こんにちは。李哲です。
中国・河北省の有能な中医師:張静先生*1の治療例を翻訳しました。
中国語本文のリンク先は、多年的打嗝
(2019.6.25 発表)
長年のげっぷが治ったついでに、風を嫌がる症状も治った
患者は65歳の女性。
診療所に入った瞬間、彼女の顔色を見たら黄色と白が混ざっていました。
彼女が治療に来た原因は、長年のゲップ。いろんな薬を飲んだけど、治らなくて来たのです。
1回目の漢方薬でゲップが多いのは治った
一般的にゲップは2種類あります。
- 食後にゲップが出る。でも、しばらく経つと自然に治る。食べなければゲップが出ない。
- 風に当たるとゲップが出る。体に任意の部分が風に当たってもダメで、ゲップが起きます。
私は彼女に聞きました。
「みぞおちあたりを押すと辛いですか?」
「いいえ、押しても痛くないです。ただし、胃の中はなんとも言えない辛さがあります。」
彼女の脈診では、沈細。
胃のところを検査したけど、硬結はなかったです。ただし、跳ね返る感じがある。
ほかの問診では大丈夫でした。
大小便は正常、冷たい水でも熱い水でも飲める。
普段は寝転がっているのが好きだそうです、寝てるときが1番楽だから。
鍼したツボは、足三里、公孫。
漢方薬の処方は、附子(トリカブト)、乾姜、厚朴。
【▲乾姜の画像】
再診察の時、彼女のゲップは治ったけど脈診では変化がない、まだ風に当たると嫌な感じがするそうです。
処方箋:もとの処方+少量の桂枝。
漢方薬を飲んだあと、彼女は来ていません。
2回目の漢方薬で、風を嫌がる症状の治った
1ヶ月後、彼女の息子さんに会ったとき、お母さんの体調を聞きました。
息子さんが言うのは「母はだいぶ良くなりました。もう一度飲ませたかったですが、母は自分が治ったと思うから、なぜ飲む必要があるの?と疑っています。もう一度飲ませる必要がありますか?」
「お母さんは辛いところがなくて、風に当たっても嫌がらない、ゲップもなかったら、続けて治療する必要がありません。」
患者のゲップが多い原因は、胃と心臓に問題がある
彼女の脈は、典型的な少陰の脈です。
脈診から見ると、病気は少陰の段階にあります。しかし、風を嫌がる症状があるので、太陽の段階にも邪気がある。つまり、太陽と少陰、両方やられています。
彼女は風にやられたけど、ほかの激しい反応が出ていません。たとえば頭痛、鼻水。だから、彼女は風邪(ふうじゃ)にやられたと気づかないのです。
歳を取ると、心臓の陽気(エネルギー)が減ります。心臓の陽気(エネルギー)が脾臓に輸送されるのを、中医学では「火生土」と言います。
ご飯を食べたあと、脾胃はたくさんのエネルギーで消化しないといけません。陽気(エネルギー)が足りないと、胃の粛降作用ができないので、気が逆流してゲップが出ます。
処方箋の解釈
- 附子(トリカブト)と乾姜で心臓を強化
- 厚朴で食べ物が降りてくるようにする
- 桂枝で風邪(ふうじゃ)を追い出す
だから、最終的には完治したのです。
【▲附子の画像】
彼女みたいな状況は、比較的に多いです。
早期の胃の病気は、先に心臓を強化する必要があります。たとえ著しく心臓が痛い、胸が苦しいなどの症状がなくても着手する。
五臓六腑のバランスが取れれば、たくさんの病気も自然に治ります。
著しくない症状でも、無視してはいけない
以前、研修会に参加し、蔡長友先生の講義を2日聞いたことがありました。
蔡長友先生が言うのは、たくさんの症状は著しくないので無視されがちです。たとえば風を嫌がる症状。長い間治ってないとき、風邪(ふうじゃ)携帯者と呼びます。
私が彼女を治す時、内蔵のバランスさえ取れれば、風を嫌がる症状が自然に治ると思いました。しかし、かなり長い間治ってないので、専門的の生薬を使わないといけない。
もし、最初から桂枝を入れとけば、2回めの治療も要らないかも知れません。今後、患者の著しくない症状でも、無視してはいけないと思いました。
【▲桂枝の画像】
李哲の解釈と感想
未病を治す意味、また現れています
- 早期の胃の不調は、先に心臓を強化する。
- 風を嫌がる人を、「風邪(ふうじゃ)」携帯者だと呼ぶ
典型的な中医学の「未病を治す」考え方です。
ほかの人は風に当たっても涼しくて気持ちいいと言うのに、自分だけはゾワゾワして嫌だ。これは、あなたの体に異常があるからです。
体に不調が起きたとき、必ず細かい自覚症状として現れます。中医学はその繊細な自覚症状の変化を追跡し、どの内臓・経絡に問題があるのかを分析する医学。
病気が芽の段階で解決すれば、後々の大きな病気にもなりません。中医学こそ本物の予防医学だと言える原因は、これです。
風邪(ふうじゃ)の携帯者は、早めに治療したほうがいい
上記の説明に、もう一つ加えます。
風邪(ふうじゃ)は、一般的に皮膚から浸透して入ってきます。
皮膚の下には、筋肉があり、筋肉を通過して入ると内臓、骨など1番深いところまで入ります。
中医学では形がある組織を分析するのではなくて、機能的なもので病状を分析します。そして、著名な「六経弁証理論」が生まれました。東漢(三国時代が始まる前)の張仲景が書いたもの。以下の記事で、詳しく説明しているので、参考になると幸いです。
一般的に風邪(ふうじゃ)にやられたら、皆さんも知っている風邪(かぜ)です。
頭痛、鼻水、発熱、くしゃみ、全身の筋肉痛、食欲不振…などの症状が現れます。
しかし、体力がない・免疫が落ちたとき、激しい反応が出ません。時間が経つと、風邪(ふうじゃ)は隠れてしまいます。患者も激しい反応が出ないけど、なんとか体調悪くなります。たとえば、なんとなく体が重い、だるい。扇風機・冷房の風を嫌がる。
このときに、漢方薬もしくは鍼灸で治せば、完全に病気の根本を切ることができます。病院の薬で治すと、風邪(ふうじゃ)が外に追い出されるところか、はどんどん深い内臓に隠れてしまい、もっと重い病気の元にもなります。
以下は新型肺炎(新型コロナ)を治した河南省通許県人民医院の顧問:楊貞先生の症例。漢方薬を3日飲んで、寒がり・風に当たると嫌な感じは消えました。参考になると幸いです。
ゲップが多いのは、鍼でも治せる
以前、私の親族が日本に来た時、長い間の鍼治療記録があります。その中に、おばあちゃんの症状がゲップです。ちょっとした冷たい水を飲んでもゲップが出たけど、鍼治療してからはゲップがかなり減りました。
以下の記事、どうぞご覧ください。
◆食べ物の味がしない、お腹が張るのを2週間で治した漢方薬症例
◆胃が気持ち悪くなり、違和感があって重だるいのを鍼1回で治した例
◆史上最強の胃痛、口の中が酸っぱい、胸焼けをその場で改善した例
◆お腹が張るのは治り、鍼した夜はとても良く寝れる:手術後の生理痛(13)
*1:張静先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。
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