こんにちは。李哲です。
膵臓癌の手術後、余命半年~1年だと言われた患者、鍼治療した経過を記録しました。最終的には末期癌に敵わなかったけど、腸閉塞からくるお腹が張って痛い・ご飯が食べれない・便秘などは改善されて、生活の質を保ちました。
週2回の鍼治療だったら、救えられたかも知れませんが、残念ながら週1回もなかったです。心痛む治療例ですが、記録を公表する事にしました。がん治療で鍼灸は役に立つのか?以下の長文を読んでいただければ、分かると思います。
- 膵臓癌の手術後、腸閉塞で食べられなくて10kgも体重減少
- 患者さんを励み:食欲さえあれば死なない!
- 患者が抗がん剤を拒否した理由:1年以内で死んだ人を、たくさん見ているから
- 鍼治療4回後、すこぶる調子が良い、いびきかきながら寝ている
- お腹の張りがなくなって、便通・食欲とも良くなってきた
- 脂っこい食べ物で体調を崩した
- 腫瘍マーカーが高いのに、体調が良い。朝たち、精力も増えてきた
- 腫瘍マーカ3千なのに、がん細胞が見つからない西洋医学
- 便通と食欲は、良い状態をキープしている
- 腫瘍マーカー5800でも冗談を言う患者さん、楽観的な気持ちはとても有利
- 「顔色は前より良くなった」と周りの人に言われた
- 食べられない、食べると吐いてしまう危篤な状態に陥った
- 食べられない状況が続いているので、頻繁の鍼治療をすすめた
- 鍼治療後に1~2日は良いけど、それ以上は持たない
- 患者さんが入院してしまい、鍼治療が途切れた
膵臓癌の手術後、腸閉塞で食べられなくて10kgも体重減少
先に患者さんの特徴を書きます。
腫瘍マーカーは1万6千。(通常は30以下)
ビックリしないで下さい。
彼は生きています。
病院の検査も間違いがありません。
いったいどういう事なのか、詳しく説明したいと思います。
患者は52歳の男性。
カルテに書いたのは、昨年4月膵臓癌手術をした。今年の6月に左の腎臓付近で腸閉塞を起こし、内視鏡で手術してステントを入れた。腸閉塞の原因は、膵臓癌の再発だと言われた。
彼からいろいろ話を聞きました。
昨年の手術で膵頭部は残し、膵尾部は切除。脾臓と胆嚢も切除。すい臓がんが再発してから、もとの手術した病院にもう1回手術して、「抗がん剤しかない!」と言われたそうです。
セカンドオピニオンで、ほかの病院に行って話を聞いたら、がん細胞が全身転移の可能性が高いので、「手術はもう無理。抗がん剤しかありません」と言われたそうです。
彼は「他の方法を探す!」と拒否したら、2番目に診てもらった病院側が言うのは、「いつでもいいので抗がん剤をしたくなったら来て下さい」
今は腸閉塞で食べられなくて、体重が10kgも落ちて、とても体力がない状態。
患者さんを励み:食欲さえあれば死なない!
私は黒くなった彼の顔をみて話しました。
「腸閉塞は手術後遺障害の可能性が高いです。つまり、前のすい臓がんの手術がなかったら、腸閉塞にもなりません。」
今、彼の臓器は何個も足りない。
特に脾臓はとても大事。彼が今、とても体力がないのは、ちょうど脾臓がないからです。(脾臓は筋肉の力をコントロールするので。)
こんな状態で完治はできない。
ただし、寿命を伸ばすことは可能。運が良ければ、30年40年も生きる可能性すらあります。
ほかの膵臓がん患者と違って、彼はいくつか良い所がありました。
- 目力がある
- まだ食べられる
- 筋肉がそんなに落ちてない
どんな病気にも言えますが、筋肉が落ちて骨しか残ってない場合は、回復が無理です。
私は彼に話しました。
「食欲をもっとあげて、体重が徐々に上がればいい。食欲さえあれば死にません。」
人間が病気で死ぬのは、だいたい以下の通りです。
↓
体力、免疫力が落ちる
↓
寝たきりになる
↓
衰弱死
もしくは簡単な風邪でもひどい肺炎になる→心肺停止で死亡。
食欲さえあれば、ご飯が食べられれば体力は落ちないので、上の過程にはならないのです。
患者が抗がん剤を拒否した理由:1年以内で死んだ人を、たくさん見ているから
6月、彼が病院の先生に言われたのは、
余命6ヶ月~1年。
抗がん剤をやれば、余命1~2年になる。
彼の考えは、「良くなるなら冒険するけど、ただの延命治療なら他の方法を探す!」と拒否。なんで今さら拒否しているか、病院の先生は不思議がっているそうです。
皆さんも考えて下さい。
放置すると余命6ヶ月~1年。
抗がん剤をすると余命1~2年。
たったの1年を伸ばすために、抗がん剤の副作用に耐えながら、クオリティがない生活を送る。果たして、その延命治療は価値があるのか?なんで、ほかの方法を試そうとしないですか?
