こんにちは、李哲です。
患者さんから何回も質問を受けたことがあります。
「食べ物に気を付けているし、運動もしている。こんなに気を使っているのに、なぜ五臓六腑がダメになったでしょうか?」
身体は複雑なシステムなので、健康に良い食べ物を取れば健康になるとは限らない。病気で早死になったスポーツ選手も多いです。
健康を守るためには、様々な要素があり、1種類だけではない。どんな要素を守れば、健康な状態をキープできるか?そのためには、人間はなぜ病気になるのか?を分析しないといけません。
今日は中医学の理論で、病気の原因に関して述べました。
重点は、喜怒哀楽(ストレス・気持ちの乱れ)と病気の関連性です。
体調不良(病気)になる3つの原因
中医学の理論では、病気の原因は以下のようなものがあります。
1.内因性:
七情、飲食、房室労傷が含まれる。
2.外因性:
六淫、疫気が含まれる。
3.不内外因性:
内因性でも外因性でもないもの。
以下は1個ずつ説明していきます。
内因性
内因性には七情、飲食、房室労傷、この3つがあります。先に、飲食と房室労傷を解釈して、七情は後ほど詳しく説明します。
房室傷、労傷(性行為のやりすぎ、過労)
「労傷=過労」
過労は、もちろん五臓六腑を壊します。昔の金持ちは、運動不足で体がさびて病気になっていました。人間は動物なので、適当な運動が必要です。(過度ではなくて、適当な運動)
中医学のオススメの運動は、なるべく歩く。
年をとると、いろんな運動ができなくなります。サッカー.バレボール.バトミントンなど。しかし、歩くのは何歳になってもできる。そして、負荷が一番少ない。
もちろん歩くだけで、健康になるとは限らない。
運動の中でオススメとして、歩くのが一番良いと言うだけです。
「房室傷」というのは、性行為のやり過ぎ。
簡単に説明すると、男性の精子というのは、腎臓エネルギーの精華です。たくさん使うと腎臓が早めに枯れて、寿命も縮まる。早い段階で、様々な不調が出て悲惨な晩年を過ごす。(中医学では、腎臓が強ければ長生きすると言います。)
性行為の回数に関しては、4文字でまとめることができます:ほどほど。
病気治療中、性行為を節する必要性に関しては、以下の記事で詳しく書いてあります。
飲食
口に入れる食べ物は、直接内臓に入るので、質が悪い食べ物だと病気の元になります。
日常での禁止物 をうるさく言うのも、食べ物が体に対しる害を最小限にする為です。
「人生短いし、好きな物をなんでも食べて死ぬんだ!」と主張するそこのあなた。あなたが病気になってないから、地獄級の苦しみを味わってないから言える事です。一旦病気で苦しんでみてください。苦しみを経験したら、すぐ好きな食べ物でも止めるはず。
そして、食べる量。
昔から伝わってきた「腹八分目」。
これは何時の時代になっても正しい理論です。いくら健康に良いと言われるものでも、ほどほどにしてください。
腹八分目は以下の記事でも討論しています。参考になると幸いです。
外因性
外因性には「六淫」と「疫気」、2つがあります。みんな患者本人がコントロールできない外部環境です。
六淫(外部気候)
詳しくいうと、風、寒、暑、湿、燥、熱の6個。外部環境(気候)の変化です。
例えば、寒い風に当たって風邪を引いた。
暑すぎて熱中症で倒れた。
湿気が多い環境で働いて、関節痛が生じた。
気候の変化で関節痛が生じるのは、漢方薬もしくは鍼灸で治ります。以下は一つの例、参考になると幸いです。
疫気(えきき)
これも外部の環境の変化から来るものです。主に大流行の伝染病を引き起こす気候。
例えば冬なのに暑い。
細菌・ウィルスなど活発になりやすいので、伝染病も流行る時期です。
豚インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、インフルエンザなど、様々な伝染病が疫気に属してます。
一般人は鍼灸・漢方で伝染病が治る事を知らないです。報道するのがとても少ないから。実際に、鍼灸・漢方薬の効果は著しいです。以下は一つの例、参考にしてください。
不内外因性
毒蛇、毒虫に噛まれた。
車事故で内臓が破裂して大出血。
スポーツ競技で靭帯損傷、骨折…など。
厳密にいうと、不内外因は病気ではなくて、「けが」です。けがは中医学でも治療できるけど、西洋医学がもっと得意かも知れません。
- 脱臼.骨折した時に形を復元する。
- 切れた血管をつなぐ。
- 虫歯で壊れた歯を新しく作って入れる。
- 事故で手足を失った時に義肢を作って入れる。
… …
こんな時は西洋医学が良いです。
テクノロジーだから。
一つ混同しないでほしいのは、
病気は内科のもの。
ケガは外科のもの。
2つは全然違う分野です。
具体的な形を修理する外科手術は、内科には適しません。なぜなら、西洋医学は内臓たちがどうやって一つのシステムになって、動いているかも分からないからです。
内臓の病気を西洋医学に治療してもらうと、つらい自覚症状がどんどん増えるだけ。
たとえば癌。
治療すればするほど悪化して、あの世行き。
例外がありません!
