こんにちは。李哲です。
スタンフォード大学の博士、李宗恩中医師1の漢方薬治療例、腹部腫脹 – 當張仲景遇上史丹佛(2011.1.21 発表)を翻訳しました。紆余曲折ありの治療内容ですが、漢方薬など参考になると幸いです。
左肋骨下(脾臓のあたり)が張る症状、西洋医学は両手を上げた
女性、45歳。
体型は中。
数年前から左肋骨下(脾臓のあたり)が張る症状があります。見てる限り分からない程度。左肋骨下を押してもらうと楽になるけど、押した時に痛みがあります。
西洋医学は何回もCTスキャンしたけど、異常が見つかっていません。患者さんの気のせいだと診断したそうです。
この数年、彼女は以下のような症状があります。寝付きが悪くて途中覚醒する。午後はダルくて眠たい。口臭があり、舌は白で非常に分厚い。汗をかかない、寒がり。脈診では数・無力。
20年前に慢性腎炎になり、2つの子宮筋腫があって、3年前は初期乳がんだと言われ手術後に抗がん剤を受けました。
最初の漢方薬治療では変化なし
私は「脾臓の湿気を治せば半分以上は治るだろう」と思いました。しかし、3週間経ってもちっとも改善点がありません。舌苔すら変わってないのです。
この時、私は思いました。
湿気は脾臓の中にあるのではなくて、脾臓の外側にある。
附子粳米湯を試したら、1週間後の舌苔は少し良くなりました。
解決策を見つかった
再診察のとき、彼女が言うのは「肝臓のあたりが張ります。たまに左肋骨下も連動して一緒に張ります」
私は突然思い出しました。
陰陽の気がつながる所で問題が起きている。
つまり、『金匱要略』に書いてある症状です。
气分,心下坚,大如盘,边如旋杯,水饮所作,桂枝去芍药加麻黄附子细辛汤主之。
処方箋を変えました。
- 桂枝
- 炙甘草
- 生姜
- なつめ
- 麻黃
- 炮附子(加工したトリカブト)
- 細辛
1日の漢方薬だけで功を奏した
患者さんは1日分の漢方薬を飲んで言うのは、この数年初めて脇腹が張る感覚がなくなりました。
ところで、1日後はまた張る症状が戻り、3日目にはまた良くなりの繰り返しでした。でも、患者さんが言うのは「この数年いろんな漢方医と西洋医学の先生に診てもらったけど、初めて著しい変化がありました。」
現在、同じ処方箋で2周目の治療をしています。
李哲の感想と解釈
「桂枝去芍药加麻黄附子细辛湯」は「桂枝湯」から芍薬を削除し、プラス「麻黄附子細辛湯」。2000年前の処方箋なのに、現代の謎の病気を治せますね。残念なのは日本には既製品がないことです。
「桂枝去芍药加麻黄附子细辛湯」の症状は特別なもので、私は今まで診たことがないです。もし、鍼治療になる場合、わき腹を通る胆経と脾経がメインになるでしょう。たとえば陽陵泉、三陰交、支溝、陰陵泉…
わき腹の痛みを治す時、支溝・陽陵泉の効果は絶大です。以下は一つの鍼治療例、参考になると幸いです。
上記の女性患者には口臭と午後になるとダルい・眠い症状がありました。これも鍼治療もしくは足ツボ整体で治せます。過去記事があるので、どうぞご参考に。
▼口臭の原因は、湿熱証が多いです。
鍼治療例を書きながら説明した記事があるので、参考になると幸いです。
▼午後に眠くなる、ダルくなるのは脾臓・小腸の問題が多いです。足ツボ整体で治した例があるので、どうぞご覧ください。
(おわり)
李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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