こんにちは、李哲です。
中国・河北省の張静先生1の漢方薬治療例を翻訳しました。ひどい不正出血で貧血になり、頭痛・口が渇く・気持ち悪いなど様々な症状を抱えている女性を治療した内容です。中にある処方箋など参考になると幸いです。
中国語本文のリンク先は以下の通り。
(2020年8月28日 発表)
不正出血1ヶ月でめまい、腕を上げる力もなくなった女性
34歳の女性。
不正出血が1ヶ月続いて、今は目の前が真っ黒になるくらいめまいがして、腕を上げる力すらありません。また、喉が乾いて口の中が苦い。頭痛、特に後頭部が痛いそうです。
2日前は原因不明で熱がありました。2回の筋肉注射をしてから熱は下がったけど、なんとなく体の不調が取れてない。
以下は診察内容です。
舌診では舌が痩せて薄い。舌苔は薄い白。
脈は沈細、探るのも大変でした。
私の判断は、貧血になったのは不正出血が主な原因。
5日後、不正出血は止まり、便秘・喉が乾いて口の中が苦い諸症状は治った
処方箋は2つにしました。
- 生附子(生のトリカブト)、乾姜、人参、炙甘草、天花粉、茯苓。
- 柴胡、黄芩、天花粉、当归、生姜、なつめ、炙甘草。
先に処方箋1を飲む。5日後には目の前が真っ黒になるめまいは改善したけど、口の中が苦い・もしくは発熱した場合は処方箋2をすぐ飲むように伝えました。
5日後、不正出血は止まり、便秘・喉が乾いて口の中が苦い諸症状は治りました。だから、処方箋2はまだ飲んでもいません。
7日後、歯の痛み・歯根の腫れなどは治った
不正出血が止まったら、今度は新しい症状が出ました。
- 歯が痛い
- 歯根が腫れている
- 頭を振るとめまいがする
処方箋:炮附子、黄柏、砂仁、龟板、炙甘草。7日分。
7日後、歯の痛み・歯根の腫れなどは治りました。
続々と出る新しい症状は、全部漢方薬で治し、いつもの健康に戻った
歯の痛みが治ったら、また新しい症状が出ました。
全身の痛みがあり、力仕事もしてないのに全身の筋肉が痛いのです。
処方箋:桂枝、白芍、生姜、大枣、人参、炙甘草
「新加湯」を飲んで、全身の筋肉が痛むのは治ったら、また新しい症状が出現!
口の中が苦い・倦怠感が出たのです。
そして、最初の処方箋2に変更。
処方箋2を飲んだあと、以前の健康な状態に戻りました。
李哲の感想と解釈
処方箋の解釈と私の感想文を書きます。
張静先生の処方箋を分析
処方箋が何個もあるので、1個ずつ分析して見ます。関連の症例も貼ってあるので、参考になると幸いです。
茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)
処方箋1は、茯苓四逆湯+天花粉です。
茯苓四逆湯は心臓を強化、陽気を補給する最強の処方箋。西洋医学のICU病棟で使う「強心剤」に似ています。心肺停止の患者さんを救うとき、茯苓四逆湯は効果抜群。日本では殺人事件に使われたとして有名なトリカブトですが、中国では緊急救命に使っていますね。
上記の患者さんは、まだ意識を失うショック死ではないけど、脈がほとんど探知できないから処方したでしょう。
茯苓四逆湯は、葬式まで準備した患者さんを救ってきた症例もあります。西洋医学は余命宣告し、治らないと言ったけど、漢方薬で”奇跡的”に回復したのです。詳しくは以下の記事をご覧ください。
小柴胡湯(しょうさいことう)
処方箋2は、小柴胡湯をアレンジしたもの。小柴胡湯は「少陽症」の代表的な処方箋。「少陽症」には様々な症状が現れます。よく見られる症状は、
- 口の中が苦い
- 喉が乾く
- 胸脇苦満(胸と脇腹がつっかえて辛い、膨満感がある)
- 往来寒熱(体が寒くなったり熱くなったりするのは、マラリアに似ているけど、違う病気です。)
張静先生が小柴胡湯をアレンジしたのは、おそらく口の中が苦いのがあるからでしょう。ちなみに、鍼灸でも口の中が苦い症状をすぐ治せます。以下は一つの例、まれなケースですが、1回で治りました。
潜陽封髄丹(せんようふうずいたん)
処方箋:炮附子、黄柏、砂仁、龟板、炙甘草は「潜陽封髄丹」の組み合わせです。「潜陽封髄丹」は腎臓の陰が足りなくて陽気が浮いて、歯が痛い・喉が痛い・顔がほてて眠れないときによく使う。張静先生の症例では何度も出ています。以下の記事、参考にして下さい。
一人の中医師は、一つの総合病院と同じ
上記の患者さんは、症状がゴロゴロ変わりました。そして、症状が変わるごとに張静先生は関連の処方箋で的中。結果的には短期間ですべての不調を治したのです。
病気治療中、患者さんの症状は変わります。たとえ肝臓がんでも、ずっと常に同じ状況ではないのです。自覚症状が変わった時、中医師は漢方薬を変えたり、ツボを変えたりして対応します。臨機応変は中医学の一つの特徴。
上記の患者さん、もし病院に行ったら婦人科、内分泌内科、消化器科、歯科…など回らないといけないでしょう?たらい回しされて、治ると思いますか?
中医学は一人の先生で十分。
すべてきれいに片付けします。
不正出血は鍼灸でも治せる
不正出血の原因となる病気は様々です。たとえば子宮筋腫、子宮頸がん、子宮がんなど。ひどくなければ、鍼灸でも数回で治せます。
以下は一つの症例。まれな例ですが、1回で出血が止まり、施術した私すらビックリしました。こんなに早く治るとは思ってもなかったから。
不正出血以外に、いろんなつらい諸症状がある場合、鍼は1回で治せません。少なくとも数回はかかるので、焦らず治療を続ける必要があります。
(おわり)
張静先生は中国・河北省石家庄市の中医師です。『傷寒雑病論』の処方箋で様々な病気を治す若者実力派。本ブログでは彼女の症例を数多く翻訳しました。張静先生の診療所住所・電話番号などは以下の記事をご覧ください。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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