臨床で乳がんの治療比較があります。漢方薬と病院の治療、どちらが良いかは皆さんの判断にお任せします。
病気と気持ちの乱れ(喜怒哀楽)との関係
内因性に属している七情!
これが一番話したいものです。
一般的に言う七情は喜、怒、哀、惧、愛、悪、欲。もっと簡単にいうと、七情は日常生活での「喜怒哀楽」です。
「怒る.悲しいと病気になる?」
「嬉しいのも病気になる?」
中医学を知らない方は、きっと不思議だと思うかも知れません。
喜怒哀楽は五臓六腑があるから生まれる
次は理由を説明します。
中医学の理論では、喜怒哀楽は五臓六腑があるから生まれる感情です。五臓六腑は感情が生まれる土台。言い換えると、あなたがもし五臓六腑がなかったら、「喜怒哀楽」の気持ちもない。
五臓六腑と感情の具体的な対応表は、以下のとおりです。
- 肝臓があるから、怒りの気持ちが生じる
- 心臓があるから、嬉しい気持ちが生じる
- 肺があるから、悲しい気持ちが生じる
- 腎臓があるから、志があったり、恐怖心が生じる
- 脾臓があるから、誰かを思ったり、仕事するとき集中力がある
気持ちと五臓六腑の密接な関連性
中国語は感情を表す時に、気とか臓器の名前をよく使います。
例えば日本語でいう怒る→中国語では「生気」と言います。現代の言葉でいうと、エネルギーをたくさん消耗する。怒鳴った後ぐったりなるのは、たくさんのエネルギーを消耗したから。
日本語の嬉しい→中国語では「開心」と言います。
日本語で勇敢な人→「胆大」。気配りが繊細な人→「心細」と言います。
日本語でいう悲しい→中国語では「傷心」と言います。心臓を傷つけるの意味。
気持ち(心)の乱れは、病気を作り出す
臨床でいうと、
肝臓に問題がある時は、怒りやすくなる。
肺に問題がある時は、悲しくなりやすい。
… …
逆のパタンですが、
- たくさん怒ると、肝臓に悪い
- 悲しすぎるのは、肺に悪い
- 恐怖心は腎臓に傷つける
- 考え過ぎると脾臓に傷つける
- 嬉しすぎは心臓に悪い
ニハイシャ1の漢方薬症例には、気持ちが病状に対する影響を書かれています。以下の記事、参考にしてください。
歴史上で有名な例え話をあげると、「一夜にして白髪になった」マリー・アントワネットのエピソードがあります。ネットではあり得ないと言いますが、中医学の理論から見ると十分あり得る話。極度の恐怖は腎臓を壊すので、一晩でも白髪になります。
五臓六腑と感情は、お互いに影響があります。例えばよく怒ると肝臓がやられて、肝臓がやられたから更に怒りやすくなる。悪循環です。特に女性の生理とイライラ・怒りっぽいのは、肝臓との関連性が強い。
臓器の働きは、西洋医学の理論でいうと自立神経の働きなので、自分の意識でコントロールするものではありません。自分の意志で心臓を止めたり、汗を出せたり、胃を動かしたりはできない。
しかし、我々は感情をコントロールすることで、内臓の状態を変えることができます。
気持ちを変えることで、五臓六腑の病気を治せる
気持ちの持ち方は養生にも関わるし、病気の治療にも使います。
例えばイライラして肝臓がやられた人には、涙を流す感動の映画を見せれば、スッキリになる。
悲しくて泣くのは、肺の働きです。
肺は陰陽五行論でいうと「金」。
肝臓は「木」。
金は木に勝つ。
泣くことで、金が木を伐採して、木(肝臓)が減るから身体はスッキリになるのです。
悲しいこともないのに、原因不明で泣くのは病態。漢方薬もしくは鍼治療を受けてください。 関連の症例は以下の記事があります。
また、片思いが強すぎて食欲不振・倦怠感に襲われたとき、怒らせる方法で治せます。
思いが強すぎると、脾臓が弱くなって病みます。脾臓は土。土に勝つのは木。木は肝臓で、肝臓が司るのは怒り。だから、怒らせれば片思いからくる食欲不振などが治ります。
五臓六腑のベスト状態をキープできるのは、穏やかな心と喜び
上記、気持ちが五臓六腑への影響を述べました。
それでは、五臓六腑のベスト状態を作るのは、どんな気持ちなのか?
