こんにちは、李哲です。
スタンフォード大学の博士、李宗恩中医師1の漢方薬治療例、ADHD (注意力不足過動症) – 當張仲景遇上史丹佛(2012.12.1 発表)を翻訳しました。ADHDの諸症状が漢方薬3ヶ月で治った例。
ADHDだと診断された子供は多いと思いますが、西洋薬では収めるだけで根治ができません。漢方薬はとても良い選択肢なので、ぜひ治療方法として考えてください。
集中力がなくて興奮ぎみ、情緒不安定、自殺したがるADHD患者さん
女の子、14歳。
中国人と白人のハーフです。
西洋医学の診断書は「ADHD」。
西洋薬の治療をしてから6年も経っています。
初診は2012.6.22
主訴:
ADHD。
集中力がない。
学校に行かないときは興奮するけど、学校に行くと違う人になる。1ヶ月に1回うつの傾向があり、自殺したがる。
レジで会計もしくはメニューの注文ができない。今は人前で話すのもダメ。前はこんな問題がなかったそうです。アレルギーがあり、唇がすごい赤くなる。
以下は問診内容です。
1.寒熱:手足は冷たくて体が熱い。
2.睡眠:不眠症で寝付きが悪い。10時半に寝て12時~12時半は寝れるけど1時~2時には目が覚める。朝起きたときは、まったく力がない。たくさん寝ても倦怠感が強い。
3.食欲:消化不良。
4.口渇:あまり水を飲みたがらない。
5.大便:3日に1回。
6.小便:量が少なくて、褐色。
7.生理:まだ生理が来てない。
脈診:数、無力。尺浮、寸関は弱い。
舌診:舌苔が白、少し厚い。湿気と瘀血があるのが分かります。
触診:第一、第二の胸椎に圧痛点あり。
食欲が良くなり、体重が増えて、睡眠の質はだいぶ改善されて、興奮ぎみは少し良くなった
2012.6.29
主訴:
すべてのADHD西洋薬を止めている。
食欲は良くなり、体重は増えました。
睡眠の質はだいぶ改善され、興奮ぎみは少し良くなったくらい。全体的に見ると、愉快な気持ちであり、たまに怒る。
脈診:軟、少し弦、尺は少し浮。
舌診:舌苔は白、薄い。
鍼治療は三陰交穴一つのみ。
処方箋:同上
2012.7.6
主訴:
今日はとても疲れた、睡眠は先週と同じくらいの質。ただ寝るのが遅いだけ。
この2週間で、さらに体重が0.7kg増えました。
情緒不安定はまだ起伏が激しい、興奮ぎみで怒りっぽい。
食欲は以前よりだいぶ良くなったけど、便秘。ある日は下痢をしたそうです。
脈診:右は弱い、左は軟。尺は弱い。
舌診:舌苔は白で薄い、湿気がある。
食欲・睡眠は良好。情緒不安定もだいぶ良くなったけど、寝付きがまだ悪い
2012.7.13
主訴:
食欲と睡眠は良いけど、寝付きは悪い。情緒不安定はだいぶ良くなり、今週は怒りっぽいのがない。ただまだ興奮ぎみで、ボンボン跳ねたりする、話も多い。
脈診:数、有力、少し弦。
舌診:湿気が見える。
血圧検査、尿検査では大幅の改善が現れた
2012.7.19
主訴:
小児科医院の検査では体重が約40kg。
脈拍と血圧、尿検査では大幅の改善が現れました。
興奮ぎみはまだあり、活発すぎ。
食欲は良好。
脈診:数、有力、少し弦。
舌診:舌苔は少しで、湿気が見える。
睡眠、食欲、大小便も良好。暴れるほどの興奮ぎみはなくなった
2012.8.3
主訴:
気分が良い、暴れるほどの興奮ぎみはなくなった。ビタミンDとカルシウムが足りないけど、骨の密度は正常。睡眠、食欲、大小便も良好。
脈診:略数。
舌診:舌苔は白、少し薄い。

酸棗仁(さんそうにん)、めちゃくちゃ酸っぱい生薬
2012.8.8
主訴:
もうすぐ新学期が始まるので、焦り気味。睡眠はオリンピック生放送で遅くなっている。
脈診:略数。
2012.8.20
主訴:
遅く寝る、寝付きが悪くて2~3時になってやっと眠れる。朝は11時半まで寝ている。情緒不安定は少し再発、食欲は良好。
脈診:弱、軟、遅い、強く押すと無力。
舌診:舌苔は白、薄い、湿気が見える。

生薬として有名な炙甘草(しゃかんぞう)、ほとんどの処方箋で使っています
3人の西洋医学の先生が、ADHDが治ったと診断した
2012.9.10
主訴:
3人の西洋医学の先生に診てもらったけど、みんなADHDが治って西洋薬は要らないと診断しています。
現在の状況は良いです。
食欲は良好。
ただし、寝る時にお母さんがいないと眠れない。
脈診:略数。
舌診:舌苔は白で薄い。

地黄(じおう)の花も綺麗ですねー
2012.9.18
主訴:
学校での状況は良い。たくさんの宿題に対してプレッシャーを感じる。夜は10時半~11時に寝るけど寝付けるのに1時間かかる。食欲は良好。
脈診:緩、略弱。
処方箋:なし。
漢方薬なしでも良い状態がキープできるかを確認するためです。
2012.11.20
この2ヶ月、すべてのADHD症状が再発していません。
以前よりも早く寝られるけど、相変わらず遅く寝るのが好きみたいです。
李哲の解釈と感想
李宗恩博士の処方、漢方医から見るとごく普通の処方箋。
なぜこんな普通の処方でADHDが治るのか?
漢方薬が治すのは患者さんの辛い自覚症状で、病名ではありません。
- 酸棗仁湯は主に不眠症を治す。
- 小建中湯は主に食欲不振、集中力が足りない症状を治します。
- 炙甘草湯は心臓を強化するもので、動悸、息切れなどに有効です。心臓が強くなれば、情緒不安定なども収まります。
- 甘麦大棗湯はヒステリー・精神不安定などを治す有名な漢方薬。
漢方薬が様々な辛い自覚症状を治せるのは、ご理解いただけたと思います。
ADHDの諸症状は足つぼ整体・鍼灸でも治せる
それでは、足ツボ整体・鍼灸では諸症状を治せるのか?以下、私の過去の記事で説明したいと思います。
▼足ツボを受けたあと、便通がよくなっただけではなくて、睡眠まで深くなった症例です。
▼なかなか寝付けられない若者、数回の鍼で治りました。
不眠症が治っただけではなくて、首こり・足の裏がしびれる症状も全部解消。

▼妊娠中のトラブル:食欲不振、ご飯が美味しく感じないのを治した鍼治療例。
▼もともと食欲不振で下痢だったけど、足ツボ整体のあとご飯が美味しくなり、米の減りが早くて困った男性患者の記録です。

▼集中力がアップしたのは、まだ足ツボ整体・鍼灸の記事がありません。漢方薬治療例がもう一つあるので、参考にしてください。
おわりに
西洋医学でいうADHDは、必ずいろんな自覚症状があるはず。西洋薬で血液検査の値が良くなるかも知れませんが、大事なのは自覚症状が変わるかどうかです。
漢方薬はもちろん、足ツボ整体・鍼灸も治すのは自覚症状。自覚症状がなくなれば、内臓が安定していることを示します。
ADHDの諸症状で悩んでいる方は、病名にビビって治らないと思わないで下さい。漢方薬もしくは鍼治療の選択肢もあるのです。効果があるかないかは、数回で分かります。
(おわり)
李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)
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