こんにちは、李哲です。
ひどい耳鳴り、難聴(耳が聞こえない)で補聴器の生活をする患者さん、完璧には治ってないですが、だいぶ改善した鍼灸症例を公開します。ほかには膝痛、首の痛み・肩甲骨の痛み、夜間頻尿が治り、嗅覚障害で匂いが分からなかったのが、ある程度分かるようになりました。 また、尿の勢いが良くなり、味覚が改善されました。
鍼灸治療はトータルケアなので、治るときはみんな一緒に良くなります。これが鍼灸治療の良いところ。
本記事は計25回の施術記録を細かく書いてあるので長文になります。難聴、耳鳴りの方に、参考になると幸いです。
難聴、耳鳴りがひどくて、補聴器つけてもまともに会話できない患者さん
女性、60代。
私が治療した息子さんが連れてきました。
主訴は以下の通りです。
- ひどい耳鳴りがして、聞こえが悪いです。
- つることがあり、特に膝から下がひどいです。
- たまに右膝が痛いです。
- 右のお尻に違和感があります。
- におい(嗅覚)が悪いです。
- 困るほどではないが、味見をしても分からない時があります。
- 体のバランスが悪くまっすぐ歩くのが苦手で、片足立ちはふらつきます。
- 腹筋が苦手で、できないです。
- 右肩がこって痛いです。
- 両目とも視力は0.7ですが、老眼が進んで困っています。
私は彼女から耳鳴りと難聴のキッカケなどを聞きました。
彼女が言うのは、10年前から耳が遠くて、最近は正面からじゃないと声かけても分からない。
静かなところでは、補聴器をつけてなんとか聞こえるけど、うるさい所では他の音ばかり拾って、まったく会話にならないそうです。
彼女が言うのは、
「なぜか不調は右ばかりです。肩、お尻、膝…全部右が痛いです」
中医学では、左と右の痛みは違うと考えています。詳しくは以下の記事に書いてありますので、どうぞご参考にしてください。
彼女は耳鳴り.耳が聞こえない以外に、もう一つ自覚症状があります。それは両足の指先の感覚マヒ。10年前から難聴と一緒に起きたそうです。あとは嗅覚障害ががあり、孫のうんちが出ても匂いが分からない。
以上が彼女の主な症状です。
普通の腎機能低下と違う症状。
私も初めて診るので、最初から治せるとか言えません。ただし、治療法は彼女の自覚症状を基準にして選びました。
3ヶ月の鍼治療で難聴・耳鳴りなど諸症状の変化
以下は私の施術記録です。
いろんな症状と解釈を書いてあります。
1~2回目の鍼で、自分の声が大きく聞こえてきた
2017年6月1日。
1回目の鍼。
刺したツボは内膝眼、外膝眼、鶴頂、陽陵泉から陰陵泉穴をつなげる(この4つのツボを膝五鍼とも呼びます)中脘、巨闕、天枢、気海、足臨泣、(左)、束骨(左)、後渓穴(左)、太衝、合谷穴、迎香穴(3寸の鍼で内迎香穴までつなげる)。耳周りのツボは聴宮、聴会。
主な目的は、①聴力改善を狙う②膝痛を治す③右肩、右首の痛みを治す④嗅覚障害を治す
アメリカ・スタンフォード大学の博士、李宗恩中医師は漢方薬で耳垂れ・聴力低下の女性を治した例があります。漢方薬+鍼治療だと相乗効果があるので、興味がある方はぜひご覧ください。
2017年6月2日。
2回目。
彼女の報告:
「聞こえが少し良くなった」と家族が言われた。
自分の声が、前より大きく聞こえる。
以前は補聴器を付けても、自分の声は聞こえなかった。
右肩はまだ痛い。
嗅覚は変化なし。
右膝の痛みは軽くなった。
右のお尻の痛みは、もう治った。
お尻の痛みは、基本的に1回で改善もしくは完治できる症状です。鍼治療例ではないですが、過去に足つぼ整体の施術をした時の記録があります。どうぞご覧ください。
両足の指先のしびれ(マヒ)は、ほんの少しだけ軽くなった。
彼女が言うのは、
「なぜか左より、右の鍼が全体的に痛いです」
私は彼女に説明しました。
「つまりが酷いと、鍼の響きも増えます」
彼女はまた話しました。
「迎香穴を刺すと、鼻の通りが良くなるのが分かります」
迎香穴で鼻がす~~と通るのは、ほかのひどい花粉症患者からも話を聞きました。以下の記事、参考になると幸いです。
左耳が聞こえるようになり、右膝の痛みはだいぶ減った
2017年6月8日。
3回目。
彼女の報告:
以前は補聴器を付けても、左耳は聞こえなかったけど今は聞こえる。今までは右耳だけで聞いたそうです。
2017年6月10日。
4回目。
彼女の報告:
耳鳴りは変わらない。
聞こえは前より良いけど、前回からは著しい変化はない。
1回目の鍼での変化が一番すごかった。