樹木希林さんは全身に癌細胞が広がったのに、抗がん剤しないで10年も生きられました。ほかのがん患者は、こんなに長生きしましたか?
彼がいうのは、「周りの知り合い、抗がん剤を1年くらいやって死んだ人がたくさんいる。抗がん剤をやる前は、もう大丈夫だろうと皆が思ったのに、抗がん剤を始めたらあっという間に死亡」
だから彼は抗がん剤を拒否しています。
病気になる前、彼は缶コーヒーが大好きで、すごい飲んだそうです。
私は彼に説明しました。
「すい臓がんの原因はコーヒーです」
もちろん、彼はコーヒーなんか今は飲んでいません。膵臓がんの原因に関しては、以下の記事が参考になると思います。
鍼治療4回後、すこぶる調子が良い、いびきかきながら寝ている
2016年7月29日。
1回目の鍼。刺したのは、関元.天枢.足三里.内廷.上巨虚.下巨虚.公孫.太白.三陰交.霊骨.大白.曲池。置鍼は40分。途中で1回鍼を回しました。
このようにツボを刺した主な目的は、
- 腸閉塞の予防
- 脾臓の強化
- 全体の体力(免疫力)を上げるため。
2016年8月2日。
2回目のときの報告。
前回の針をしたあとに、とてもだるくなった。それ以外に、また腸閉塞になりそうな感じがしたけど、気にしないようにしたら夕方におならが出て治った。
彼も腸閉塞の経験があるので、おならが出れば腸閉塞が治るのを知っていました。今日、私が見た限り顔色の黒色は減っていました。
3回目は特に変化なし。
腸閉塞は以前、足つぼ整体の事例もあります。原因も分析しているので、どうぞご参考に。
2016年8月11日。
4回目の鍼。
患者さんが言うのは、
「すこぶる調子が良い。いびきかきながら寝ている。以前は口呼吸でつらかった」
顔の黒色があるので、これは腎機能の低下を示す。なので、今日は腎関.復溜を追加。
彼「お腹の左側がたまにチクチク痛みます」
私「これは鍼して大腸が動こうとしているけど、手術でステントを入れているから気が通らなくて痛みが生じます。この金属棒がなければ、気が通るので痛みがないはずです」
彼「自然に脱落する人もいるらしいです。自然に脱落して大便から出れば一番いいですが…」
私「金属棒があるかぎり、痛みは生じるかも知れません。」
お腹の張りがなくなって、便通・食欲とも良くなってきた
2016年8月30日。
5回目。
彼が言うのは、今日お風呂出てから左の上腹部が張って痛い。私が押してみたら、硬いしこりがありました。指で叩く聴診したら、右は鼓音がするけど、左は鼓音がしない。明らかに何かが詰まっている。
彼「便通は良くておならも出ます。食欲は良いです」
いつものツボと董氏奇穴を刺した以外に、支溝.下脘を追加。帰るとき、「お腹の張りはなくなり、スッキリしました!」と彼が言ってました。
お腹がガスでパンパン張って苦しいのは、臨床で良く見かけます。鍼治療はガス抜きに優れているので、基本的に1~2回受ければ効果が分かります。以下は一つの症例、参考にしてください。
脂っこい食べ物で体調を崩した
2016年9月13日。
6回目。
先週、友人と外食して親子丼と唐揚げを2つ食べた。その後具合が悪くなり、吐き出して2時間くらい横になって休んだら、体力が戻ってきた。
私「脾臓とすい臓がないので、人工的な甘いものはなるべく避けて下さい。あと、胆嚢がないから、脂っこいものが消化しにくいので、これもなるべく避けたほうが良いです。」
彼「手術後に病院の先生にも、脂っこいものはダメだと言われました」
病気がない胆嚢を取って、その後、「脂っこいもはダメ!」と言うのは、私には理解できません。だったら、最初から取らないでほしい。
今日は左の上腹部が硬い感じがするというので、強めに施術。
胆嚢が弱いと、脂っこいものが食べられなくなります。例えば胆のう炎。以下の記事でも話しているので、参考にしてください。
