こんにちは李哲です。
倪海厦(ニハイシャ)先生1の弟子:趙先生の治療例、甲狀腺機能亢進を翻訳しました。甲状腺機能亢進症で甲状腺が7~8cm腫れたのが2ヶ月半で半分以下になった例です。
バセドウ病の漢方薬治療例は、もう一つあるので貼っておきます。参考になると幸いです。
甲状腺が7cm腫れて、甲状腺機能亢進症だと診断された女性
患者さんは温さん、女性、23歳、痩せ型。初診日は1997年4月5日。
来診原因:
- バセドー病で甲状腺が幅7~8cm、厚さ1cmくらい腫れている
- 動悸がする
(趙先生の独り言:西洋医学の診断では、甲状腺機能亢進症。つまり、バセドウ病。西洋薬を1ヶ月飲んだけど、今は友人の紹介で漢方薬を飲み始め、西洋薬を止めています。)

問診内容は以下の通り。
- 睡眠と食欲はまだ良い
- 大便は1日1~2回、先に硬いのが出て後は柔らかい
- 尿の色は、少し濃い黄色
- 喉は渇く、冷たい水が飲みたがる
- 汗は出やすい
- 手は温かい、額は熱い。普段は暑がり
- 足は温かい
- 疲労感ある
- 生理の周期は正常、腰は重だるくない
患者さんのお母さん「漢方薬をいつまで飲めばいいですか?」
私「西洋薬は何年で治ると言ってました?」
患者さんのお母さん 「2年です。」
私「漢方薬は1年9ヶ月!」
西洋薬より3ヶ月早いから、文句も無いだろうと思いましたが、患者さんのお母さんは顔をしかめてました。
私「煎じ薬は治りがもっと速いです。でも、自腹になります。」
患者さん「普段は仕事しているから煎じ薬は不便です。」
私は思いました。
すべて言い訳!患者さんは煎じ薬がまずいし自腹だから、保険が効く粉薬にしたがるだろう。粉薬でダメだったら、また煎じ薬を考えれば良い。
ニハイシャ先生は治せない13種類の患者を書いたことがあります。上記の患者は、その中の一つに当てはまります。どんな13種類の人なのか、以下の記事をご覧ください。
漢方治療で起きた変化と処方箋の内容
中医学の診断と処方箋
脈診:細数。
舌診:淡黄湿。
望診:目玉が少し出っ張っている。
眼診:無(趙先生の独り言:5月中旬にアメリカに行って研修するので、その時は学びたい)
診断:体内湿熱、心臓の陽気が足りない。
処方箋:
消瘰丸をアレンジしたもの、3x6p.c、食後に飲む。
(趙先生の独り言:ニハイシャ先生がよく使う処方箋を忘れて本当にヤバイ。患者さんが帰ったあと調べてたら、散☓☓☓湯若しくは桂枝甘草湯のアレンジでした。)
「辛いものと冷たいもの、刺激的な飲み物は避ける。夜更かししないで下さい」と患者さんに教えました。
喉が渇く、体が熱いのが減った
●1997年4月12日。
2回めの診察。
夜は悪夢が多くて、心臓の動悸がまだある。
処方箋は消瘰丸に、散☓☓☓湯のアレンジしたのを追加。3×9p.c
●1997年4月22日。
3回目の診察。
喉の渇き・暑がりは減って、大便は少し硬くなりました。
処方箋は前回と同じ。
動悸・甲状腺の腫れは変わらない
●1997年5月3日。
4回目の診察。
動悸がまだある、測ってみたら1分に心臓が92回動きました。処方箋は桂枝甘草湯に、散☓☓☓湯のアレンジしたのを追加。3×9p.c
●1997年5月10日。
5回目の診察。
動悸は変わらない。
心臓の拍動は1分間に93回。
甲状腺の腫れは相変わらず。
処方箋は生脈散+散☓☓☓湯のアレンジしたもの。3×9p.c
(趙先生の独り言:5月18日に研修に行くので、早めに来て漢方薬をもらっても良いと教えました。)
●1997年5月17日。
6回目の診察。
この2日鼻づまり、くしゃみ、鼻水が出て、喉には痰がある感じ。
(趙先生の独り言:甲状腺の腫れは少し引いたけど、患者さんは気づいてないですね。)
処方箋は炙甘草湯+風邪の漢方薬+散☓☓☓湯のアレンジしたもの+柴胡+半夏。3×9p.c
(趙先生の独り言:甲状腺は三焦の属しているので、柴胡と半夏を入れました。)
2ヶ月半後、甲状腺の腫れは半分以下の3~3.5cmまで縮小した
●1997年6月21日。
7回目の診察。
鼻づまり、くしゃみ、鼻水はなくなり、喉にはまだ痰がある感じ。甲状腺を見たら幅3~3.5cm、厚さは0.5cmまで縮小。今度は患者さんも「だいぶ良くなった」と言ってました。
そして、彼女は一つ不思議な症状があるそうです。5月17日の処方箋を飲んで風邪は治ったけど、5月10日にもらって余った漢方薬を飲んだら皮膚が痒くなる。彼女の目をよく見たら、肝臓と腎臓は大丈夫でした。
私「5月17日の処方箋を飲むと痒くなりますか?」
彼女「いいえ。」
私「5月10日の処方箋を飲んで17日前まで、痒くなってますか?」
彼女「いいえ。」
私「5月10日の漢方薬は全部飲みきったのですか?」
彼女「先生が研修に行くので、毎日飲み続けてました。毎回痒くなるけど、湿疹が出るほどでもない。そして、5月17日の処方箋も飲みきりました。でも、その時は痒くなってない。」
話を聞いて、急に分かりました。
中の病気が表に出る症状。