肺兪は肺機能を向上して、嗅覚が戻るようにするため。

耳鳴りが小さくなり、尿の勢いが良くなった
両足の指先のしびれ(マヒ)は変化なし。
右肩の肩井穴あたりの痛みは変化なし。
同じ筋に沿って、首と頭まで痛くなる時がある。
補聴器なしでも会話ができて、家族全員が大喜び
今日はいつものツボ以外に、湧泉穴を追加。
彼女「ジムで運動が終わったあと、お腹が空くのは分かるけど、最近はめちゃくちゃお腹が鳴っているから恥ずかしいです。胃腸が前より活発になってますね~(笑)」
左耳の聞こえは一進一退。右膝・右肩の痛みはだいぶ良くなった。
2017年6月22日。
彼女の報告:
左耳は補聴器なしでも聞こえる。
耳鳴りはまだあるけど前より良い。
「エレベーターで高い所に行ったみたいに、飲み込むと一瞬で耳が開きそうだけど、あと一歩の感じです」と彼女が言ってました。
右のお尻の外側の痛みはまだあり。
右肩と右膝の痛みは、だいぶ良くなった。
今日はいつものツボ以外に、晴明穴.太陽穴.頭臨泣など目を良くする為のツボを追加。
2017年6月23日。
彼女の報告:
左耳は補聴器なしでも会話ができる時もあるし、できない時もある。右耳はまだ変化なし。彼女が不思議がったのは、左耳が悪いのに左耳が先に変わったこと。
右肩の肩井穴の痛みは、押すと痛いけど普段は分からない。右膝の痛みはだいぶ治って、1~2割くらいしか残ってない。
膝痛はわりと治しやすい症状です。
ケガであろうと使い過ぎで痛めたであろうと、鍼治療はみんな効果があります。以下は筋トレヤリ過ぎで膝痛が起きた患者の治療記録。参考になると幸いです。
左耳で自分の声が頻繁に聞こえるようになり、孫の声がうるさくて補聴器を外す時も増えた
2017年6月29日。
彼女の報告:
左耳はけっこう頻繁に、自分の声が高く聞こえる。
右耳はまだ変化なし。
両足の指先のしびれは、変化なし。
右肩と右膝の痛みは、あともう少しで消える感じ。
2017年6月30日。
彼女の報告:
昨日帰って、孫たちの声が大きく聞こえ過ぎて、補聴器を外した。でも、長い間外すとまた聞こえが悪いので補聴器を付ける。右耳は変化なし。両足の指先のしびれは、今朝起きた時なくなったけど、しばらく経つとまたもとに戻った。
昨日は夜10時から朝6時までグッスリ寝て、夜中一回もトイレに行ってない。以前は必ず1回行った。「これは鍼の効果ですね~」と彼女が言ってました。夜間頻尿は鍼治療の効果がとても良いです。以下はもう一人の女性の治療例、どうぞご参考に。
目は遠い所はハッキリ見えて来たけど、近い所はまだよく見えない。
今日はいつものツボ以外に、足三里と地五会を追加。 この2つはセットになると、腎虚証からくる耳鳴りに良い。昔の鍼のゴロに書いてあります。
今日の施術のあと、彼女はお茶を飲みながら話してました。
「自分は今まで鍼を受けたことがない。息子が行ってみろ、行ってみろと言うから来てみたけど、こんなに鍼で変わるとは思ってもなかったです。今は耳がだいぶ聞こえているので、もう少し経ったら病院に行って補聴器を調整してもらいます」
2017年7月6日。
彼女の報告:
孫のうんちの匂いが分かるようになってきた。
嗅覚は改善している。
耳は進歩なし。
先日、1回だけ小便のあとにもう一回トイレに行きたくなり、そして膀胱炎みたいに膀胱の所が痛い。でも1日で治った。 昔、仕事した時、よくトイレを我慢して膀胱が痛くなったそうです。
私は彼女に説明しました。
「鍼治療を続けると、昔のちゃんと治ってない所が、表に浮いて再現される時があります。でも、1日で治ったら後は心配しなくていいでしょう」
彼女は今日、「両足の指先のしびれはなくなるときもあるし、しびれる時もある。一進一退ですね…」と言ってました。
足指の感覚がなくなった治療例は、ほかにもありました。治し方は少し違うので、どうぞ以下の記事ご確認してください。
左耳はだいぶ回復。
両足の指先のしびれも、回復の予兆がある。
残りは右耳だけです。
何回で治る予測は難しいものです。
その人の体質.精神状態.飲食習慣.運動など様々な要因があるので、一括で鍼治療だけで必ず治ると保証できません。
2017年7月13日。
彼女の報告:
毎朝、足指のじんじんする感じは治ったときもある。
膝痛はもう完全に治った。
聴力は進歩なし。
前回の鍼の後、右目から大量の涙と少しの目ヤニが出た。彼女は良くなる前兆ですかね?と期待を寄せてました。
聞こえなかった右耳も少し聞こえて、すごい嬉しかった!
