?
  • 上品:毒性なし。日常の養生・滋養強壮に。
  • 中品:軽〜中程度の毒性。一般的な病気治療に。
  • 下品:強い毒性。重症・救急レベルの治療に。

病気治療では中品・下品が主役、上品は補助として使われます。

西洋薬はなぜ「下品より下品」と言われるのですか?

西洋薬は合成化学薬品で純度が高く、作用が強く偏るため、副作用が多くなりやすいからです。 添付文書を見ると、副作用の項目が非常に多いことがわかります。

健康な人が上品の生薬を摂っても問題ありませんか?

問題ありません。上品は毒性がなく、滋養強壮・体力維持・長寿のために古来から日常的に使われてきました。

鍼灸にも上品・下品のような分類はありますか?

ありません。鍼灸は生薬と違い、健康な人にも病気の人にも安全に使える療法です。 特にお灸は家庭でも使われ、滋養強壮にも役立ちます。

生薬の毒性はどうやって判断されてきたのですか?

数千年にわたる人体実験(臨床経験)によって、毒性・適応症・使用量が厳密に整理され、『神農本草経』や『本草綱目』に体系化されました。

漢方薬は安全だと言われますが、副作用は本当にないのですか?

上品はほぼ副作用なし。 中品・下品は毒性があるため、専門家の処方が必要です。 ただし、西洋薬と比べると副作用の種類・強さは一般的に穏やかです。

  1. 鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。

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