【※本記事は2020-09-17更新しました】
こんにちは。李哲です。
倪海厦(ニハイシャ)先生の弟子:趙先生の治療例を翻訳しました。甲状腺機能亢進症で甲状腺が7~8cm腫れたのが2ヶ月半で半分以下になった例です。
バセドウ病の漢方薬治療例は、もう一つあるので貼っておきます。参考になると幸いです。
中国語本文のリンク先は、甲狀腺機能亢進
甲状腺が7cm腫れて、甲状腺機能亢進症だと診断された女性
患者さんは温さん、女性、23歳、痩せ型。
初診日は、1997年4月5日。
来診原因:
- バセドー病で甲状腺が幅7~8cm、厚さ1cmくらい腫れている
- 動悸がする
(趙先生の独り言:西洋医学の診断では、甲状腺機能亢進症。つまり、バセドウ病。西洋薬を1ヶ月飲んだけど、今は友人の紹介で漢方薬を飲み始め、西洋薬を止めています。)
問診内容は以下の通り。
- 睡眠と食欲はまだ良い
- 大便は1日1~2回、先に硬いのが出て後は柔らかい
- 尿の色は、少し濃い黄色
- 喉は渇く、冷たい水が飲みたがる
- 汗は出やすい
- 手は温かい、額は熱い。普段は暑がり
- 足は温かい
- 疲労感ある
- 生理の周期は正常、腰は重だるくない
患者さんのお母さんには、「漢方薬をいつまで飲めばいいですか?」と聞かれました。
私は逆に質問しました。
「西洋薬は何年で治ると言ってました?」
「2年です。」
私は答えました。
「漢方薬は1年9ヶ月。」
西洋薬より3ヶ月早いから、文句も無いだろうと思いましたが、患者さんのお母さんは顔をしかめてました。
私はすぐ強調しました。
「煎じ薬は治りがもっと速いです。でも、自腹になります。」
患者さんが言うのは、「普段は仕事しているから煎じ薬は不便です。」
私は思いました。
すべて言い訳!
患者さんは煎じ薬がまずいし自腹だから、保険が効く粉薬にしたがるだろう。粉薬でダメだったら、また煎じ薬を考えれば良い。
ニハイシャ先生は、治せない13種類の患者を書いたことがあります。上記の患者は、その中の一つに当てはまります。
どんな13種類の人なのか、以下の記事をご覧ください。
漢方治療で起きた変化と処方箋の内容
中医学の診断と処方箋
脈診:細数。
舌診:淡黄湿。
望診:目玉が少し出っ張っている。
眼診:無(趙先生の独り言:5月中旬にアメリカに行って研修するので、その時は学びたい)
診断:体内湿熱、心臓の陽気が足りない。
処方箋:
消瘰丸の加減、3x6p.c、食後に飲む。
(趙先生の独り言:ニハイシャ先生がよく使う処方箋を忘れて本当にヤバイ。患者さんが帰ったあと調べてたら、散☓☓☓湯若しくは桂枝甘草湯のアレンジでした。)
「辛いものと冷たいもの、刺激的な飲み物は避ける。夜更かししないで下さい」と患者さんに教えました。
喉が渇く、体が熱いのが減った
●1997年4月12日。
2回めの診察。
夜は悪夢が多くて、心臓の動悸がまだある。
処方箋は消瘰丸に、散☓☓☓湯のアレンジしたのを追加。
3×9p.c
動悸、息切れは鍼治療でも良い効果があります。
以下の記事、どうぞご参考に。
●1997年4月22日。
3回目の診察。
喉の渇き・暑がりは減って、大便は少し硬くなりました。
処方箋は前回と同じ。
動悸・甲状腺の腫れは変わらない
●1997年5月3日。
4回目の診察。
動悸がまだある、測ってみたら1分に心臓が92回動きました。
処方箋は桂枝甘草湯に、散☓☓☓湯のアレンジしたのを追加。
3×9p.c
●1997年5月10日。
5回目の診察。
動悸は変わらない。
心臓の拍動は1分間に93回。
甲状腺の腫れは相変わらず。
処方箋は生脈散+散☓☓☓湯のアレンジしたもの。
3×9p.c
(趙先生の独り言:5月18日に研修に行くので、早めに来て漢方薬をもらっても良いと教えました。)
●1997年5月17日。
6回目の診察。
この2日鼻づまり、くしゃみ、鼻水が出て、喉には痰がある感じ。
(趙先生の独り言:甲状腺の腫れは少し引いたけど、患者さんは気づいてないですね。)
処方箋は炙甘草湯+風邪の漢方薬+散☓☓☓湯のアレンジしたもの+柴胡+半夏。
3×9p.c
(趙先生の独り言:甲状腺は三焦の属しているので、柴胡と半夏を入れました。)
2ヶ月半後、甲状腺の腫れは半分以下の3~3.5cmまで縮小した
●1997年6月21日。
7回目の診察。
鼻づまり、くしゃみ、鼻水はなくなり、喉にはまだ痰がある感じ。
甲状腺を見たら、幅3~3.5cm、厚さは0.5cmまで縮小。
今度は、患者さんも「だいぶ良くなった」と言ってました。
そして、彼女は一つ不思議な症状があるそうです。5月17日の処方箋を飲んで風邪は治ったけど、5月10日にもらって余った漢方薬を飲んだら皮膚が痒くなる。
彼女の目をよく見たら、肝臓と腎臓は大丈夫でした。