2017年7月20日。
彼女の報告:
「今週火曜日(7月18日)まで、右耳も聞こえてきました。月曜日は補聴器をつけたら、子供たちの声があまりにもうるさくて外しました。右耳が少し聞こえて、すごく嬉しかったです!」
嗅覚はまだ進歩なし。
今日は右膝に痛い所があるので、以前やっていたツボをもう一度刺し。
嗅覚障害は、蓄膿症患者でもよく見られる症状です。一人の男性患者を治療したことありますが、手術後の後遺症でもあり、治りは少し遅かったです。それでも、効果がありました。どうぞ以下の記事でご確認ください。
2017年7月21日。
彼女の報告:
今日電車で来る時、電車の音がうるさくて、補聴器を外すしかなかった。こちらに来て着替える時も、左耳は補聴器してない。
聞こえが良すぎて、補聴器を外すときがある
2017年8月10日。
彼女の報告:
足指のじんじんする感じは、著しい進歩はなし。
右耳は2回ほど、左耳と同じように聞こえすぎて補聴器を外したけど、しばらく経つと聞こえが悪くなるので、また付けるしかない。右目下の青アザはだいぶ良くなっている。(2週間前の鍼で青アザ)
匂いは皆と同じように分かる時があるが、まだ完璧には治ってない。
膝痛はすでに治っている。
膝痛の治療に関して、以前自分の膝が痛くて治したのがあります。参考になると幸いです。
2017年8月18日。
彼女の報告:
今までの治療で、両耳の変化が一番大きい。最近はうるさくて、補聴器を外す時が増えてきた。
前回の鍼の後、なぜか左脇下が痛くなって、お灸をたくさんしたら少し楽。5~6年前も右脇下が痛くなり、病院に行ったら原因不明だと言われ、そのうち自然に治ったそうです。前回の鍼はおそらく深すぎたと思うので、今日は浅めにしました。
今日の迎香穴、右の方が刺した時にズキンと痛い瞬間があったけど、鍼をした後は両鼻の通りが良くなっているのが分かるそうです。
2017年8月25日。
彼女の報告:
聴力は一進一退。
匂いは前より進歩し、味覚も良くなっている。
足の指のじんじんする感じは、生薬を飲んでから少し良くなった気がする。
左の肩甲骨の内側が痛い。
一箇所のみ。
昨日は仰向けで肩甲骨下が痛くて寝れなかった。
前回の鍼は浅めに刺したのに、痛いというのは他の理由があると思って彼女に聞きました。
話を聞いたら、おそらく彼女は筋トレ若しくは孫(17kg以上ある)を抱いた時に、筋肉を痛めたと思います。
今日は中渚(右)を追加。
左の肩甲骨下の痛みを治す為。
うつ伏せから仰向けになった時には、そんなに痛くないそうです。最後は、痛い所を探して刺絡。来週は様子見て、もう一度刺絡するかも知れない。
2017年9月1日。
彼女の報告:
においは前より良く分かる。
左の肩甲骨下の痛みは、ほとんどない。
聴力と足の指のじんじんする感じは、一進一退。
刺絡療法は、肩甲骨の内側の痛みによく使います。患者の症状にもよりますが、よく1回で劇的に変わる患者がいます。以下はその一つの記事、参考になると幸いです。
補聴器なしで会話ができたのは3回あった
2017年9月8日。
彼女の報告:
両耳は3回だけ補聴器を外しても、会話ができるようになった。それ以外は、補聴器を付けている。
足の指のじんじんする感じは、以前は朝起きた時だけ楽だったけど、今日はこちらに来て着替えた後もじんじんしない。ただし、靴を履いて少し歩くとまたじんじんするみたいです。前よりはじんじんする時間が減っているので、彼女は「生薬が効いてるかな?」と言ってました。
まとめ
今日で25回目の鍼です。
「1~2ヶ月休んで様子見てから、鍼を再開するか決めたい」と、彼女は言ってました。
私もあと何回で必ず治ると保証できないので、彼女の意思通りに様子を見ることにしました。回数券2枚を使い、2~3ヶ月の鍼治療を続けた彼女、本当にお疲れ様でした。
今までの変化をまとめます。 著しく変化した症状、良かったと思う点。
- 膝痛は治った
- 聞こえなかった左耳は、だいぶ聞こえるようになった
- 聞こえが悪かった右耳が改善
- 嗅覚障害、味覚障害は改善された
- 目(視力)は少し見やすくなった
完全に治ってないところ:(遺憾だと思う点)
- 耳鳴りは高い音から低い音になり、改善はしているけど、耳鳴りが完治してない
- 足指の感覚マヒ、感覚が薄い症状、改善はあるけど著しくは変わってない
- 右耳が完全に回復してないので、まだ補聴器が必要
2~3ヶ月での鍼治療結果は、以上のものでした。
難聴、耳鳴りに対する鍼治療は、その効果がとても良いです。
誰でも2~3ヶ月で必ず治るとは言えませんが、確実に改善に見られます。根気強く治療を続ければ、最大限の治療効果が出るので、どうぞ信頼できる鍼灸院で治してもらってください。
あなたの幸運を祈ります。
(おわり)
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