腫瘍マーカーが高いのに、体調が良い。朝たち、精力も増えてきた
2016年9月30日。
7回目。
彼の報告:2ヶ月1回の血液検査結果で、肝機能低下だと言われた。たまに肝臓の区域が痛い。
左の上腹部も硬いのがあるけど、指で押してみたら肝臓の痛みが強かったです。肝臓の流れを良くするために、太衝.期門を追加。今日は彼が爆睡していたので、途中で鍼を回してはない。
彼は奥さんとも話したそうです。
「腫瘍マーカー値が上がるだけで、ほかは体調良いね~」
そして、彼が私に言うのは、「鍼してから朝たち、精力が増えました」
腫瘍マーカ3千なのに、がん細胞が見つからない西洋医学
施術後、彼は来月詳しい検査をするらしいです。
彼が言うのは、去年の手術前は腫瘍マーカーが700(正常は30以下)だった。手術後は腫瘍マーカーが一気に7まで下り。その後、徐々に上がって今年の1月は1500。今はだいたい3000~5000だそうです。
腫瘍マーカー検査で1500になった時、PET検査などいろいろ検査したのに、癌が見つからない。彼は西洋医学に対して、不信感が強かったです。
彼が言うのは、
「去年の手術前は腫瘍マーカー検査が700。
腫瘍がここにあると言われ、画像も見せられました。まあ、これは納得します。しかし、今は腫瘍マーカーが3000~5000なのに、がん細胞が見つからないってどういうこと?!」
便通と食欲は、良い状態をキープしている
206年10月11日。
8回目。
彼の報告:
膀胱が少し腫れている感じがする。
左下腹部(ステント治療で金属棒を入れた場所)が、チクチク痛む時がある。昨日はちゃんと食べられなかったので、今日は胃が少しつらい。
2016年10月21日。
9回目。
彼の報告:左腎臓の付近で腸閉塞を起こし、ステントを入れた場所がチクチク痛む。両方の鼠径部が張っている感じがする。便通は良い。食欲も良好。

腫瘍マーカー5800でも冗談を言う患者さん、楽観的な気持ちはとても有利
彼は自分は癌ではないと思っていました。彼が今通っている病院の先生も、彼は癌ではないと判断しているそうです。でも、この前の腫瘍マーカーは5800。(正常値は30以下)
癌ではないと判断してるその先生も頭を抱えて、彼に話したそうです。
「うん……腫瘍マーカーがこんなに高いんだから、どこかに癌があるかもね…でも、急いで抗がん剤をやる必要がないし、様子を見てダメだったら抗がん剤を始めても良い」
彼は先生に聞いてみたそうです。
「一番高くて腫瘍マーカー値はいくら?」
病院の先生「腫瘍マーカーが1万の人は見たことがある。」
彼「じゃ~私も1万までやってみようかな?」
楽観的は気持ちは、病気治療でとても大事です。悲観的な考え方は一直線で悪化するけど、大丈夫大丈夫だと思うと良くなる可能性があります。患者さんの気持ちと病状の関連性は、他の記事で詳しく説明したので、どうぞご参考に。
「顔色は前より良くなった」と周りの人に言われた
2016年10月21日。
10回目。
彼の報告:
「最近は仕事が忙しくて、かなり体力を使う。
いまは病院にいるときより元気なので、つい頑張ってしまう」
私「まだ体重が戻ってないし、以前の食べる量(1.5人前)に戻ってないので、無理はしない方がいいです」
彼は周りの人に、「顔色が前より良くなっているじゃん!」と言われてるそうです。鍼治療で顔色が明るくなり、白くなる報告は良く聞きます。以下は一つの症例、参考にしてください。
食べられない、食べると吐いてしまう危篤な状態に陥った
2016年11月29日。
11回目。
1ヶ月ぶりに施術に来ました。
彼の報告:
最近は朝たちもない。
食べると吐いて戻してしまう。