私「5月17日の処方箋を飲むと痒くなりますか?」
彼女「いいえ。」
私「5月10日の処方箋を飲んで17日前まで、痒くなってますか?」
彼女「いいえ。」
私「5月10日の漢方薬は全部飲みきったのですか?」
彼女「先生が研修に行くので、毎日飲み続けてました。毎回痒くなるけど、湿疹が出るほどでもない。そして、5月17日の処方箋も飲みきりました。でも、その時は痒くなってない。」
話を聞いて、急に分かりました。
中の病気が表に出る症状。
(趙先生の独り言:ニハイシャ先生がいう最後の一歩、「太陽症」です。)
処方箋は、前回と同じ。
「太陽症」に関する簡単な説明は、以下の記事が参考になります。
氷水と夜更かしが原因で、病気が少し戻った
●1997年7月2日。
8回目の診察。
睡眠と食後はまだ良い。
大便は1日1回。たまに硬くなったり柔らかくなったり。
喉は渇く、冷たい水が飲みたがる。
汗は出やすい。
手は温かく額は熱い、身体が暑がり。
足は温かい。
生理は7月2日に来て、生理中にお腹が少し痛かった。
心臓の拍動は、1分間に93回。
舌診:舌根部は舌苔が白。
(趙先生の独り言:ニハイシャ先生から聞いたけど、舌根部は上焦)
甲状腺は4~4.5cm、厚さは0.5cmくらいに戻りました。
「氷水は飲みますか?」
「最近熱いのでよく飲みます。」
私「夜は何時に寝ていますか?」
彼女「1時に寝ています。」
私「なんで同じ漢方薬を飲んでいるのに、また腫れてきたかを知っていますか?」
彼女「いいえ、分かりません。」
私「あなたが氷水を飲んで、夜更かしをするからです。早めに治したいなら、生活習慣を変えないといけません。今後もし風邪を引いたら、必ず中医学の治療を受けなさい。
西洋医学の治療を受けると、表の風邪が体内に閉じ込められて、胃腸と肝腎も傷つけてあなたの病気は悪化します!」
風邪を治す漢方薬は様々な種類があります。なんでもかんでも「葛根湯」ではありません。以下の記事で詳しく説明しているので、どうぞご参考に。
今回の治療で得た教訓と勉強
この患者さんの治療例で、私は以下のものが分かりました。
1.バセドウ病の一部は、表の風邪が体内に入ったか若しくは同時に体内と体外が病気になった時の症状です。
以前はちゃんと治せなかったので、この現象が分からなかったけど、今度はニハイシャ先生のお陰で分かるようになりました。
2.研修に来れなかった学生さんも分かりますが、正しい医学を習えば研修に来れなくても病気が治せます。
3.粉薬の発明は、良い事だとは思わない。
便利は便利ですが、早めに病気を治すことができない。
これで皆さんは、漢方は効き目が遅いと勘違いするのです。
私自身の経歴で、漢方薬の効果は遅いという人たちの考えを述べました。詳しくは以下の記事をご覧ください。
4.中医学の治療は、いろんな要素を考えないといけません。
この患者さんみたいに、飲食生活習慣は完治できるかどうかを決めます。
中医学の寒熱の概念は、再びその大事さが検証されました。
5.この治療例で、私は「鹵能軟堅」の意味深さが分かりました。
神農本草経に書いた文字は、本当に名言です。
弟子 趙医師 敬書
倪海厦(ニハイシャ)先生の評論
趙医師は非常に謙虚な先生です。
経方の未知に進んでから、病気を治す考え方が変わり、読者の皆さんもご存知のように彼はレベルアップしています。
将来はきっと地方の有名な中医師になるでしょう。
我々チームにはたくさんの人材がいて、本当に嬉しいです。
李哲の感想
甲状腺の病気になった人は、以下の記事を読んでください。
あなたの病気は薬で作られたもの、自然の中には存在しない病気です。
甲状腺疾患の原因は、心臓にあります。
だから、不眠症.動悸などの症状がある。
上の患者さんは手足がまだ冷たくなかったので、心臓の回復が早かったでしょう。
もし、手足が氷みたいに冷たかったら、またトリカブトなどの登場でしょうね。
鍼灸の場合は、動悸を治す有力なセットは内関+公孫。あとは、心兪も必要です。
心拍数がとても早い人は、神門が効果的。
(当たり前ですが、ちゃんと刺せなかったら、もちろん効果が減ります)
以下は心拍数が早くなって、かゆい湿疹が出たのを鍼で治した例。参考になると幸いです。
以前、心房細動で心拍数がすごく速い方を治療した事がありますが、当時の腕が足りなくて治療が中止になりました。とても悔しかったです。
今は同じ悔しみがないように、毎日勉強を続けています。
昔大好きだったジェット・リー(李連杰)は現在、バセドウ病ですごい顔の形まで変わって、苦しんでいるそうです。
本当にお気の毒です。
西洋医学の治療より、中医学治療の方が優れているのに。
有能は漢方医.鍼灸医に出逢える事を祈ります。
コメント