こんにちは。李哲です。
鍼灸を知らない人の感想を見たことありました。
彼(彼女)たちは「鍼をいっぱい打ったほうが効果が高い」と思ったそうです。おそらく、同じ考え方を持っている方が多いでしょう。
私も数年前までは満遍なくツボに鍼をしたけど、勉強をすすめることでだいぶ変わりました。今日は自分の考え方で説明しようと思います。
先に良くある中国鍼の画像を転載します。
▼五十肩の治療なのか、よく分かりません。
これだけの鍼を刺すのもすごいと思います。受ける患者さんも痛そうだし、刺す先生も時間・労力がかかるでしょう。
▼肩こり、首こり、頭痛の治療でしょうか。
これだけの鍼を刺したら、腰痛・足の痛みまであったら、あと200本くらい追加するでしょう?
上記の2枚の鍼灸施術、患者さんの辛い症状が改善できるかも知れません。
ただし、数少ない鍼で同じ効果があるのに、これだけの鍼を刺すのは資源の浪費です。
鍼灸師として、どのツボで治ったかも分かりません。
昔の鍼灸の本には、たくさんのゴロが記載されています。
1個もしくは2~3個のツボで幅広い痛み・不調を治せます。たとえば有名な「四総穴歌」。以下で簡単に説明します。
- 「面口合谷収」
- 「腰背委中求」
- 「肚腹三里留」
- 「頭项尋列缺」
『乾坤生意』(明代・朱权 著)*1の「四総穴歌」より引用
直訳すると
- 顔と口の病気は合谷一つで収まる。
- 腰と背中の症状は委中一つを刺せば良い。
- お腹の病気は、足三里だけで良い。
- 頭と首の病気は、列缺を刺す。
臨床の例をあげます。
腰と背中がつるように痛い。もしくは重だるい時は委中一つで治せます。腰にハリネズミみたいに、鍼をたくさん刺す必要がありません。
下痢、便秘、胃痛、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食欲不振、腸閉塞…などのお腹のトラブルには、足三里が有効。重症でなければ、ほぼ足三里だけで改善できます。ほかの効能は以下の記事をご参考にしてください。
古代の鍼灸症例を見ると、基本的に2~3箇のツボで辛い症状を治しています。100本、200本刺すなんてありえない。
古代の鍼は、縫い針より太いですよ。
いくら効果があるとは言え、縫い針よりも太いのを100本刺すと言ったら、あなたは受け入れますか?多分50本刺したときに、ギブアップするか失神します。
現代の鍼はとても細くなり、昔の鍼みたいな強烈な刺激はありません。それでも、まったく無痛とは言えない。
鍼治療は基本的に痛いです。
現実にある痛みではなくて、響き。
中国語では「酸痛」(すっぱい痛みと言う)。
この響きを嫌がって鍼治療を止める方もいました。(女性はそうでもないですが、男性はなぜか怖がりで嫌がっていますね…)
1本1本でも響きで大変なのに、100本刺したら拷問ではないか?と私は思います。以下の記事に書いた女性患者さんも、同じ事を言ってました。
少ない鍼で同じ治療効果が出れば、受ける患者さんはストレスが少なくて、鍼灸師としてもどのツボで治ったかが把握できます。
ツボの効能が分かれば、さらに無駄な鍼が減るので患者さんが喜ぶでしょう。
▼以下は私の鍼治療の画像。
刺したのは肺兪、心兪、大ちゅう。(下から上への順番)
肩こり治療のツボは、大ちゅう一つのみです。肺兪と心兪は、睡眠障害を改善するため。
まだ鍼の本数が少ないとは言えないけど、なるべく減らすように努力しています。
アメリカの著名な鍼灸師:楊維傑先生には、心に響く言葉がありました。
「鍼灸治療は芸術だ。たくさんのツボで病気を治すのではなくて、一つのツボでいろんな病気を治すこと。」
これは私の目標でもあります。
*1:『乾坤生意』は明代1406年刻印された総合的な医書。内容は漢方薬、鍼灸、中医学理論など幅広い範囲でまとめた本です。
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