人工知能(AI)が鍼灸治療できない理由

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人工知能(AI)が、鍼灸師の代わりになるのか?

こんにちは。李哲です。

今はスマホに人工知能(AI)チップが入り、家電製品にも人工知能(AI)が導入されつつあります。数年後には当たり前のように、全ての商品・サービスに入るでしょう。

1年前、囲碁で「地球最強」だと言われた選手が、グーグルのAI『AlphaGo』に負けました。AIは人間みたいな思考はできないけど、ビックデータで最適の選択肢ができるのが強みだと思います。

あとは、人間みたいに気分に左右されないのでミスしない。電力供給が落ちない限り作動する。人間は腹ペコだと脳の働きが遅くなり、ミスも増えます。

囲碁は最強の頭脳運動だと言われていますが、囲碁で負けたらほかの業界はどうなるだろう?と私は思ったことがありました。

たとえば医療現場。
西洋医学ではすでに手術支援ロボットがあります。まあ、今のところは内臓が陰部から垂れて出てきたり、トラブルだらけですけど…詳しいのは過去記事をご覧ください。

ロボット鍼灸師が現れる時代が来るのか?

私の考え方は、まだ無理。
以下でその理由を述べます。

鍼灸治療が効くのは、「ツボ」に施術をするから

ビッグデータで針灸の仕組みが分かって、鍼灸師みたいに鍼治療ができるのか?

これを討論する前に、鍼灸は「なぜ効くのか?」を分析する必要があります。

鍼治療は経絡とツボをもとにしているので、一番最初にツボを話さないといけません。以下では、鍼治療の効果を出すためのツボに関して討論します。

1.施術には、ツボ(正穴)の選別が必要

体全身は経絡が隙間なく包んでいて、ツボは経絡の要塞。大事な要塞を制覇すれば、全部の経絡を制覇できて、体の運営状況をコントロールできる。これは戦争でも同じ原理です。

ツボは大昔から記録されていて、概ね365個があると言われています。これは経絡の上にある、正式に記載されているもので、「正穴」だとも言います。ちなみに、一般的に見かけるツボ人形にプリンターされているのは、「正穴」です。

市販のツボ人形に印刷されたのは、ほとんど「正穴」です
市販のツボ人形に印刷されたのは、ほとんど「正穴」です

2.通常の「正穴」以外に、また「奇穴」がある

「奇穴」というのは、正穴以外に後世の鍼灸医たちが見つけたツボ。経絡に属しているツボではないので、正穴みたいに繋がっている経絡を治すことができません。

ただし、奇穴は特定な病気に効果バツグン。例えば胆嚢点、盲腸(虫垂)点など、その効果は一撃必殺。刺した瞬間から、お腹の痛みが緩和し始めます。以下は一つの鍼治療例。

3.病状によっては、ツボの位置が移動する

一般的に正穴・奇穴は、位置が決まっています。ただし、病状によってはツボが移転する時がある。

正穴・奇穴を治療して効果がない場合、経絡にそって圧痛点を探す方法があります。圧痛点を探してそこに針をすると、予想外の効果が出るというケースは多々あります。

これは鍼灸師の指で探るので、鍼灸師の指の感覚が鈍いとダメですね。

3.ツボを決めたあとは、適切な鍼の道具を選ぶ

基本的な鍼は2種類あります。

刺す用と刺絡用。
どちらにせよ、太さ・長さを選ぶ必要があります。

例えば細い人には、あまり太い鍼を使わない。キン肉マン、太っている人には、太い針を使う。どの鍼を使って良いかは、鍼灸医の経験によります。もっとも大事なのは、実際に刺してみてから決めることです。

痩せ型の人なのに、太い鍼じゃないと気が動かない。このような例外があるから。臨床では患者さんの反応、報告からどんな鍼が良いかを判断します。

刺絡療法に関しては、過去記事を参照してください。

4.ツボは時間帯によっても、効果が変わる

鍼灸には五兪穴(井栄兪経合)があり、陰陽五行説にも対応。1日も陰陽五行説で『木火土金水』に分かれているので、五兪穴とペアになります。

たとえば夜中に治療に来た場合は「井穴」を使う。午前中は「栄穴」を使う。お昼ごろに来たときは、「兪穴」を使います。

5.ツボは刺すだけでは効果がない、得気(とっき)が必要

黄帝内経こうていだいけい・九針十二原』の原文は、「刺之要、気至而有効」。

直訳すると針治療を有効にする要点は、気が至る・気が来ること。気が至るのを、得気(とっき)だと言います。

「得気(とっき)」は鍼灸の特有な現象で、鍼した所にしびれ、電気が走る感じ、重くなる、熱くなる、冷たくなるなどの感覚。具体的にどんな感覚かは、患者さんしか分かりません。

臨床で見ると患者さんの最も多く表現しているのは、「響く!痛い!!!」。

この独特な痛みで1回切りで来なくなった患者さんも多いです。中国鍼が痛い(響く)のは当たり前。痛くない鍼で病気が治るなら、私も習いたい。 を書いたのも私の心境を表したものです。

鍼灸医は患者さんの感覚がわからないけど、指の感覚で気を探知できます。赤ちゃん・意識不明状態の人は話せないので、鍼灸医が自分で得気(とっき)しているかどうかを判断するしかないです。