常識から考えても楽しい・嬉しい気持ちでしょうね。
怒りっぽくて悲しい気持ちで、体調がよくなると思いません。
穏やかな気持ちは、気の流れを邪魔しないので、最良のめぐりを作り上げます。西洋医学でも分かりますが、副交感神経が司る胃腸は、リラックスすると活発になって、食べ物をよく消化吸収してくれます。逆に緊張、怒るなどの気持ちは胃腸の機能を阻害する。
ちなみに、西洋医学でいう免疫力免疫力というのは、胃腸の働きです。
楽しい・嬉しい気持ちは心臓に良い刺激を与え、心臓が丈夫になります。
心臓は中医学理論で「君主」。
五臓六腑でもっとも大事、ナンバーワンの存在。
ほかの脾臓、胃、肝臓、肺、腎臓…などは、全部心臓(君主)の統領を受けている。大げさに言うと、心臓(君主)さえ強ければ病気にならないし、また、どんな病気でも自然に治せる。
子供が病気になりにくいのは、子供は悲しい・嫉妬、怒り、心配などの気持ちが無いからです。子供は遊びに夢中で、ちょっとした事で大喜び、そして毎日楽しく生活しています。
大人になったら会社のこと、家族のこと、友人のこと。
心配、不安、恐怖、嫉妬、うっぷん…穏やかになるとき、喜ぶ時が少ない。心臓を圧し殺す気持ちばかりです。
大人がもし子供みたいに思考回路が単純で、ちょっとした事で大喜び、楽しそうに生活していたら、死ぬまで病気になる確率は非常に低くなります。
まとめ
上ではいろいろ書きましたが、要約すると以下のとおりです。
外部の寒気、湿気、突然の車事故などは我々が変えられるものではない。
我々にできるのは、飲食物に気をつけて適当に運動し、穏やかな気持ち(心)と喜びを持って生活すること。そうすると、病気になる確率を最小限まで減らせます。
また、食事・睡眠・運動よりも大事なのは穏やかな心と喜び。私たちの心臓(君主)を守ることです。
日本でも「病は気から」と言いますが、深い意味があるのです。
怒らない、悲しまない、怯えない…そうすると、より良い健康状態が維持できます。気持ちがドン底に落ちたりすると、いくら素晴らしい漢方薬を飲んでも効果が薄い、もしくは効果が出ません。
上記のポイントを守ったけど、不幸にも病気になった時、慌てないで信頼できる鍼灸医・漢方医に治してもらってください。
中医学の鍼灸・漢方はあなたの自覚症状を読み取り、どの臓器・経絡に問題があるのかを判断し、相応の治療をします。結果的には副作用もなくて、あなたの自覚症状も治ります。
(おわり)
倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。「傷寒雑病論」をもとに様々な癌・指定難病を治し、LAST HOPE(最後の希望)だと患者さんに言われました。また、臨床治療を行いながら、たくさんの優秀な中医学先生を育成し、中医学伝授のために努めました。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。
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