病院の検査で言われたのは、胃と腸の間に荒れているからだそうです。
彼は体重は落ちてないと言うけど、私が見た限り痩せてました。
彼が言うのは、「この3日位は食べられないです。食べると戻すので、食べるのが嫌になりました。腫瘍マーカーは先月の検査で1万6千。2ヶ月前は5千です。」
今日刺したツボは、公孫。太白。内関。天枢。関元。中脘。石関。幽門。足三里。上巨虚。下巨虚。
私は彼に話しました。
「1ヶ月も放置するのはダメです。なるべくつめて来て下さい!」
食べられない状況が続いているので、頻繁の鍼治療をすすめた
2016年12月6日。
12回目。
彼「ヤバい!全然食べられない。食べると吐いて戻す!昨日、胃カメラで検査をしたら、少し荒れているだけで特に問題ないと言われた。仕方なく昨日は病院で栄養点滴を受けてきました」
今日刺したツボは、足三里。上巨虚。下巨虚。関元。公孫。内関。復溜。四満。石関。梁門。不容。途中で針を回した時に、お腹はゴロゴロ鳴っていました。帰りに彼は1週間後に予約を入れたけど、私は彼に話しました。「もし、明日食べるのがダメだったら、2日後にまた来て下さい。頻繁に治療しないといけないからです」

2016年12月13日。
13回目。
彼の報告:前回の施術後、帰って食べれたけど、その夜に戻してしまった。3日後には落ち着いて良くなる感じがした。今朝食べたのはバナナ、ヨーグルト、ケーキ。これは今週食べた最大の量だそうです。今は体重が60kg切っている。
痩せて顴骨が特に出っ張って見えています。状況はとても楽観ではないので、「鍼治療の回数を増やしたほうが良い」と彼に勧めました。
彼は少し考えてから予約を入れましたが、次の予約は10日後。
鍼治療後に1~2日は良いけど、それ以上は持たない
2016年12月23日。
14回目の鍼治療。
彼「病院の検査で、腹膜に癌転移が見つかりました。腫瘍マーカーは1万6千から1万2千まで下がったけど、まだまだ喜べる数値ではないです。」
彼はまた話しました。
「前回の施術後、1~2日は良かったけど、その後はまた食べられなくなった。1日で食べる全部の量は、おにぎり半分くらい。1日で500g単位で体重が落ちている。今食べられるのはヨーグルトとバナナ半分くらいなど」
体重は前回診たときより、更に痩せた感じ。状況は本当に楽観ではない。今日刺したツボは、石関。不容。承満。下脘。気海。石門。四満。関元。足三里。三陰交。公孫。太白。
私が知っている、最強の食欲増進と吐き気止めのツボです。
中脘.上脘など、とても良いツボがありますが、彼には使えません。何故かと言うと、上腹部の真ん中にデカイ手術の傷口があり、ちょうど中脘.上脘と被っている。傷口は分厚い結合組織になっているところで、鍼が入ってもうまく作動しない。仕方なくて周りのツボを代用しているのです。
帰りに、1週間に2回の施術を求めても来れないと思って、お灸する場所を教えて、「必ずやって下さい」と話しました。

石関。不容。承満あたりに大きな丸で左右2つずつ書いてあげて。関元に大きな丸で一つ。合計5箇所。
一箇所に9回連続でやり続ける。5箇所なので、1回お灸するのには、45個のせんねん灸が必要。鍼に来れなくても、お灸をすればなんとかなると思いました。
患者さんが入院してしまい、鍼治療が途切れた
中医学では食べられるかどうかで、この人が生きるか死ぬかを判断します。食べられない日が続いたら、結果は恐ろしくて考えられない!
私がこれを危惧してお灸を教えましたが、次に来るときまで、お灸で持ちこたえるかどうかが心配です。
2017年5月11日、追記。
彼は体調不良で入院してしまい、その後は連絡がありません。この連載記事は中止します。入院結果は凶だと思うけど、奇跡が起きることを祈ります。
(おわり)
コメント