(趙先生の独り言:ニハイシャ先生がいう最後の一歩、「太陽症」です。)
処方箋は、前回と同じ。
氷水と夜更かしが原因で、病気が少し戻った
●1997年7月2日。
8回目の診察。
睡眠と食後はまだ良い。
大便は1日1回。たまに硬くなったり柔らかくなったり。
喉は渇く、冷たい水が飲みたがる。
汗は出やすい。
手は温かく額は熱い、身体が暑がり。
足は温かい。
生理は7月2日に来て、生理中にお腹が少し痛かった。
心臓の拍動は、1分間に93回。
舌診:舌根部は舌苔が白。
(趙先生の独り言:ニハイシャ先生から聞いたけど、舌根部は上焦)
甲状腺は4~4.5cm、厚さは0.5cmくらいに戻りました。
私「氷水は飲みますか?」
患者「最近熱いのでよく飲みます。」
私「夜は何時に寝ていますか?」
彼女「1時に寝ています。」
私「なんで同じ漢方薬を飲んでいるのに、悪化したかを知っていますか?」
彼女「いいえ、分かりません。」
私「あなたが氷水を飲んで、夜更かしをするからです。早めに治したいなら、生活習慣を変えないといけません。今後もし風邪を引いたら、必ず中医学の治療を受けなさい。西洋医学の治療を受けると、表の風邪が体内に閉じ込められて、胃腸と肝腎も傷つけてあなたの病気は悪化します!」
今回の治療で得た教訓と勉強
この患者さんの治療例で、私は以下のものが分かりました。
1.バセドウ病の一部は、表の風邪が体内に入ったか、もしくは同時に体内と体外が病気になった時の症状です。
以前はちゃんと治せなかったので、この現象が分からなかったけど、今度はニハイシャ先生のお陰で分かるようになりました。
2.研修に来れなかった学生さんも分かりますが、正しい医学を習えば研修に来れなくても病気が治せます。
3.粉薬の発明は、良い事だとは思わない。
便利は便利ですが、早めに病気を治すことができない。
これで皆さんは、漢方は効き目が遅いと勘違いするのです。
4.中医学の治療は、いろんな要素を考えないといけません。
この患者さんみたいに、飲食生活習慣は完治できるかどうかを決めます。中医学の寒熱の概念は、再びその大事さが検証されました。
5.この治療例で、私は「鹵能軟堅」の意味深さが分かりました。
神農本草経2に書いた文字は、本当に名言です。
弟子 趙医師 敬書
倪海厦(ニハイシャ)先生の評論
趙医師は非常に謙虚な先生です。経方の未知に進んでから、病気を治す考え方が変わり、読者の皆さんもご存知のように彼はレベルアップしています。将来はきっと地方の有名な中医師になるでしょう。
我々チームにはたくさんの人材がいて、本当に嬉しいです。
李哲の感想
甲状腺の病気になった人は、以下の記事を読んでください。あなたの病気は薬で作られたもの、自然の中には存在しない病気です。
甲状腺疾患の原因は、心臓にあります。
だから、不眠症.動悸などの症状がある。
上の患者さんは手足がまだ冷たくなかったので、心臓の回復が早かったでしょう。もし、手足が氷みたいに冷たかったら、またトリカブトなどの登場でしょうね。
鍼灸の場合は、動悸を治す有力なセットは内関+公孫。あとは、心兪も必要です。心拍数がとても早い人は、神門が効果的。(当たり前ですが、ちゃんと刺せなかったら、もちろん効果が減ります)
以下は心拍数が早くなって、かゆい湿疹が出たのを鍼で治した例。参考になると幸いです。
以前、心房細動で心拍数がすごく速い方を治療した事がありますが、当時の腕が足りなくて治療が中止になりました。とても悔しかったです。
今は同じ悔しみがないように、毎日勉強を続けています。
昔大好きだったジェット・リー(李連杰)は現在、バセドウ病ですごい顔の形まで変わって、苦しんでいるそうです。
本当にお気の毒です。西洋医学の治療より、中医学治療の方が優れているのに。有能は漢方医.鍼灸医に出逢える事を祈ります。
(おわり)
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
↩︎『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)は、中国最古の薬物学書で、後漢から三国時代にかけて成立したとされています12。この書物は、古代中国の伝説的な皇帝である神農氏に由来し、彼が草木の薬効を調べたという伝説に基づいています。
『神農本草経』には、365種類の薬物が収録されており、これらは上品(じょうひん)、中品(ちゅうひん)、下品(げひん)の三つに分類されています。上品は無毒で長期服用が可能な養命薬、中品は毒にもなり得る養性薬、下品は毒が強く長期服用が不可能な治病薬とされています。
この書物は、後の時代に陶弘景(とうこうけい)によって注釈が加えられ、さらに内容が増補されました。現在では、敦煌写本や『太平御覧』への引用などを通じてその内容が伝えられています。
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