この時、頼るのは鍼灸師の指先の感覚。

鍼灸治療の特徴に関しては、もう一つ過去記事が参考になるのでご覧ください。

鍼灸治療の特徴:緊急救命が得意で効果がある以外、滋養強壮の作用もある。 | 本場の中国鍼 李哲鍼灸院のブログ

人工知能(AI)が鍼治療するための必須条件

以上では鍼治療の経絡・ツボ、施術の道具などを説明しました。

人工知能がクリアしないといけないのは、最低でも以下のとおりです。

①鍼治療の様々な原理(治療法則)を熟練に操り、いろんな組み合わせで最大の効果を出す。

②患者さんの症状によって、ツボを選別する。

ツボは3種類あるので、臨機応変が必要。

③適切な道具を選ぶ。

患者さんの施術後の反応によって、道具を換える必要がある。

人間の指みたいに、繊細な感覚センサが必要。

特に④は、今の時代というか100年後にも実現が難しいと思います。

人間の触る感覚で、一番繊細なのは指です。
指の感覚センサのマネができるなら、人間も作れると思いますね。

AIのせいでリストラされたら、鍼灸師より西洋医学の仕事が先

余談話ですが、ついでに西洋医学を話します。

西洋医学は今のところ、まだマルチ思考になっていません。たとえば、肺炎の治療にはこの薬。あの薬は〇〇病に適している。ほとんど1対1の関係です。

漢方薬みたいに、〇〇病も治せて▲▲病も治せるのはありません。漢方薬の異病同治の例としては、以下の記事をご覧ください。

鍼灸のツボも、様々な効果があります。一つのツボがたくさんの効能を持っているのは、内臓とつながり、ほかの経絡ともつながっているからです。

以下、皆さんがよく知っている「三陰交」を例としてあげます。

三陰交が治せる主な病気:

  1. すべての婦人科疾患(生理不順、不妊症、子宮筋腫、チョコレート嚢腫、子宮がん、子宮頸がん、生理痛、突然の閉経、難産、産後うつ病…)
  2. 糖尿病
  3. 腎臓のすべての病気(腎炎、腎盂炎、腎臓がん…)
  4. ED(ぼっき不全)
  5. 早漏(そうろう)
  6. 寝違いしやすい
  7. お腹が張る
  8. 不眠症
  9. 腰の骨が痛い
  10. 疝気(腸、睾丸がそけい部に垂れて挟まれ、痛みが生じる病気)
  11. 三叉神経痛
  12. すべての皮膚病(湿疹、痒み、乾癬、アトピー肌、ニキビ…)
  13. 梅核気(慢性的な喉の炎症)
  14. 足の踵の痛み
  15. 腎臓の強烈な痛み

良心的な話を聞かせてください。
以上の病名、病院の治療薬だったら何種類で足りますか?

ツボは一つだけで全部治せるのです。
以下は一つの症例、参考になると幸いです。

西洋医学は1対1の関係なので、ビッグデータがあれば様々な分析ができます。血液検査・尿検査・MRI画像診断などの結果で、どんな病気の確率が高いのか?臨床検証データに基づいて、どの薬が最適なのか?どのような手術をすれば、一番リスクが少ないのか?など。

人工知能(AI)が病院の先生になるのは、十分ありえる話です。

そのとき、病院の先生に残るのは「ふれあい」と「癒し」?

いまだって、西洋医学の先生にできるのは、これだけじゃないですか? これ以外に、なにが「治癒」できますか?

アメリカの漢方医、鄭智城先生1は以下の症例で、西洋医学の先生は薬局の店員さんと同じだと揶揄していました。また、記事中の患者さんは科学者の奥さんにも文句を言ってました。治せないゴミを作ったのはあなた達!

AIが鍼治療できるのは、まだ300年以後のこと!

今のところ、テクノロジーでは気の正体が分からない、ツボの選択ができない。最も実現が難しいのは、人間の指先の感覚を真似すること。 

以上で説明したツボは、施術のときに使うものです。

ほかにまだ説明してないのは、施術する前の診断。患者の顔色、声、におい、脈診、触診、問診を通じて、どの内臓・経絡に問題であるのかを判断。その後に、ツボの選択をするのです。

ということは、鍼灸医は五感中の4感(嗅覚、視覚、触覚、聴覚)を利用し、総合的に診断します。単なる情報では、正確な判断に欠ける時があるから。

指の繊細な感覚も再生できないのに、人間の五感を真似するのは更に無理でしょう。

だから、私は100年経っても人工知能(AI)は鍼治療ができないと言ったのです。  ただし、テクノロジーが発展するのが日進月歩で、実現できないと断言はできないです。300年後には実現できるかも知れません。

でも、この記事を読んだ人は、その日を見ることができませんね(笑) 

2024-12-13追記

huaweiがAI市場に参入してから、中医学にも手を出したそうです。少なくとも今は脈診機械(AI)を出した動画が流出しています。動画を見ている限り、本当化どうか、正確率がどれくらいあるのか分かりません。ただし、huaweiの実力からすると、中医学領域に踏み出すのは難しくないです。

スタンフォード大学の博士、李宗恩中医師2も言ったけど、人工知能にとって大事なのは良質なビックデータ。良質なデータであれば、AIは一般中医師よりも正確な処方せんが出せる。

鍼は人間の感覚(触覚、嗅覚、視覚など)を真似する必要があるので、どうですかね…やはり300年はかかりそうです(笑)

以下はファーウェイのニュース、参考になると幸いです。

ファーウェイ、AIを活用した精密医療を促進する医療技術デジタル化2.0ソリューションを発表 | Huaweiのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー

(おわり)

  1. 鄭智城先生はアメリカで開業している漢方医。様々な面白い症例があったので、翻訳させていただきました。人物紹介と診療所情報は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外)をご覧ください。

    ↩︎
  2. 李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)

    ↩︎

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